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古代魔法書逃亡劇

リアクション

 空中の争いは佳境へ。
「ギャアァアオオォウ!」
 紙ドラゴンが、囮役の六本木優希と誘導するディアス・アルジェント、ルナリィス・ロベリアを向きながら翼を大きく動かし風を起こす。それを避けた葛葉翔がグレートソードで、ファルチェ・レクレラージュがグレートソードで脇をつつけば紙ドラゴンが周囲を飛ぶ小型飛空挺や箒を、尾を振って撒く。
「行きますよ!」
 一時後退したミラベル・オブライエンとクレア・ワイズマンが【ツインスラッシュ】を仕掛けるが紙ドラゴンは身をかわして避ける。かわした先を銃弾が狙う。上空から大草義純のスナイパーライフルとエース・ラグランツのハンドガン、地上からはラルク・クローディスのアーミーショットガンが唸り紙ドラゴンを形成するページが剥がれおちる。それを回収するのは掃除機を背負ったあーる華野筐子と蓮見朱里、そして地上のルイス・マーティン。
「このまま畳みかける!」
 さらに続くのは紙ドラゴンを四方から狙う攻撃。翼の付け根を剣で狙うアイン・ブラウ、ドラゴンの頭上から撃ち落とすように攻撃を繰り出すサクラ・フォースター、魔力を攻撃する天枷るしあ、地上から【ドラゴンアーツ】を放つルカルカ・ルー、飛翔してナイフを連投するヴェルチェ・クライウォルフ、弓で目を射抜く夏候淵だ。紙ドラゴンは身じろぐ。
「今じゃ!」
 セシリア・ファフレータの掛け声とともに呪文が紡がれる。彼女をはじめとして【アシッドミスト】が紙ドラゴンを撃つ。それを合図に【雷術】がディアス・アルジェント、クマラ カールッティケーヤ、本郷涼介、ダリル・ガイザック、カルキノス・シュトロンデ、そして紙ドラゴンの背中に乗る緋桜遙遠から放たれ紙ドラゴンの翼の付け根を集中攻撃。
「ォオォオオオオゥ」
 嵐よりも強烈な攻撃に紙ドラゴンがふらりとよろめいた。
「やるぞ、ニーチェ!」
「……ニーチェ姉様達、よろしく」
 ディアス・アルジェントとルナリィス・ロベリアは今が好機と爆弾をいくつも取り出し、ドラゴンの頭上へ投げる。ディアス・アルジェントは【火術】で導火線に火をつけた。そのまま二人は退避。地上の橘ヘーゲルも【火術】で点火した。
「行くぜぇええ!」
 グレートソードを抜いたベア・ヘルロットが小型飛空挺から飛び降りた。風を裂き狙うはドラゴンの翼。グレートソードを突き立てようと全身の力をこめてドラゴンに飛び込む。
 爆弾爆発寸前、ベア・ヘルロットの攻撃が届く……その時。
 そこへ現れたのは自転車二人乗りの七枷陣とリーズ・ディライド。
「いらっしゃいませー、お一人様ですか〜っ!?」
「にはは♪ようこそお越しくださいました〜☆」
 飛び上がった勢いのまま紙ドラゴンに体当たりすると、七枷陣は【雷術】を紡ぐ。
「こちらへ……どーぞってね!」
「もう飛ばせないよー! てやーっ!」
 そのまま【雷術】使用。その勢いのまま自転車のペダルを漕いで紙ドラゴンにめり込ませる。同時にグレートソードが突き刺さる。
 ドォオオオオオオオオォオオオン!
 上空と地上の爆弾がドラゴンを挟むように爆発。
 崩れ落ちるドラゴン。
 それと共に落ちていく数名の人々。
 映画さながらの空飛ぶ自転車。七枷陣とリーズ・ディライドは満足げな表情を浮かべ、紙ドラゴンと自転車ごと地面へ……。
「危ない!」
 オウガ・クローディスが自転車から投げ出された二人をがっしと受け止めた。
「お怪我はありませんか?」
 問いかける。二人は満足げな表情で気を失っていた。
「っく、いてぇ〜」
 ベア・ヘルロットが呻く。彼は小型飛空挺に乗るマナ・ファクトリの腕の中にいた。
「キャッチできなかったらどーなってるか分かってるの!?」
 震える声で叫ぶマナ・ファクトリに、ベア・ヘルロットは微笑んで見せた。
「だが俺は生きてるからいいじゃねえか☆」
「バカ熊!」
 マナ・ファクトリはベア・フェルロットを拳でぽこぽこと叩く。
「いてぇってマナ! マナ……?」
「っく……心配、したんだから……」
 怒りと安堵で涙を流す彼女の腕に力がこもる。
「ごめんな」
 苦笑してベア・ヘルロットはマナ・ファクトリの頭を撫でた。
 もうもうと立ち込める煙を裂き、クリスティ・エンマリッジの運転するバイクが走る。その先にルイス・マーティンが回収したページを持って紙ドラゴンの様子を見守るサクラ・フォースターの姿。バイクを飛び降りたヴェルチェ・クライウォルフは【鬼眼】を使用。
「そのページ、頂戴♪」
「え……」
「いいから、貸すのよ!」
【鬼眼】を強めると、サクラ・フォスターは縮みあがってページを差し出した。
「クリスティちゃん、次、行くわよ♪」
 ヴェルチェ・クライウォルフは奪い取るようにページを受け取って、バイクを走らせた。
「大事な魔法書なんだから、待ちなさーい! エリザベート校長に1片100Gで買い取らせる予定なんだからねぇ」
 あーる華野筐子が爆発で散り散りになったページを集めていると、立ちこめた煙が引いていった。

「随分景気よくやったが……やったか?」
 橘ヘーゲルの疑問は全員の疑問だった。と、煙の中に翼をもがれた紙ドラゴンが伏せていた。視線に気付き尾を鞭のように振るう。あちこち広がっていた火種が一瞬で消えた。
「降伏するなら今のうちですよ」
 尾を避け小型飛空挺から飛び降りた六本木優希が【バーストダッシュ】で突撃、武器を突き刺して囁いた。途端に翼で払われる。
「優希様!」
 ミラベル・オブライエンが受け止めた。
 と、紙ドラゴンに影が近づいてきた。
「天良高志、ただいま参上っ! この事件、僕も巻き込ませて貰うよ」
 走ってやってきた天良 高志(てんら・たかし)が起き上がろうとする紙ドラゴンにアサルトカービンを向け、放つ。
「今が機……ですか! 参る!」
 それを追ってオウガ・クローディスが紙ドラゴンへと剣を振り上げる。
「! 紙と思っていたが、なかなか硬い……」
 真っ二つにしようと振り下ろす刃はなかなか下りない。と、紙ドラゴンの爪が迫る。
「オウガ!」
 ラルク・クローディスがすかさず射撃。紙ドラゴンの気を逸らす。
「今だ!」
 天良高志が駆けだし滑り込むように紙ドラゴンの前方へ回る。眼やはがれかかったページを重点的に射抜く。ドラゴンの叫び声が周囲に響いていく。
 と、小型飛空挺が一機空から降りてきた。
「ルカルカ、早く乗るのじゃ!」
「交代だ、ルカルカ」
「うん!」
 エース・ラグランツにハイタッチしてルカルカ・ルーがセシリア・ファフレータの運転する小型飛空挺に乗り込んだ。
「イルミンスールの校長が懲らしめてよしって許可出してるんだ。おいたをする悪いページにお灸を据えてやれよ、ルカルカ」
 エース・ラグランツの言葉に頷いたルカルカ・ルー。そのまま小型飛空挺は急上昇。紙ドラゴンの頭上へ。そこには先客がいた。
「いらっしゃいルカルカ!」
「やりましょう!」
 クマラ カールッティケーヤとファルチェ・レクレラージュに頷き、ルカルカ・ルーは【ドラゴンアーツ】【ヒロイックアサルト】「疾風」【轟雷閃】を足に纏わせる。セシリア・ファフレータはそれを強化するため【雷術】をルカルカ・ルーの足へ放つ。ファルチェ・レクレラージュは自身で【雷轟閃】を足に纏わせた。
「私達【ドラゴンスレイヤー】の真骨頂を見せてやるのじゃ!」
「大丈夫。敵は結局折り紙のようなものだから。最終兵器ルカルカ、がんばれ〜」
 二人の声援に頷き、ルカルカ・ルーとファルチェ・レクレラージュが高度を上げた小型飛空挺から飛び降りる。紙ドラゴンの頭へ、二人の足が繰り出される。
「私はセシリア様の剣にして脚。……参ります!」
「くらえ必殺、ダブル稲妻キーック!」
 轟音。天良高志達が力をくわえていた部分も真っ二つに割れた。同時にファルチェ・レクレラージュを抱えて着地したルカルカ・ルーは光条兵器を紙ドラゴンにつき立てた。
「さ、学校に帰ろうね」
 にっと笑うルカルカ・ルー。紙ドラゴンを囲み、安堵する一同……と。
「そこまでですぅ〜! ページさん達、戻りなさぁい!」
 のんびりした声が、荒野に響き渡った。