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新年祝祭舞踏会~それより私と踊りませんか?

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新年祝祭舞踏会~それより私と踊りませんか?

リアクション

 2

 オーフェ・マノリア(おーふぇ・まのりあ)がくるりと回る。ウエストのリボンがふわりと遅れてついてきた。
 ワルツは――円舞曲と呼ぶくらいだから、回っていればそれっぽくなるのかもしれない。
 エンデ・マノリア(えんで・まのりあ)は、オーフェの背中を引き寄せながらそんなことを思っていた。
 奮発して用意したドレスはお揃いだったから、オーフェの紺色のスカートがひらりと舞えば、自分の緋色のスカートもひらりと翻る。
 エンデがオーフェの笑顔を見つめる。ぎこちないかもしれないけれど――楽しいな、と。
 曲間になると、二人は秋月 葵(あきづき・あおい)の元に小走りで駆け寄った。
「良いじゃない」
 オーフェとエンデにステップを指導していた葵が満面の笑みで言った。
「パートナーを信頼できているからね、きっと」
「えへへ」
「ちゃんとリードできてたかな?」
 エンデがオーフェの手を取ったまま、照れ笑いで葵に尋ねる。
「大丈夫よ。時間があればあたしも一曲お願いしたいくらい」
 青いパーティドレスのスカートを摘まんで無邪気に言う。
「エンデと葵、踊る?」
「ふふ、良いの?」
 葵は答えながら、ふと地下通路へ続く観客席の方の喧騒に気を引かれた。
 すぐに曲が始まり、騒ぎは遠くなってしまったが――あちらで何かあったようだ。
「でもゴメンね。ちょっと何かあったみたいだから」
 楽しんでってね――二人に言い残すと、葵は騒ぎのあった観客席の方へ向かって行った。
「それじゃどうしよっか、オーフェ」
「エンデ、おやつ……!」
「おやつ?」
 オーフェのきらきらした目が捉える方を覗き込む。
「あ、立食パーティの方? 行ってみる?」
「うん!」
 オーフェに手を引かれ、料理の並ぶテーブルを見て回る。
 色とりどりのデザートを目にしては、オーフェは瞳を輝かせてどれにしようかと悩んでいた。
 その脇でイナ・インバース(いな・いんばーす)がマカロンの盛られた籠をテーブルに配膳すると、パートナーのティナ・バランフォード(てぃな・ばらんふぉーど)と顔を見合わせた。
「事件です」
 ティナが短く言った。
「急ぎましょう」
 と、イナが答える。
 二人は葵の向かったのと同様、地下に通じる観客席側の喧騒に駆けて行った。
「エンデ、これ食べよ」
 オーフェがマカロンの籠を指差す。
「良いね。それじゃ僕はこの青色の」
「私、赤色!」
 微笑み合って、お互いのドレスの色をしたマカロンに手を伸ばした。

 地下通路へ伸びた階段の手前。
 そこから飛び出してきた獣人族の子供たちに、居合わせた皆が唖然としていた。
 彼女たちと一緒に表われた蜘蛛や蛇のモンスターを、警備として駆け付けたイナとティナが迎え撃つ。
 イナが諸葛弩によって矢継ぎ早に放った矢がモンスターだけを正確に射抜く。
 身悶えた蜘蛛はあっ、と言う間に消失してしまい、蛇は打ち抜かれたまま立ちどころに蒸発するように消えてしまった。 
「――何があったの」
 地下への通路の様子を窺いながら、葵がイナに尋ねる。
「どうやら、見つかったみたいなのです」
「見つかった、って……獣人族の子たち、の事よね」
「はい。一緒に表われたモンスターのみ、撃退しました」
「そ、そう……それにしたって、あんまりに多すぎない?」
 葵が振り向きながら言う。
 兎耳の獣人少女たちは走り出した勢いのまま――パーティの喧騒に吸い込まれて行った。
「ラズィーヤさんが見かけたのは、確か一匹だったはずじゃ――」
 口を開いた葵の身体に、何かがぶつかってきた。
 葵の腕の中にすっぽりとおさまってしまったそれは、
「も、もふもふ……」
 ウサギ耳の少女だった。
 ラズィーヤと桜井 静香(さくらい・しずか)が騒ぎを聞きつけて葵の元に駆けつけた頃には、獣人族の少女の大群は、パーティ会場のあちこちに紛れ込んでしまっていた。