蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

少年達の聖なる書物

リアクション公開中!

少年達の聖なる書物
少年達の聖なる書物 少年達の聖なる書物

リアクション


第一章 ばら撒かれる聖なる書物
「今回、我々は一つの事実を再認識した。それは涼司の本体が眼鏡ではなかったってことだ!」
 支倉 遥(はせくら・はるか)がこの世の終わりでも来たかのような表情でそう告げる。
「そ、そんな! 涼司の眼鏡が本体じゃないなんて!!」
 御厨 縁(みくりや・えにし)がわざとらしく驚愕する。
「我々にとって大変受け入れがたいことであるが、どうやら大変遺憾なことに真実か否か疑わしい点もあるが、本人曰く事実のようであるのでこの件はこれで終わりとしたい」
「いや、待て。実は眼鏡が体を遠隔操作しており眼鏡を叩き壊せば身体の方も死ぬんじゃ……反証が必要じゃな」
 縁がそういうが、遥はわからないと首を振る。
「ん? 待て。とすると体のほうが死ぬと本体はどうなるんじゃ?」
「さてな。だが、真実が明らかにされるその日まで、我々は引き続き”涼司眼鏡本体説”を提唱していきたい!」
 遥がそう言うと、二人は手を取り合い誓い合った。
 そして遥は聞き込み調査を開始し、縁は涼司薔薇説の陰謀を流布するため、主のいない机に接近し、鞄にハードな薔薇の本を隠す。それから遥と一?に聞き込み調査を始めた。
 椿 薫(つばき・かおる)はトラップ職人として蒼空学園中に罠を仕掛けた。それが更なる悲劇を生むとも知らずに――
「ふっふっふ、偽物を大量に作成し、学園中に隠すでござる」
 薫は個人所有の聖典の落しどころを各学園人気人物の写真(元学園前眼鏡、教団の団長、薔薇の校長、王など)にコラージュし、わざと発見されやすいように隠した。そして自分が隠したことを悟られないようにするため、自らも聖典探しに参加した。
「ねえ、そこの君たち、聖典を見つけたんだけど、一緒に見ない♪」
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が聖典探しに血眼になっている生徒たちに声をかける。
「それは本当なの〜? 後で返すから少しの間バイブル貸してっ♪ んふふ〜貸さないなら火術で本燃やしちゃうぞ〜♪」
 それを聞いてクラーク 波音(くらーく・はのん)が翡翠に声をかける。
「あ、あは……やだなぁ。そんなことしなくても見せてあげるよ♪」
 翡翠が可愛い仕草で波音に答える。翡翠は今女装しているので可愛くぶりっ子していた。思えばあれはサファイア・クレージュ(さふぁいあ・くれーじゅ)
に学生服を借りに行ったときだった。
「ねえ、サファイア、学生服貸してください」
「ん? 何するの?」
「よくわからないけど友達が男子生徒を集めて何かするみたいなんです。男子生徒を集めるなら女装でもしたほうがいいかなと思いまして……」
 それならば、とサファイアは翡翠に自らの経験から男を篭絡する方法を伝授することとなった。
「いい? 男なんて単純なもので、ちょっと可愛い仕草をすればコロッと騙されるのよ」
「可愛い仕草……ですか?」
「そう、例えば上目遣いとかね」
「なるほど……」
「あとは最悪色気で騙す方法もあるわね」
「ああ、貴女に一番足りないもので……」
 ゴス!
 ボディーに拳がめり込む音がした。
「何か言った?」
「……いえ、何も」
 と、そんなやり取りがあって翡翠は波音すら騙して女の子として押し通し、事前に借りていた視聴覚室へと罠にかかった哀れな獲物たちをおびき出す。それはさながら女郎蜘蛛。
「波音先輩、私もご一緒してよろしいですか?」
 そう尋ねたのは魔法学校の使いで蒼空学園にくることになった波音、学校見学の為ついてきた。宇佐木 みらび(うさぎ・みらび)だった。
「いいよ〜」
 波音がそう答えたのでみらびも同席することとなった。そして――
「薔薇学から参りました明智 珠輝(あけち・たまき)です。たぎる若人……ふ、ふふ。なんというエロスな香り……!」
「俺は五条 武(ごじょう・たける)だ。よろしくな、若人。ここに丁度パラ実の裏ルートで手に入れたレアものの(ピー)がある。これからここで鑑賞会だぁ」
『ヒャッハァー!』
 性少年と一部の性少女は小躍りしたとかしなかったとか。
「いいか君達、世の中には上がある。目の前の小さなことに気を取られずに、更に大きく、更に高みを目指せ! HでEROな奴はHEROだ! 英雄だ!」
『イェアー!』
「ちょっとそこのあなた、わたくしにもバイブルを見せてくださいませんか?」
 佐倉 留美(さくら・るみ)がたわわな胸を揺らしながら視聴覚室におびき出されている生徒に頼み込む。
「あ、これから視聴覚室で……」
 鑑賞会があるという。鼻の下を伸ばしながら男子生徒は留美を案内した。
「女性がたくさん載ってる本だと!? これは見逃すことは出来ない! 男のロマンということで、俺も仲間に入れてもらおう」
 久途 侘助(くず・わびすけ)が大声を張り上げながら視聴覚室に入ってくる。
「歓迎するぜ性少年。今からお前も仲間だ、フレンズだ」
 武が侘助を歓迎すると二人はがっしりと抱き合った。
「ふふふ……イイ! これこそエロス」
 珠輝が何か言っているが気にするものは誰もいない。
 そうして『環菜』ではなく『聖なる書物』のほうに興味を惹かれる生徒たちはこうしてごっそり視聴覚室に連れ去られたのである。
山葉 涼司(やまは・りょうじ)は御神楽環菜の幼馴染だったな。これを機会にヤツを抱き込めば……騒ぎの元は切り貼りコラ? そ、そんな幼稚なもので騒いでいたのか!?」
 湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)はそのレベルの低さに驚き、ならば! ということで奮起する。
「僕が真のアイコラというものを教えてやる!」
 そして凶司はコンピューター技術を駆使して環菜の写真でアイコラを作り始める。
「できた、これが究極のアイコラだ! ルミーナや、ディミーアたちLCとの絡み絵もあるぞ!」
 そしてプリントしたアイコラを大量に抱えて屋上へと走る。
「アイコラというのは……こうやるものだっ!」
 そして屋上からばら撒く。
「つくづく最低なのね、あなたって」
 ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)がパートナーの馬鹿な行動にあきれて、事情を環菜に報告するべく決意する。
「…………カンナ様よんでくるわ」
 そして校長室に行くと凶司、山葉 涼司と悪友、その他連中の所業をあらいざらい全て報告する。
「ディミーアです。バカなパートナーが涼司たちと、またバカな事をはじめたみたいです」
「わかったわ。報告ありがとう。その邪悪な聖典はひとつ残らず私のところに持ってきなさい。私がこの手で処分します」
 静かに怒気を漲らせながらそう告げる御神楽 環菜(みかぐら・かんな)。ディミーアはその迫力に二つ返事で頷いた。

 武の作品の鑑賞会が終わると、生徒たちは歓声を上げた。
 一部にはみらびのように「不潔ですー」と泣いている生徒もいたが。
「たかがこれくらいで……」
 とみらびのパートナーのセイ・グランドル(せい・ぐらんどる)が突っ込むと、みらびは「不潔!」と白い目でセイを見る。
「なっ! 不潔ってなんだよ!」
 そういってセイは顔を真っ赤にする。
「なぁなぁ、どの娘が良かった? ちなみに俺はこの気の強そうなコかな」
 スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)は周りの生徒と好みの女性を語り合う。
「あ、僕はやっぱりみらびが良いです」
「セイ君……」
 二人の世界が出来上がっていた。

「目に見える聖書は数あれど、己の好みの聖書は貴方達の心の中にあるのです。人に与えられるだけではまだまだです。己の聖書を作り上げるのです……! そのためには広い視野を持つことも大事。さぁ、第二部。魅惑のバラーショーです」
 珠輝は持参した薔薇学の濃い男同士イチャつきビデオを上映し始める。
「汚いものを見せるんじゃねえ!」
 珠輝は男子生徒にたこ殴りにされました。
「ああ! ヒィ! イイッ! すごーくイイ!」
 かえって喜ばせるだけだったが。

「あーん。涼司さんのばかあーっ!」
 花音・アームルート(かのん・あーむるーと)はいまだに拗ねていた。
「花音、本は……あれだよ。ちょっとした男のロマンだよ」
 愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)は本を探すのは恐れ知らずの勇者たちに任せて、自分は花音を慰めようとしていた。
「うう……でも、でも……」
「……そうだ、花音のせくしぃな写真とかプレゼントしてみたら? 眼鏡君、本の代わりに大切にしてくれるかもしれないよ!」
「写真?」
「そう、写真だ。花音の写真だよ」
 ミサがそう言うと、「そうだな花音メイド写真集を作るんだ!」と声がした。
 それは武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)だった。
「あなた、だれ?」
 花音の興味が牙竜に向く。
「おれか? 俺は武神 牙竜。ケンリュウガー。ただの正義の味方だ!」
「ええええええええええええ!」
 花音が驚いた。ケンリューガーは知っているがまさかこの人物がそうだったとは。
「花音の写真で涼司を振り向かせてやれば万事オッケーだぜ、写真には写真! 真っ向勝負で打ち破らない限り完全勝利は無いぜヒャッハァー」
 南 鮪(みなみ・まぐろ)が同意するかのように現れてカメラを片手に花音に向けてシャッターを切る。
「ちょっと、何するのよ!」
 勝手に写真を取られたことに抗議する花音。
「まあ、少し落ち着きましょう? このお茶リラックスする効果がありますから、飲んでください」
 クロス・クロノス(くろす・くろのす)が気分を落ち着かせる効能のあるカミツレで作られた、カモミールティーが入った水筒を取り出てカップにそそぎ花音に差し出す。
「あ、ありがとう……」
 おずおずと手を差し出しカップを受け取る花音。
「はう……おいしい」
「そうですか。それは良かった」
 クロスが少々安堵してそう言い、言葉を続けた。
「写真集を盗んだのはメガ……じゃなくて山葉さんではなくて、別の人間です。彼は被害者ですよ。泥棒は許せませんけど、山葉さんも男性ですから写真集を見るくらいは許してあげないと。でないと毎日怒らなくてはいけなくなってしまいますよ、花音さん」
「盗む? なにそれ? あたしが怒っているのは涼司さんが環菜さんの写真でエッチなことをしていたからです。あーん。涼司さんの浮気者ー!」
 また怒り始める花音にクロスは慌ててなだめだす。
「ですから、その写真を悪用したのは山葉さんじゃなくて山葉さんのお友達です。山葉さんはただ環菜さんと幼馴染であることを証明するために写真を見せただけなのですよ」
「そう……なの?」
「ええ。そうです。あなたが山葉さんを信じてあげなくてどうするんですか? パートナーの貴女が」
「うう……うん」
「山葉ももしかしたら写真集を見ていたのかもしれんがやつとて健全な男子だ。それくらいは許してやれ……というかそういう仲だったのか?」
「えっ? あっ、そ、そんなんじゃ……」
 少しずれたことを言う橘 恭司(たちばな・きょうじ)に花音が赤くなりながら否定する。
「あたし、涼司さんを探さないと……」
 花音が決意を秘めた表情でそう言うと恭司が慌てて止める。
「まあ、まてまて。やつは今頃カンナ様の怒りに触れないために必死になっているはずだ。少し放置しておいたほうが良い」
「そうそう、花音メイド写真集を撮って山葉に見せ付けてやろうぜ」
 牙竜がそう言って花音を慰めるべくやってきていた女生徒たちに手伝いを依頼する。そうして、やや強引にメイド写真集の作成が始まった。