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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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――北対、クク・ノ・チの私室。
「……全く見つかる気がしねぇな」
 部屋を探していた唯斗が大きく溜息を吐いた。
「しかしここではないとしても、当てがないぞ」
 モリ・ヤが棚を睨みつつ呟く。
「……けど、それらしき物は見つかりませんね」
 ウヅ・キが辺りを見回す。クク・ノ・チの私室は書物らしきものが納まった棚や机に椅子などが整って配置されており、特段目立った物がない。
「あーもー! まどろっこしいわねぇ!」
 我慢できない、とばかりにうがーとラブ・リトル(らぶ・りとる)が吼える。
「大体ヨリシロ? って何なのよ!? ドクロ? 頭蓋骨? そんなもん集めるなんてキモいのよ! しかも隠し持ってるだなんてぜぇーったいネクラなムッツリスケベよ!」
「あの、関連性がわかんないんですが……」
「あたしが決めた! そー決めた!」
 ラブが言いきると、ウヅ・キは「は、はぁ……」と言葉を詰まらせてしまう。力技とは恐ろしい物よ。
「そんな奴の部屋で遠慮なんていらないわ! ウヅ・キ、ちょっと下がってなさい!」
「え、何をするんですか?」
 首を傾げるウヅ・キを「いいからいいから」と下がらせる。それを見て唯斗とモリ・ヤも下がる。
「せーの……」
 ラブは大きく息を吸い込むと、
「■■■■■■■!!!!」
空気を全て吐き出す勢いで【咆哮】を放つ。その身体から一体どのようにすれば発せられるのか、と言う程の音量が口から、というよりも全身から放たれる。最早言葉になっていない。
 部屋全体の大気が震え、様々な物が揺れる。流石神をもおののかせると言われる咆哮は伊達ではない。
「や、やるならやるって最初から言ってくれ……!」
 唯斗が耳を押さえつつ、顔を顰める。
「ふふん、でもこれで隠し部屋の扉が――」
「……開かれない、な」
 モリ・ヤも顔を顰めつつ、辺りを見回す。部屋の物が揺れにより動いているが、隠し部屋の扉が口開いているようなことは無い。
「……あれーおっかしいなー。これで隠し部屋の壁が壊れたりとかするはずなんだけど」
 流石にそれは無理がある。
「やれやれ……ん、どうした?」
 書物が納まる棚の前で、じっと見つめて動かないウヅ・キに唯斗が話しかける。
「……今、この本だけ動かなかったんです」
 そう言ってウヅ・キは一冊の書物を指さす。一見、何の変哲もない書物だ。
「動かなかった?」
「はい。他は隙間の方に傾いたり、少なくとも揺れたりしたのに、この本だけ」
 そう言うとウヅ・キはその書物にそっと手を伸ばす。取り出そうとしたのかどうかはわからないが、ウヅ・キの指が触れると書物が本来壁となる後ろへとスライドする。
 一瞬ビクリと身体を震わせるが、ウヅ・キはそのまま書物をスライドさせるとすっぽりと、壁に収まってしまった。
 すると、本棚がゆっくりと、扉の様に動き出す。そして現れたのは――
「隠し部屋……か?」
「そ、そうみたいです」
 モリ・ヤの言葉に、ウヅ・キが頷く。
「すっごーい! ウヅ・キ、やったじゃない! あ、でもこれラブちゃんの【咆哮】が切っ掛けになったわけだし、ラブちゃんのお手柄にもなるのかな?」
「そいつはおいといて、中は何があるかわからない。俺がまず先に入る」
 唯斗が警戒しつつ、開かれた入り口に足を踏み入れる。中は暗いかと思われたが、所々照明があり問題なく内部が解る。
「――ッ!?」
 中にある物を見て、唯斗は言葉を失った。
「ねー、何かあったのー?」
 入り口から、ラブが呼びかける。
「……ああ、あった。ろくでもない物がな……来るなら覚悟した方が良いぞ」
 唯斗の言葉に首を傾げつつ、ラブとモリ・ヤ、続いてウヅ・キが中に入る。
「――何、これ」
 そして、言葉を失った。

――部屋に置かれていたのは、祭壇を思わせる装飾の数々。そしてその中央に、人の髑髏が文字通り積み上げられていた。
 その置き方は整っているものの、扱いは物だ。儀式のための道具でしかない。そこに尊厳などという物は存在しなかった。
 そしてその数は到底数えられるものではなかった。三桁あると言われても納得してしまう程の数だ。
 それ程の数が、クク・ノ・チという男の野望の為犠牲になったというのだ。
 異様な光景を目の当たりにし、言葉を失い、ただただ唖然とするしかなかった。
「……モリ・ヤさん。その銛、貸してください」
 初めに動いたのはウヅ・キだった。モリ・ヤからひったくる様に銛を奪うと、
「……ごめんなさい!」
大きく振りかぶって、髑髏の山を崩した。そのまま銛を力任せに振り回し、山を崩したかと思うと謝罪の言葉を述べながら髑髏を割り始める。
「酷い扱いをしてごめんなさい……でも、こうしないといつまでたっても操り人形のままだから……貴方達の無念はきっと晴らすから……晴らしてくれるから……!」
 ウヅ・キの行動に唯斗もラブも、モリ・ヤも動けずにいた。しかし次第に何をすべきか理解すると、同じように髑髏を割り始めたのであった。