First Previous |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
Next Last
リアクション
第四章
1
「地下ホールは文字通り演劇や、パーティの会場に使われていたらしいよ。この地下回廊は、美術品の展示や保管をしてた」
ラズィーヤに屋敷について尋ねられたレッキスが答える。
「そんで、美術品の中には魔法の掛けられた珍品が幾つかあったんだよ。あの額縁みたいな。ボク達はそれで絵画から飛び出して来たってわけ」
「絵画の中に戻る事はできないのか?」
シリウスが尋ねると、少女は首を振った。
「いや、戻ることはできるんだけど、戻る場所がココにないんだよ」
「……見た所、美術品の大半は無くなっちまってるな」
「そ。屋敷の主人はそれなりの貴族だったんだけど、何代か経てくうちに没落しちゃってね。大半の美術品は売られてったよ」
その中に、住んでいた絵画があったんだ――そう言った。
「つまり帰る場所がないのさ。おまけに、ボクらは絵画の物語に縛られる。だから何をしても良い、ってワケじゃないんだ」
「物語?」
「お姫様に飼われた大勢の兎達、ってね。だからボク達はお姫様を探さずにはいられないんだ。屋敷から出られるほど勇気のあるヤツはいないけどね」
そんなことを、カラカラと笑いながら言う。
「でも、この地下回廊にはまだ何枚も絵画と、『飛び出す』額縁が残ってるんだ」
「なんとなく、予想はつくな」
シリウスが答える。
「全体で言えばごく一部だけど、主人の『悪趣味』が表われた絵画の類がソレだ。人目につかないようにって、隠しておいたんだよ。ここが殆ど迷路になってるのもそういう理由」
「なるほど。モンスター達はそこから湧き出てきていた、と」
ラズィーヤが思案顔で呟いた。
「この先の部屋がそうだよ。でもその脇に、モンスター達の知らない場所があるんだ。逃げ込む時は、そこに行くようにしてる。多分ロップイヤーもそこだよ」
秘密の場所だろうに、そこに踏み入っていいのかラズィーヤは僅かに迷った。
それでも、全く気にしない様子のレッキスに従って、壁の下に隠された入口から個室に入って行く。
びくり、と。部屋の奥の影が動いた。
「大丈夫だよ。魔物じゃない。それにこの人達はボクを助けてくれたし――」
キミに会いたがってる。
「最初にキミ達の仲間がボクらの部屋を覗いた時、早とちりなヤツは魔物が襲って来たのかと思ったんだよ。実際に、何匹か混ざってたワケだしさ」
ロップイヤーの様子を窺いながら、レッキスが付け加えた。
ラズィーヤが静かに部屋の奥へと進んで行く。
そしてあの『垂れ耳』を確認すると、にっこりと微笑んだ。
「もう大丈夫ですわ。あなたたちは、わたくしが守りますから」
First Previous |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
Next Last