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リアクション
○12月23日
吹雪がまた舞いはじめました。でも強行下山の命令が出ました。各自、自力で下山せよ、とのことです。自信ないけど、頑張ります。
―――――――――
その日の朝、再び荒れ始めた天候を顧みず、中隊は下山を強行することにした。これ以上の食料も燃料も余裕はなかったし、このまま真東へまっすぐ下れば安全な地点まで下山できるはずだったからだ。
隊の機動性を高めるため、傷病者を中心としたベテラングループの中央部隊以外は各個で班をつくり下山する事も決定された。
こうして、最後の脱出作戦がはじまった。
雪山で顔をあわせ、時には協力し、時にはいがみ合ったそれぞれの面々が、今、一点を目指して雪原を下っている。一歩下るごとに増す希望を信じて。失った仲間の分の思いを込めて。
そのときだった。
頂の方から押し寄せてくる巨大な雪崩が迫ってきたのは。
地鳴りのような轟音と共に雪崩は押し寄せ、今にも中隊全体を飲み込まんとしていた。
「いくぜっセシリアっ!」
「承知っレイっ。奔るのじゃっ! がおーっ!」
雪崩と平行に走る騎狼と、それにまたがるふたりの少年少女。騎狼は加速し、雪崩を追い越し、その手前に回り込む。ふたりの名はレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)とセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)。
「燃え上がれッ!爆炎破ッ!」
ふたりは雪崩ではなく真下の雪原に爆炎破を放ち、溝をつくった。そのまま弧を描きながら、雪崩の方角を誘導してやる。雪崩の大半は直撃コースから外れ、レイディスたちのつくった方角へと流れ去ってゆく。中隊全員から喝采が上がった。
その後、統制不足で半数以上の犠牲を出したB中隊に対し、A中隊は主力を含むほとんどが無事下山できたのだった。
だが、下山したばかりの主幹本隊では、ちょっとしたトラブルが起こっていた。
「どこへ行くんです? メルヴィン少尉」
呼び止めたのは高村 真一郎だった。
「きまっているだろう。まだ帰還していない者がいる」
「いい加減にしてください。あなたは軍人として甘すぎるっ!」
「軍人? そんなことはどうだっていい。オレは女子供はほっておけな……」
バシッ。っと、メルヴィン少尉の頬に真一郎の鉄拳が飛ぶ。
「あなたはっ。あなたは自分が何でもできると思っているっ」
真一郎は「まるで父のように」と心に言いかけた。
「いいパンチだ。貴官と出会えてオレは嬉しく思う」
メルヴィン少尉はそう言って敬礼すると、たったひとり山へと消えていった。
―――――――――
みんなとはぐれちゃった。このまましんじゃうのかな。しんじゃったらお母さんに会えるかな。神様がいて、お母さんがいて、あったかくて、しあわせで、ずっとずっといっしょにいられるかな。がー君もいるよね。だったら安心だよね。
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