校長室
血みどろの聖女
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Scene5 5-1 遠目にもわかる黒い一団がこちらへと向かってくる。 その一団をスパイクバイクで先導しているのはレベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)とアリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)だ。 「おまたせ〜 ここに向かう途中で、襲われたらしいヨ。恐竜に」 「まさか、ドージェ様に直にお会いできるとは思いませんでしたわ」 「ありがとうございます」 いち早くやって来たレベッカとアリシアが、マレーナに得意げな満面の笑みを浮かべる。 そして一同は、彼女たちが先導してきた一団を見た。 それは、ある種異様な光景だった。 数百人という人々がごった返す。 よく見ると一般人ではない。ヤンキーやならず者など腕に覚えのありそうな連中や辺境の蛮族たちだろう奇妙ないでたちの男たちだ。 なにか号令のような声が上がり、それが合図だったのかざわめく人々はしんと静まり返り、そしてモーゼに割られた海のように道を開くと、その場にひれ伏すと礼拝をはじめる。 その姿に、新四天王を決める争いに集まってきていたヤンキーたちや、町のゴロツキたちなどが倣う。 その中央に、黒い革の衣装にごついチェーンを幾重にも巻いたひときわ巨漢の男―― ドージェ・カイラスが存在した。 この現場の惨状(四天王のひとりゴンサロの酒場が爆発炎上している理由)を聞いたドージェは、片手に持った巨大な肉塊―― その肉塊の形状、とくに後肢の特徴的な鉤爪の形からディノニクスと思われる―― をバリバリ食いながらニヤリと笑って見せた。 「面白いな」 ドージェの好意的な表情と言葉に、側近の者達は安堵する。 そんな緊迫した場へ、緑と赤のツートンカラーと青と黒のツートンカラーの衣装のふたりのピエロがやってきた。 「ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)だ覚えておけ」 「クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)じゃん覚えんじゃじょんじゃん」 その場違いに身の程知らずの自己紹介に、ドージェ本人よりも周囲の者達が激昂する。 「んだてめぇ!!」 「なろぉおおお!! 「すったるぁ! おるぁああ!!」 「ごるぁああ!!」 ドカ! バキ! グハッ! ゲホ! ナガンとファストナハトがドージェに対して戦いを挑む前に、怒った側近達の怒りに飲みこまれてしまった。 「って、ナガンもファストナハト挑戦者だよね」 「勝てるかどうかなんて、実際に戦ってみなければわからないものです」 一方的な戦いにハラハラしているマレーナの横でティータ・アルグレッサ(てぃーた・あるぐれっさ)がのん気に言い、その隣にはシルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)が『観戦席こちら』と書かれたプラカードを掲げ持っている。 そう言う彼女たちのパートナーたちもナガンたちと同様、神と呼ばれる男と手合わせを望む者たちだ。 「レオンたちが一撃でもドージェに加えることができればよいのですが……」 シルヴァは、ドージェに挑まんとするパートナーたちを見た。 「神と呼ばれる男の力、如何程の物か見せて貰おう」 ドージェの前に立ちはだかるのはレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)だ。 レオンハルトは、刃渡り1メートル程の片手半剣型の光条兵器を左腕を攻撃し、それと同時にクライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)がランスを投げつけた。 「僕が目指すのは最強の盾。その為なら神の一撃だろうと―――― バカナウェエエエエェイ?!」 両腕を構え、ドージェの一撃に耐えようとしたクライスは、神の一撃のもと盛大に吹っ飛んでいった。 多少、本人のバーストダッシュも入っていたようだが…… 「くっ……」 クライスの吹き飛ばされた一撃を、レオンハルトは自らの光条兵器を盾に持ちこたえていた。 そこに姫宮和希(ひめみや・かずき)が躍り出る。 「会いたかったぜドージェ! 今こそパラミタ最強の称号、貰い受けるぜ!」 「ふふ、噂通りのイイ顔……だけどもう少し良くしてあげる♪」 ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)が斜に構えて舌なめずりする。 和希とヴェルチェは次々とレオンハルトを踏み台に大きく飛びあがり、攻撃をしかける。 和希は渾身の力を込めドラゴンアーツで突きを入れ、ヴェルチェはドージェのこめかみを狙って回し蹴り…… が、ふたりは恐竜の丸焼きをバット代わりに振り回され、 カン! カーン!! と小気味の良い音を立てて飛ばされていった…… 「そう、うまくはいかないよね――?!」 吹っ飛ばされたパートナーたちを目で追っていたティータたちの上に影が差す。 驚いて見上げると、いつの間に近づいたのか神と呼ばれるその人の残忍で冷徹な目にぶつかった。 (うごけない……) 「きゃぁああああっ!!」 えも言われぬ恐怖に凍りつく。 ぶわっと大きな手が振りあがり、思わず身をすくませたシルヴァとティータの横で悲鳴があがった。 見るとマレーナがドージェに担ぎ上げられたのだ。 マレーナが思わず上げた悲鳴に、ドージェは無言で睨む。 その威圧する視線に、マレーナは再会を確信し頬をバラ色に染めた。 マレーナを回収したドージェは、彼に付き従い崇拝する軍団を引き連れて次の目的地へと去っていった。 「……」 その後姿を見送ったグレン・ラングレン(ぐれん・らんぐれん)は、意気込みの割りに武勲もあげられず空回りしていた感、絶大の王大鋸に声をかけた。 「おまえさんなら、いつかなれるさ。 四天王なんてケチなもんじゃねぇ、ドージェのようなてっぺんにな!」 ところで、パラ実四天王のひとり女衒のゴンサロに代わり、新たな四天王と認められたのは朱 黎明と最後まで争っていた遠野 御龍である。 「ま、認定証とかあるわけではないですけどね……」 「そのようなものがなくても、御龍あなたが四天王です」 「Eランクだけど……」 「は?」 御龍と秋桜が振り返る。 声の主は、小さな竜。 「パラ実四天王はランクがあって、Eランクが最下層なの」 波羅蜜多実業生は3以上の数が数えられないため、自称四天王(4番目以上)がたくさんいたのだ。 そこで誰が分けたのかは知らないが、AからEまでのランクが存在するという。 ま、まだ増えるかもしれないけど。 「だから、上を目指して頑張ってなの」 小竜は言うだけ言って姿を消した。
▼担当マスター
澤井小雪
▼マスターコメント
はじめましてこんにちは、澤井小雪です。 ご参加いただきましてありがとうございます。 楽しんでいただけましたら幸いです。 また機会がありましたら、お会いいたしましょうです。