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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第3回/全3回)

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機動要請を制圧せよ その1

 ゴダートの機動要塞は比較的ゆっくりとした動きで――もともと速度重視の艦ではないため――遺跡から離れつつあった。葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)笠置 生駒(かさぎ・いこま)と連絡を取り、急ぎゴダートの機動要塞の逃走を防ぐべく、吹雪は伊勢で、生駒はジェファルコン特務仕様で、各々遺跡を飛び立った。
「今までずーーーっとろくでもないことばっかり言ってましたが、ついに発掘物の持ち逃げまでやらかした、ゴダート指令を粛清でありますっ!」
「ちょっと、粛清はまずいわよ、そこまでの権限はないんだから!」
コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が頭に血が上っている吹雪に言う。
「……では、もとい、駄目指令の逃走を阻止するでありますっ!
 ふふふふふふ。伊勢はブーストスラスターユニットを2個装備した高速艦。通常の機動要塞の2倍の速度が出るのであります。
 今こそその機動力を最大に生かす時なのであります!」
「吹雪……少し落ち着きなさいって。カっとなって行動してもいい結果は得られないよ……」
半ばあきらめたような口調で、コルセアがいなす。
「でも、気持ちは解るよ。やることなすこと迷惑なあの指令がついに持ち逃げまで企んだので機動要塞を沈めてやりたいもん」
生駒が言う。
「はぁ〜も、次から次へと、人が気持ちよく酒を食らってるときに面倒ばっかり起こしよって……」
生駒のパートナー、シーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)がゴダートの要塞のモニタリングを行いながらぼやく。
 伊勢がゴダートの要塞を追い越した。そして針路方向に大きくユーターンする。慌てたのは機動要塞の艦長だ。
「正面衝突する気かッ! 面舵いっぱい、回避しろ!」
だが、伊勢はその針路に執拗についてくる。無論特攻するつもりはない。目立たぬように低速で後方に退きながら、衝突の危険性を相手に認識させる程度の距離を置いて、常に機動要塞の正面に位置する。その間に生駒のジェファルコンが要塞の周囲を高高度から偵察し、シーニーが艦の武装を確認する。
「正面側に要塞砲一門、左右にウィッチクラフトライフルとソニックブラスター、後方にレーザーマシンガン。
 まぁ標準的な小型機動要塞の武装やね」
シーニーが言うと、生駒が言う。
「当機は伊勢が動きやすいようにゴダートの機動要塞に接近、砲台を射撃でつぶして無力化を行います!
 今まで好き勝手にやってきたらしいしこれくらいいいよね。まあ落とさない程度にってことで」
伊勢が威嚇射撃を行い、ブリッジ上方のセンサーのアンテナをピンポイントで吹き飛ばす。同時に生駒機が要塞砲の射出口めがけて上空からバスターレールガンを打ち込む。爆炎が上がり、機動要塞の主砲が変形する。
「な、何のつもりだ!?」
艦長が裏返った声でわめく。
「ゴダート氏が勝手に重要なヒトガタを持ち出し、敵前逃亡を行おうとしているのであります。
 阻止するのが我々の役目ッ!」
吹雪が負けじと喚き返す。
「当艦が大破すれば、ヒトガタも無事ではすまないぞ! それに格納庫から進入しているというお前たちの味方はどうなるんだ!」
「ジェイダスさんとその仲間達なら、例え核を射ち込んでも美しく脱出するはずであります!!」
吹雪が熱狂した口調で言い切った。
「そうそう、貴艦が爆発でもしなければ大丈夫大丈夫」
のほほんと生駒が返した。機動要塞の艦長は頭を抱えた。
「一体司令は何を考えておられるんだ……何が起きたんだ? 資料を安全な所に移送し、地球の安全を確保するんじゃないのか……。
 その前に当艦の安全が……」
マゴマゴと伊勢から逃げ回る機動要塞の武装が、生駒機により少しずつピンポイントに破壊されてゆく。

 ジェイダスの護衛をかね、リア、レムテネルと共に機動要塞に侵入した紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は要塞の中心部を目指し、先陣を務めていた。
(あの馬鹿、ヒトガタ盗みやがって! ……これ、任務放棄と物資強奪とかになるんじゃね?
 しかも他の連中を扇動してるし、指揮官として機能してないよね?
 なら、緊急措置として、止める為に一発ぶん殴っても良いよね?)
先だってルシアの事をモノ扱いしたゴダートに、唯斗は腸を煮えくり返らせていた。そこにこの事態である。まさに報復の絶好の機会を与えられたのだ。それを利用しない手はない。イコンクラスの相手と生身で渡り合えるほどの装備、PCM−NV01パワードエクソスケルトン――鴉――を身に纏い、道中ジャマするもの全てをぶっ飛ばしてゆく構えだ。
「今日の俺は急いでる上に苛立っているからなー、邪魔すっと危ないぞー」
通路脇から慌てて走り出てきた警備兵3人に一言警告をすると、雷霆の拳でいっぺんになぎ倒す。凄まじい衝撃に兵士たちは失神し、折り重なってその場に倒れた。
「大怪我はしない程度に手加減はしておいたからなー」
後ろから悠然とジェイダスが気絶した兵士を飛び越して言う。
「なかなか強引だが、混乱時には有効だな」
要塞内にレイで突入したルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)のペアと、黒崎 天音(くろさき・あまね)ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)らもイスナーンを格納庫に残し、ジェイダスの護衛をしながら要塞内を進んでいた。彼らは先陣を切る唯斗を追いながら、ジェイダスの後方と左右に通路がある場合、そちらにも気を配る。天音が走りながら言う。
「ゴダートを根本的に変える事は出来ないかも知れないけれど、倒すわけにもね……」
ブルーズが頷く。
「ゴダート・グリーンベルトは地球から預かった要人の一人でもあるからな……。
 怪我などさせず上手く気絶なりさせて、確保する事が出来ればいいのだが」
ルカルカもそれに同意する。
「調査団員同士が怪我させ合うのは避けたいもんね。ここを護衛してる人たちも同じだし……」
ゴダートの脱走直前まで彼を補佐していた関係上、機動要塞のデータを見る機会があったダリルが先頭を行く唯斗に声をかける。
「その通路をまっすぐ行って、右側の2重扉の先が司令用スペースになっている、おそらく彼はそこにいると思う」
天音がトレジャーセンスとシックスセンスを併用し、その言葉の裏づけを取る。
「スキルもその方向にヒトガタとゴダートの気配を捉えたよ。
「しかし叩き上げの軍人があれほど取り乱すとはな」
ブルーズが呟く。ジェイダスが薄く笑う。
「奥底に自信がなく、何かにしがみついてのみ自尊心などを保っているものは脆いものだ」
「“人の心”か……不思議な話だよね。それが何処から来て、何処へ環るのか。いつか僕にも解るだろうか」
天音が半ば一人ごちるように言う。
2重扉の前には、護衛が10人ほどいた。唯斗が真っ先に突っ込み、雷霆の拳で2人をまとめて吹っ飛ばす。ルカルカが一回転して相手の懐に飛び込み、当身で2人の兵士を気絶させる。ブルーズは一騎当千と歴戦の立ち回りを使い、手加減しながら3人をまとめて壁に叩き付ける。ほんの一瞬の間である。残る3人はその様を呆然と見ていた。
「どうする? 痛い目を見るか? お前たちの司令官は窃盗並びに敵前逃亡者なのだが……?」
ジェイダスが冷笑を浮かべて進み出る。恐ろしいほどの威圧感に、残る3人は武器を手放し、投降した。
「そんな……存じませんでした……失礼いたしましたっ」
後続の契約者たちに後を任せ、ルカルカとブルーズが一気に2重扉を吹き飛ばした。