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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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魚雷を迎撃せよ! その2

「あの、イコンのままで気持ち良くするってどうすればいいのかしら……?」
全員がイコンに搭乗する前、天貴 彩羽(あまむち・あやは)は単身アクリトの元を訪れ、単刀直入にに尋ねた。
「インテグラル・ナイトは搭乗者との同化しており、神経伝達物質を介して搭乗者との感覚を共有する。
 要するに個々の搭乗者の報酬系の神経伝達物質を介した神経細胞間の活動を活発にすれば良い、ということだ。
 個々人により報酬系の刺激については変わるから、具体的にどうとは言えないな」
格納庫のマスティマに向かいながら、彩羽はうーん、と考え込んでいた。キロスが自分の搭乗するナイトに向かって歩いてゆくのが見えた。
「あ、ちょっとキロスさん!」
呼び止められ、振り返ったキロスに彩羽はおもむろに抱きつくとキスをした。キロスが驚いて棒立ちになる。
「おい! 何だよいきなり?!」
「ねえ、どう? キス、気持ちよかった?」
「……あのな? 不意打ちでいきなり、しかも恋愛感情を持ってもいない相手とキスして……なんかあると思うか?」
「うーん。ダメか。……報酬系、報酬系……」
呟きながら去ってゆく彩羽をキロスは肩をすくめて見送った。彩羽はどさっと操縦席に座った。
「まぁ、ともかく、あの魚雷を撃ち落とさないとね。艦隊でもやってくれてるけど、漏れがあってはならないわ!
 僚機との情報連携を密にして、味方のインテグラルナイトが暴走に入ったときは回りに通知する。
 出来るなら四肢破壊で止めるっ!」
イコン制御用にチューニングを施された機晶姫、スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)が副操縦席から懸念げに彩羽に言った。
「またインテグラルが攻めてくるのでござるか……。背後には機動要塞級のルークもいるとか……。
 味方の力も上がっているでござるが……前回のようなナイトの暴走は怖いでござるな。
 それがしが敵も味方もしっかり観測分析して状況把握に努めるでござるよ」
香 ローザ(じえん・ろーざ)ベータリア・フォルクング(べーたりあ・ふぉるくんぐ)を副操縦士とするロード・アナイアレイターから通信を入れてきた。
「インテグラル・ルークが、イレイザーを魚雷代わりに投げてきているそうですね。
 遺跡を狙っているようですが、スポーンやアピスさん、レナトゥスさんたちの心を育てる大事なお祭りが行われている場。
 そしてスポーンたちの平和な街……。破壊させるわけにはいきませんっ!
 私たちは、技量としては、まだまだですが2人ならやれます。
 私たちのイコン、ロード・アナイアレイターもイレイザーを遺跡に近づけさせないようにします!」
ベータリアが言葉を継ぐ。
「私たちは、2人で1つです。 ローザが防げない穴は私が埋めます」
「そうね、皆で協力して当たりましょう」
彩羽が言った。岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)閃電から、山口 順子(やまぐち・じゅんこ)のてきぱきとした声が届く。
「H艦隊の戦術ネットワークをこちらは共用しています。その情報を元に、皆さんと協力して一機ずつ魚雷を潰していきましょう」
「おお、それはありがたいことでござるな。こちらは指揮官スキルがありますゆえ、戦術連携で有利になるかと思われるでござる。
 万一の際にはヴィサルガ・プラナヴァハもあるでござるよ」
スベシアが言った。
 艦隊の砲撃情報を閃電が受信し、マスティマとロード・アナイアレイターに撃ちもらした魚雷の情報を配信する。マスティマはその高い機動性を利用し、砲撃の中心部から最も遠い魚雷を相手取る。黒色チャクラム・ホロウで飛来するイレイザーをスライスしながら、別の魚雷をギロチンアームで切り裂く。ロード・アナイアレイターはウィッチクラフトライフルで主に遠距離からイレイザー魚雷を狙う。光弾が炸裂すると、自らの勢いが仇となってイレイザーが砕け散る。だが相手も高速である。いくつかは遠隔射撃を逃れ、ロード・アナイアレイターに迫る。ベータリアが即座にインファント・ユニットを本体から切り離し、ビームで魚雷を捉え、撃破する。
「ローザ、焦らずに私と合わせましょう。
 1人で力が足りないならば2人の力を合わせればいいだけですから。
 皆さんとも協力すれば、さらに大きな力となるはずです」
「そうね。なんとしても遺跡を護りましょう」
閃電は艦隊へ接近する敵に対し、ウィッチクラフトライフルとバスターライフルを撃ち込んでいた。火気管制と機体の操艦を担当する伸宏がサブモニターに映し出されたルークをちらりと見た。
「やれやれ、今回はなんかデカイのが来たな。しかもイレイザーを魚雷代わりに投げてくるのかよ。
 ……と言ってもここから先には行かせないけどな」
遠距離攻撃を抜けてきた魚雷を冷凍ビームで牽制し、何気ない動作で大型高周波ブレードを一振りして真っ二つにする。
「艦隊からのグラビティキャノンの射撃の際の退避勧告には注意しておかないとな。
 重力波と水圧のダブル効果で僚艦に潰されるのはご勘弁願いたい」
「全ての僚機にオープンチャネルで呼びかけてくるとは思うけど、連絡が来たら僚機にも念のため当機からも連絡を入れるね」
「念には念を入れて、だな」
「伸宏君、2時方向から敵が接近中よ」
「了解」
閃電は滑らかに移動し、バスターライフルを向かってくる魚雷めがけて発射した。
「EN、残弾が30%以下になったら後退し、土佐で補給後に再出撃する」
「EN、残弾が40%以下になったら警告を入れるね。交代で土佐に帰艦、補給をしましょう」
順子が言い、少し考え込むような表情で呟いた。
「……そういえば、キロスさんがまた突撃したらしいけど大丈夫かしら……?」