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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

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ブルニスの水量 残り30%

 一方、激戦と和やかムードが入り混じる人魚の声奪還戦線。
 最初から戦い続けている詩穂たちやセリスたち、ルイ・フリード(るい・ふりーど)などの攻撃は現在も続いていた。
 その最前線で奮闘を続ける大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)
 更にフランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)レイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が戦線を維持し続けていた。
「っかーあいつら! 珍妙なかっこしてるわりに攻めきらず、守りに徹するとは、めんどうやで!」
「熱くなるでない。奴等はそれしかできぬ、と見ればよいのじゃ」
 進展しない戦闘に少々熱くなる泰輔をいさめる顕仁。押されたら引き、引いたら押す。これを繰り返す相手に苦戦を強いられていた。
「歌声を奪い取る下賎な輩にしては粘る。厄介ですね」
「私は歌の多くは知りません。ですから戦うのみです」
 泰輔と顕仁、フランツとレイチェルに別れて常に二人一組を心がける四人。
「むっ、突出してきましたね。レイチェル!」
「はい」
 単独で突っ込んできた敵を見つけたフランツがレイチェルを呼び、レイチェルは答えと同時に剣による牽制。
 その剣捌きの前に身動き一つ取れなくなった敵に、フランツが二丁拳銃【シャヴァルツ】【ヴァイス】を撃ち込む。
 断末魔が轟いた後に、風穴が開いた体が倒れこんだ。
「それで君も音楽を奏でるといい。自分の体でね」
「お見事」
「ローレライの歌声は破滅をもたらすというが、それでも歌を止めることはできない。させはしないよ」
 歌と音楽を愛するフランツが、人魚の声を取り戻したいと思うのは必然だった。
「くそう、あのファナティックというにーちゃんを最初に潰しておくべきやった」
「一理ある、が今は今じゃ。何やら策を練っているものもいる。耐え忍ぶときじゃ」
 会話をしながらも、敵の攻撃をかわし、平伏させていく二人。
「ああ、そうやな。なら派手に遊撃してやるで!」
 泰輔の叫びと共に顕仁の姿が突然消える。と、思いきや【召喚】された顕仁が敵の背後に回りこむ。
「思い切り蹴り上げい! かちわったれ!」
「あいわかった」

――――――カッキーン!
※蹴り上げられた時の悲痛な心情風景をホームランを打ったときの効果音で代用しています。
 精神的ダメージを負われた方は一度休憩をおはさみください。


 蹴り上げられた勝利の右足が敵を討つ。そのままぐうの音もださず敵は轟沈した。
「ふむ、これで少しは気が晴れたかえ?」
「自分でやれんのが口惜しいが、まあええ。次近づいてきた奴がおったら僕がやる」
 物騒なことを言いながらもその顔は微笑みに包まれたままだった。

「そんな訳で作戦通りに行きましょう。もちろん実行後は臨機応変に対応してね」
「えっと、それじゃ、朱里さん。よろしくお願いします」
「ええ。一緒に歌いましょう」
 朱里とピィチーが静かに息を吸う。そして歌いだす。
 朱里と共に、人魚であるピィチーが『人魚の唄』を歌う。
 奪ったはずの人魚の声が、水中に広がっていく。当然、ファナティックの部下たちにも。そして動揺する。
『何故奪ったはずの人魚の声が、今聞こえるのか』と。
 疑心暗鬼に陥った部下たちはそれまでの戦法を捨て、一心不乱に声の主を探し始めたのだ。
「今だ! ここは僕やレジーヌさん、牡丹さんたちに任せて走るのだ!」
 ディフェンスはアイン、レジーヌ、牡丹、レナリィ。
 そしてオフェンスは。
「ほらいくよ! しゃきっとしな、バルク、ルニ!」
「な、なんだってこんなことにぃ!」
「ただ走る」
 ホーティ盗賊団に一任された。
「……ホーティさんにピィチーさんを頼もうと思ったら、逆に頼まれてしまいました。でも頼まれたからには、やり遂げます」
 無秩序に攻撃を開始した敵を確認。【銃型HC弐式・N】で敵の総数、位置を確認しうつつ近づく敵を『シーリングランス』で迎撃するレジーヌ。
「あまり戦闘は得意ではありませんが、少しくらいなら」
「二人のサイコキネシスをくらえ〜」
 一人の敵に同時に『サイコキネシス』を喰らわせ、相手との距離をとる牡丹とレナリィ。
「誰一人、傷つけさせん!」
 『スカージ』で相手のスキルを封じ、大立ち回りをするアイン。
 その行動は向かい来る敵の攻撃のほぼ全てを自分に向けるためだった。
 そしてオフェンスのホーティたちは。
「『怪力』バルク! 貴様はこの十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が捕縛する!」
「な、なんぜだああああああああ!!」
 全力で襲われていた。
「このおばか! なんで狙われてるんだい!」
「そりゃ姐さんと一緒に盗みを働いたからじゃないですかぁ!」
「自業自得」
 三人でコントを繰り広げつつも寸でのところで捕縛の手から逃げおおせるバルク。
「リーダー、僕はあちらのホーティさんとルニさんの足止めをすればいいんでふね?」
 愛らしさリミットブレイクのリイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が宵一に確認をとる。
「そうだ。俺とコアトーで奴を追い詰める。その間にリイムは二人の足止めを頼む」
「みゅー……」
 コアトー・アリティーヌ(こあとー・ありてぃーぬ)が鳴き、先に水中へともぐっていった。
「バルクしか狙ってない」
 話を聞いていた(そしていつの間にか同行していた)タマーラがホーティにそう伝える。
「なに、そうなのかい? ……バルク」
「は、はい?」
「全力で、逃げ残るんだよ! それじゃ任せた!」
「頑張れ」
「ちょ!? 姐さん! ルニー! おいてかないでくれー!」
 バルク狙いとわかるや否やホーティはバルク一人にその場を任せた。
「あれ、ホーティさんとルニさんが離れていきまふ」
「……まあいいか。計画変更、三人でバルクを捕まえる。まあ、その前にコアトーが上手くやってくれるだろう」
 そのコアトーは【落とし穴キット】、【ゴアドースパイダーの糸】、『トラッパー』を使用して落とし穴を設置。
 更にその周辺に【七つの大罪】セクシー罪娘を2体配置。
 設置後、即時撤退をする。
「どどどどうすりゃ……ん? あれは、すっごい素敵なお姉さん方……どうしてこんなところに」
 バルクの中で疑念が湧く。しかし。
「だが、誘われていかないのは男じゃねぇ! うおおおおおお!」
 まんまと引っかかった。それを見た宵一も空から急降下。
「罠に掛かり次第即座に捕縛する!」
 バルク死す。
「まったく、おぬしは一体何をしておるのじゃ」
「うおわっ!」
 何者かに足を取られ盛大にこけるバルク。
 バルクを転ばせたのは辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)、その傍らにはアルミナ・シンフォーニル(あるみな・しんふぉーにる)がいた。
「ホーティに言われて援護にくれば、いきなり罠に飛び込むところとはのう」
「バルクさん、不潔です」
 突如現れた二人にも冷静に判断をする宵一。
「更に計画変更だ。リイムはあの二人の相手を頼む」
「了解でふ!」
 リイムは飛び出し、刹那とアルミナへ挑む。
「これは、面妖な生き物じゃのう」
「手加減、できませんでふよ?」
 一睨みを終えた二人がぶつかりあう。
 リイムの『スタンクラッシュ』は『疾風迅雷』で身体強化をしていた刹那にかわされる。
 そのままリイムの死角まで動き今度は刹那が『ブラインドナイブス』を使用。
「そうはいきませんでふ!」
 【神狩りの剣】を盾のように構え『ブレイドガード』を発動。今度はリイムが刹那の攻撃を受けきった。
「ほう、これはこれは」
「うんとね、静かにしてくださいまふ」
「可愛らしい容姿からは想像も出来ぬほどの威圧感じゃな。して、アルミナや」
 呼ばれたアルミナは既にリイムへと火・雷・氷の術を使用していた。
「魔法はこっちでふ!」
 その攻撃をも【女神の右手】で受けきり、一進一退の攻防が繰り広げられる。
 その間、宵一はバルクを捕縛せんとしていた。
「大柄の割りに、逃げるじゃないか!」
「だから話を聞けぇ! 俺たちは今、あっちにいあるやつらと協力関係でぇ!」
「信じられるものか! さあバウンティーハンターである俺に捕らえられるといい!」
「話を聞けってばぁあああああああ!」
 宵一とコアトーに追いかけられるバルク。ここからバルクの快進撃が始まる、気がする。
「何でもいいから助けてくれえええええええ!」
 いや、始まらなさそうだ。