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霊気漂う深夜の肝試し

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霊気漂う深夜の肝試し

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第6章 理想の声を求めし者

「さぁて、まだまだ沢山のカップルを驚かせてやりましょうか」
天井裏からやってきたエドワードは天井のパネルを外し、下の階に降りる階段を探すソアへ手を伸ばす。
しかし少女の近くにヤジロ アイリ(やじろ・あいり)がいたことを確認すると、先に男子の叫び声を聞いてもつまらないと思い手を引っ込めた。
人の気配を察知したみことが光条兵器の明かりをエドワードの方へ向ける。
「うわっ眩しい!」
思わず声を漏らしてしまい、アイリに気づかれてしまった。
「怪しいやつ…これでも食らえー!」
アイリがエドワードに向かって火術を放つ。
ウェルダンに焼かれる前に慌てて逃げ出す。
「運よく逃げたようだね」
みことは少しばかり焦げた天井を見上げた。
「加減したからたぶん平気だろう。それよりも、こっちの方に階段があるようだぞ」
コンパスを使い、アイリが方角を確認する。
「では、ワタシは皆さんを呼んできますね」
そう言うと、フレアはソアさんたちを呼びに向かう。
数分後ゴールを目指す生徒たちが集まり、校舎の2階へ降りていった。



「そこのあんた」
薬品の入った瓶を倒してしまい、正気を失っている表情の鬼院 尋人(きいん・ひろと)がエドワードの方へ寄ってきた。
「オレの親友になってくれぇえー!」
「男子ぃいいー!?すみません女子がいいですー!」
上半身裸でランスを振り回しながらやってくる尋人から少年は全力で逃げ出す。
飛びかかられそうになった瞬間、床に伏せて避けると直進してきた尋人はそのまま窓ガラスを破って校舎の外へ落下した。
運よく柔らかい土の上に落ちたため、かすり傷程度ですんだ。
「いっ…痛たた…。どこ…ここ。何でオレこんなところにいるんだろ」
正気に戻った尋人は自分が何をしていたのかすっかり忘れ、薔薇の校舎へ戻っていった。



イルミンスール校舎4階には、女子オンリーをターゲットとした仕掛け人エル・ウィンド(える・うぃんど)が待ち構えていた。
理由は男子の叫び声なんて聞いてもつまらないからという単純な内容だ。
2人の可愛らしい女子が左側の通路から角を曲がってエルがいる位置へ近づいてきた。
懐中電灯を両手で持ち、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)はビクビクしながら歩く。
「きゃぁ!今…物音が」
「メイベルが小石蹴っただけだよ。(その声で僕の方がビックリしちゃうよ)」
異常な怖がりように、パートナーのセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が深いため息をつく。
「あぁああそこに人影が…!」
「えぇっ、やだへんなこと言わないでよ!」
2人は怯えながら影が見えた方へ懐中電灯のライトを向ける。
「そこに誰かいますかー?」
声をかけてきたのは菅野 葉月(すがの・はづき)だった。
「よかったお化けじゃないですぅ。人でしたぁー」
ほっと一安心したメイベルが駆け寄る。
「1人で行動してるの?」
「いえ、連れがいたんですけど途中ではぐれてしまって…」
珍しそうに言うセシリアに葉月は首を左右に振り、単独行動ではないということを言う。
話し込んでいる彼らの様子を窺い、すっかり気が緩んでいることを確認すると3人に気づかれないようにそっと人体模型を道の途中に設置した。
「あれ…?さっきあんなのありましたっけ」
「なかったよね」
「うぅ…なんだか不気味ですね」
「本物じゃないでしょうから平気です…けど…ね!?」
近くで人体模型を見た葉月の顔が強張る。
「―…これってこんな感じでしたっけ?」
後ずさりながらメイベルとセシリアに問う。
本物のようにみずみずしい中身を直視した、少女2人は悲鳴を上げた。
「(うーん、女の子の悲鳴って感じだよなー♪)」
満足そうに言うエルだったが次の瞬間、表情が一変しする。
「うわぁああー!」
中身が本物と勘違いした葉月も、2人に続いて叫ぶ。
「(ちっ!野郎がいたか。せっかくのいい気分が台無しだぜ)」
エルは不愉快そうな顔をし、眉間に皺を寄せて心の中で呟いた。
男は早くどっかいってしまえという念波を発していると、傍のダンボールがごそごそと動き出す。
何事かと目を丸くして視線を移すと、箱の中から1人の魔女が出てきた。
葉月のパートナーのミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)はエルの顔を数秒間じーっと見る。
「菅野 葉月ー!」
フルネームで名前を呼んで駆け寄る。
「あっ!まったく、どこへ行っていたんですか」
「今ね、そこに人がいたよ」
見つかっては不味いと、エルはとっさに用具入れの中に身を隠した。
「誰もいないようですけど」
「おかしいなぁ、さっきそこにいたのに。ワタシと目が合った時、驚いてた感じだったなぁ」
ミーナは不思議そうに首を傾げる。
やがて4人の気配が遠ざかり、エルは安堵の息を漏らした。
「何ですかこれ…まさか…本物じゃないでしょうね!?」
鬼灯 薫(ほおずき・かおる)が人体模型を珍しそうにまじまじと見つめる。
恐る恐る片手でつっついてみると指がめり込む。
「げっ……うっ…あぁああー!」
あまりの不気味さに、薫は思わず悲鳴を上げてしまう。
「あぁあイヤだ、触ってしまったぁあ」
触れてしまった手をブンブン振りながら逃げるように走り出す。
エルはまたもや男子の声を聞いてしまい、精神的に沈んでしまった。