イルミンスール魔法学校

リアクション

　
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「あんな所にいたのか。早く回収して撤退するぞ」
　遺跡内を逃げ回っている秋月　葵（あきづき・あおい）を発見して、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が言った。
　秋月葵を追いかけているタンガロア・クローンをフォン・ユンツト著『無名祭祀書』がＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅのスフィーダレーザーで破壊する。
「早く乗るのだ。主で最後だぞ」
　コックピットハッチを開いて、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が叫んだ。
「えー、やっぱり乗らないとダメ？」
「つべこべ言わず、撤退だ」
　この期に及んでイコンに乗ることに躊躇する秋月葵を、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が無理矢理コックピット内の空きスペースに押し込んだ。
「よいぞ」
「ビヤーキーちゃん、帰りまーす」
　フォン・ユンツト著『無名祭祀書』が、コックピットハッチを閉めて、急いで発進した。
　
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「どうやら、全員撤退したみたいだよ」
　離脱していくＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅを黒麒麟のモニタで確認して、ライゼ・エンブが朝霧垂に告げた。同様に、エクス・シュペルティアもそれを確認する。
「よし、いったん離脱するぞ。味方の砲撃の邪魔だ」
　紫月唯斗が、後退を指示する。
　黒麒麟が嘶きと共に嵐の術式でヴィマーナのバランスを崩したところへ、人馬一体となった魂剛と黒麒麟がエナジーバーストで舷側を貫いた。バランスを崩したところに被った一撃で、ひっくり返ったヴィマーナが、僚艦を巻き添えにして遺跡の壁へと激突する。
　朝霧垂たちがフリングホルニに帰還すると、先に到着していたシャトルからトマス・ファーニナルたちが艦内各所に散らばるところであった。
「これが、アームドベース・デウスマキナ改よ」
　フリングホルニのイコンデッキに組みあげられていた小型飛空艇をさして、緋王輝夜とネームレス・ミストが言った。パーツ状態でフリングホルニに搭載された物だが、なんとか組み立てが完了したようである。
「コレガ、新シイ力……」
　それを見て、アーマード・レッドが言った。
　飛空艇と言っても、その本体は大型荷電粒子砲にフローターユニットをつけただけの物である。いくつかの補助兵器がついているが、コックピットのような物は存在しない。機晶制御ユニットによって、直接アーマード・レッドを接続する方式だ。コントロールするアーマード・レッドは、ほとんどその身がむきだしという極端な兵装である。
「さすがに、リフトは使えそうにないから、前部非常用発着口から出てくれ」
　面倒な物を持ち込んでくれたと、天城一輝らが発進方法を指示した。
「了解シタ」
　艦首方向に移動すると、アーマード・レッドは開け放たれた非常用発着口から発進していった。
　
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「整備は終わっているわ。いつでも発進オッケーよ」
　イーリャ・アカーシ（いーりゃ・あかーし）が、桐ヶ谷煉たちに言った。
「さすが、イーリャさんの整備。機体は万全ですね」
　ハンガーですでに出撃準備の整っているセラフィートを見あげて、エリス・クロフォードが言った。
「よし、補給中のイコンに替わって、俺たちが出るぞ」
「承知した。今度は、イコンで暴れてやろう」
　桐ヶ谷煉とエヴァ・ヴォルテールがハンガーのリフトでコックピットへと上がっていく。
「以前ディバインクルセーダーが使っていたヴィマーナのデータと、戦闘リンクシステムに送られてきた各機からの敵艦データは、コンピュータに転送されているって。機体はいくら壊れても、私たちがちゃんと直してあげるから、だから、煉さん、無事に帰ってきてね。――あ、エヴァも気をつけていってらっしゃい。まあ、あなたはちょっと怪我したって大丈夫でしょうけど」
　あからさまに態度に鎖をつけながら、エリス・クロフォードが桐ヶ谷煉とエヴァ・ヴォルテールに言った。
「発進するぞ。下がってくれ」
　コックピットハッチを閉めながら桐ヶ谷煉が言った。
　アンカーフックが解除され、自由になったセラフィートがリフトへとむかって歩き出した。
『現在、艦砲射撃中です。イコン各機は、ゲート突入に備えて、待機していてください』
　リカイン・フェルマータから、各イコンへの指示が伝わる。
　すでに戻ってきていたロイヒテン・フェアレーターが、リフトで下りてくる。
「なんだ、すぐに出られないのか」
　桐ヶ谷煉が、不満そうに言った。
　敵イコンとの交戦がないため、対空監視に出ていたイコン各機もいったん帰還し始める。
「ニルヴァーナにおいてきぼりは嬉しくないですわね」
「ええ。再発進指示を待ちましょう」
　カタパルトに戻ってきたファスキナートルの中で、富永佐那が、エレナ・リューリクの言葉にうなずいた。