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春休みを守れ!御上先生救出作戦!

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第四章 突撃!
 それにしても、真菜華の進撃速度はすさまじかった。後ろから追いかけていったにもかかわらず、仲間の元に逃げ込むゴブリンたちとほとんど同じタイミングで敵陣に突入したのである。
「じゃっじゃーん!すーぱーひろいん☆マナカ参上っ!オラオラオラっ!死にたくなかったら、さっさと御上先生を出しなさーい!!」
 てっきり味方が来たと思っていた所に、突然敵がこんな事を叫びながら飛び込んで来たのだからたまらない。たちまちゴブリンたちは大混乱に陥った。
 しかし、そこは多勢に無勢。初めのうちこそ真菜華に良い様に蹂躙されていたゴブリンたちだったが、敵が1人だと知って気を取り直すと、真菜華を完全に包囲してしまった。
「さ、さすがのマナカさんも、これはちょっとピンチかも……?」
 ふと我に返って周りの状況に気づき、冷や汗を垂らす真菜華。
「春夏秋冬っ、無事かっ!」
 聞き覚えのある声と共に、黒い影が飛び込んで来たかと思うと、2匹のゴブリンに風穴が開く。
 そこには、両の手を朱に染めたエヴァルトが立っていた。飛び込み様、両手の改造手甲でゴブリンを串刺しにしたのである。
「おぉ、すごい!カッコいー!!」
 自分の置かれた状況を忘れ、手を叩いて歓声を上げる真菜華。すっかり観客気分である。
「喜んでないでお前も手伝えっ!!」
 普段は紳士的なエヴァルトも、この時ばかりは容赦しなかった。



 そのころ、真菜華たちからそう遠くない場所で、天城とユリウスが、別のゴブリンたちと激しい戦いを繰り広げていた。突出した真菜華とエヴァルトに敵が集中しないよう、彼らも敵陣に突撃したのである。
 と言っても、元々新しくパートナーになったユリウスに経験を積ませる事が目的だったから、戦闘は望むところである。
「はっはっは、どうしたどうした!そんなことでは、我に傷一つ付ける事はできぬぞ!!」
 木が邪魔になって取り回しづらいであろうロングスピアを巧みに操って、次々と敵を屠って行くユリウス。
「やっぱりおまえは、戦ってるときが一番輝いてるな……って、オレもそうか」
 物陰から突然躍り出てきたゴブリンを至近距離で撃ち殺しながら、自嘲めいた笑みを浮かべる一輝。まだまだ、戦いはこれからだ。



 2組の前衛から少し離れた窪地では、レイスが、遮蔽を取りながら前線の戦いぶりを見つめていた。今回の志願者で唯一のプリーストであるレイスは、いつでも治療に駆けつけられるよう、前衛から少し遅れて追随しているのだ。神楽坂はその護衛という位置づけである。
「おいおい、数多くねぇか、これ?誰も怪我しなければいいな〜」
 半ば他人事のように、レイスがいう。
「おいコラ、レイス!少しは頭下げろって!お前がそうしてるから、敵が気づいてバンバン攻撃してくるんだぞ!!」
 一方神楽坂はと言えば、敵を少しでも近づけまいと、ショットガン片手に必死の防戦を続けている。
「翡翠、やっぱり昼間は不幸だな。次から夜の仕事だけにしたほうがいいんじゃないか?」
「だから頭下げろって!!」
 力ずくでレイスの頭を押さえ込む神楽坂。さっきまでレイスの頭のあった所は、深々と矢が刺さっている。
『ホントに夜だけにしようかな……』
 本気で考える神楽坂だった。



 一方そのころ相沢は、ギャング映画もかくやという勢いで、愛用のトミーガンを撃ちまくっていた。
 こうして目立つことによって敵の注意を自分に引き付けると共に、弾幕を張って敵の行動を制限することが、相沢の狙いだった。ゴブリンが数匹、ドラムマガジンの交換の隙を突いて突撃してきたが、慣れた手つきで作業を終えた相沢の一薙ぎで、あっという間にハチの巣になる。
 『火力増強のために』と、みとが使っておいたギャザリングヘクスが効いているようだ。
 マシンガンの火力の前に近接戦闘は無理だと悟ったのだろう。ゴブリンたちは今度は、物陰に隠れて弓による攻撃を仕掛けて来た。だがそれも相沢の想定の範囲内だ。
「いいぞ、みと。敵の足が止まった!氷術で敵の火点をつぶせ!火術と雷術は周辺への被害が大きい可能性があるので厳禁とする。いいな!」
「了解です。新調したハーフムーンロッドの威力、とくと思い知りなさい!」
ロッドを高くかざし、矢継ぎ早に呪文を詠唱するみと。ゴブリンたちは、氷術による狙撃を受け、次々と物言わぬ氷のオブジェと化していく。まさに百発百中の勢いだった。



「次、2時の方向、仰角6度。岩の影に6体です」
「真菜華さんとエヴァルトさんがてこずってるみたいです。支援をお願いします」
 巧みに物陰に隠れながら、キルティスは、敵の正確な位置と数を報告していた。みとの狙撃の驚異的な命中率は、彼女の的確な報告の賜物である。
 前衛と相沢が敵の注意を引き付けているおかげで、こちらに気づく敵は少ない。たまに茂みからバッタリ出てきたゴブリンと遭遇することもあったが、その時にはシャープシューターとスプレーショットを組み合わせた秋日子の射撃が物を言った。
「銃ならちょっとは自信あるんだから!百合園生だからって、甘くみないでよね!!」
「秋日子さん、敵ならもう全滅してますよ。次、行きましょう♪」
 戦いは、順調なようだった。