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目指すは最高級、金葡萄杯!

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目指すは最高級、金葡萄杯!

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第六戦 交わされる想い


 影野 陽太(かげの・ようた)は昼食を終えて腹ごしらえがてら一人ぶらついていると、フードをかぶった女性が建物の影で独り言にしては大きな声で話しているのを耳にする。

「え、赤い髪に赤い目……黒い肌の機晶姫ですか? 確かにいますが……あの、理由くらい教えていただいても……は、もちろん私の知るべきとではないのかもしれませんが」

 ブツン、と何かが千切れるような音が響いて、それが盛大に通信機を切られた音なのだと理解して思わず息を潜めた。

「おかしいなぁ……ディフィア名産の金葡萄を持って帰れば喜んでもらえるってしか聞いていないのに……」

 女性はため息混じりに建物の向こうへと歩いていった。単に学校の関係者かもしれないのだが……怪しい。そう影野 陽太は直感した。

「念のため警備班に伝えておかないと……」

 時を同じくして、朱 黎明がそれを高台から見つめていた。建物の影には、人の形ならざるものたちがうごめいているのが、彼の視線からはうかがえた。これまでの統計から考えて、鏖殺寺院の人間が魔物を引き連れてきた可能性は高い。女性の後をついていかず、いくつかの影は建物の脇に隠れていった。

「まぁ、数は減らしておくか」

 スナイパーライフルを持ち出すと、うごめく影めがけ、数十発弾を撃ち込む。急所をうまく捉えられたようで、やつらはほとんど動かなくなった。


 九弓・フゥ・リュィソーは、村の側を流れる川を遡って歩いていた。マネット・エェル、九鳥・メモワールの二人は九弓・フゥ・リュィソーに抱きかかえられながら、紅葉が彩る川辺を歩いていた。川の水はとても澄み切っていたのだが、なぜかこのこの川だけ魚が住んでいなかった。下流は他の皮が合流した結果ゆえか、多くの魚が住んでいたがこの辺りまで来ると何故か生き物すら済んでいないような気さえしてきた。

「九弓……なぜここにはいないとおもう?」
「魚がいないのは、きっとここに金葡萄を作った原因の何かがいるから、かな」
「そうなんですか?」
「ただ、知らないほうがいいこともあるわ。多分、ここにあるのは……」

 見上げた先には、今は使われていない様子の洞窟から水が湧き出ているのが確認できた。小さな石碑には文字が刻まれ、それらが名前だというのがわかる。憶測ではあるが、きっとこの中は機晶石が沢山取れた古い発掘所で、何かしらの理由があって封印することになったのだろう。

「……これだけの力を秘めた水……ってことは、この中は機晶石が沢山あるのかしら?」
「でも、これを知ったからどうこうしようなんて、無粋なこと考えちゃダメだと思うの。謎は、多いほうがいいしね」
「村の人たちも、これを内緒にしてるのですね」
「どうしてそう思うの?」
「ああ、あの石碑……確かに、歴代村長の名前が彫られているわね……」
「紅葉狩りもしたし、秋は十分堪能したわね。冬はどこに行きましょうか、二人とも」

 九弓・フゥ・リュィソーはそういうと、また二人を抱き上げて来た道を戻っていった。謎を自分の胸にだけ秘めて、決して口を開くまいとひそかに誓いを立てた。




 金葡萄のワインを見つけることはできなかったが、フランソワ・ド・グラスは金葡萄が取れた畑の持ち主をようやく探し当て、ようやく枝を分けてもらえることになった。

「いいのでござるか?」
「ただ、金葡萄が必ず実るわけじゃないぞ? それでいいなら」
「無論でござる。感謝する」

 メイド服でいまだに接客を続け、いつの間にか月島 悠とならぶ勢いで美少女ウェイトレスとしての能力を余すことなく発揮していた黒乃 音子は朗報を告げてきたパートナーに歓喜の声を上げて喜ぶ。ただ、金葡萄がどうして実るか、という謎がいまだ残されていた。それを話そうと思い顔をあげさせるが、その先にモヒカンに波羅蜜多ツナギを来た明らかに柄の悪そうな波羅蜜多実業高校のチンピラたちが数人いた。

「へぇ、いいもん持ってんじゃねぇか……」
「金葡萄って、高く売れるんだろ? なら、俺たちが高く買い取ってやるぜ?」
「ほしかったら、大会に参加すればよかったのにな」
「ま、出場したところでどうせウィルネストに負けちゃうのですよ」

 そこへ姿を現したのは、ウィルネスト・アーカイヴスとそのパートナーのシルヴィット・ソレスター。その後ろから出てきたのは浅葱 翡翠だ。交流がてら、一緒に食事に来たらしい。レイディス・アルフェインと、クライス・クリンプト、そのパートナーのローレンス・ハワードも同じ理由で闇商人の屋台へ訪れたようだ。

「休憩がてら出てきたら、なんて場所で喧嘩してるんだよ。ジュースが買えないだろ」
「まだけんかは開始していないだろう。クライス、ここで汚名返上したら特訓は勘弁してやろう」
「が、がんばりまっす!」
「逃げるんなら今のうちだぜ? 私たち、試合の後だから身体はばっちり動くしな」

 ミューレリア・ラングウェイも加わり、パラ実のチンピラ達は一瞬怯んだが、売った喧嘩から逃げるなんて恥ずかしいことができるわけもなく、チェーンソーや鉄パイプを掲げて双方の戦力はぶつかり合うこととなった。

 ぶつかり合う拳と、飛び交う魔法はもう一つの大会会場のように盛り上がっていた。