リアクション
終章 エピローグ
「今日はありがとうございました」
アーケード入り口にある時計台の下、泪はぺこりと頭を下げた。
彼女の長い髪が地に向かって垂れる。
「とても楽しかったです」
「いえ、こちらこそ。貴重な休日につき合わせてしまって」
「そ、そんなことないです。本当に感謝してます」
顔を上げた泪はにこりと微笑んだ。
「最近はテレビのお仕事だけじゃなくて学校の先生までやるようになって、仕事の合間に仕事をしてるような感覚でしたから。あなたのお誘いがなければこのまま干物になってしまうところでした」
「干物って……。泪ちゃんはいくつになっても男たちの憧れですよ」
「ふふ。その憧れを独り占めしたのは誰なんでしょうね」
「あはは。それを言われると困ります」
ふと沈黙が2人を包み込む。
寒いというのに、どちらとも帰宅の意志を見せなかった。
(よし、勇気を出すんですよ、唯斗)
「あ、あの……泪ちゃん」
「……なんでしょう」
泪はやや視線を落とした。寒さのせいか、それとも別のことが原因か、頬が赤くなっている。
「…………」
「…………」
事態は硬直したまま動かない。今日デート作戦に手を貸した面々も生垣から固唾を呑んで結末を見守っている。
「……帰りましょう。明日仕事で早いんじゃないですか?」
口を開いたのは唯斗だった。
「そう……ですね」
その表情はテレビの天気予報で見るような、凛々しいものだった。
「それなら、送っていきます」
「いえ、タクシーに乗ります……」
「そ、そうですか……」
これで終局か、と誰もが思ったそのとき、泪が一歩、唯斗に近づいた。
「これ、私の連絡先です。絶対にメールくださいね」
「……はい!」
2人は恋人になれるかどうか。それは正に神のみぞ知るが、寒い寒い冬の最中、心が温かくなるような出来事だった。
――――終
はじめまして。マリツキと申します。今回ゲームマスターとしてデビューさせていただきました。
みなさま参加ありがとうございました。色々至らない点、稚拙な点などございますが、これからもよろしくおねがいします。
先の連休はとても寒かったですね。みなさま風邪をひかれてはおりませんでしょうか。
新年早々病気に臥すというのは経験上非常に惨めになりますよね(笑)
お体にはお気をつけください。
よいお年を。