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パニック! 雪人形祭り

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第四章 向こう側の真実

 雪像は展示場である雪野原の、中央よりもやや街の入り口寄りのところに、ほとんど立ち往生していた。脚部を損傷させてその上から過剰に雪を付着させ、動きを鈍らせるという、対雪像戦闘を担った人々の思惑が当たりつつあった。まだ動こうという気配は見せるものの、重すぎる雪塊になってしまった足はなかなか持ち上がらない。
「あと一歩やな!」
 召喚獣たちを巧みに操り、雪像に雪を纏わせていく奏輝 優奈(かなて・ゆうな)は、順調に動けなくなっていく雪像の姿に満足げに頷いた。そして、自らもブリザードで雪像の足元の雪を肥え太らせていく。優奈の指示で動く氷兎やウェンディゴたちは巧みに、雪像の動きの範囲を逃れながらその巨体を取り囲み、雪を吹きつける。
「下半身だけならもう、大方だるまという体型じゃの」
 やはりブリザードで雪像を太らせていく衛も、目的が達成されつつある手応えににまりと笑いつつも、続けて小さくぼやいた。
「とはいえ、こちらもうるさくなってきたのう。早くメイスンが戻ってこないものか」
 ピンチとみてか、雪像の援護射撃(雪玉で)をする雪人形たちが湧くように展示場に増えつつあった。衛は飛びかかってきた小さな一体を、ブリザードで吹き飛ばしてびたん、と雪像にぶつけてくっつけてやった。これらの雪人形は、先程までならライトセーバーでメイスンが片っ端からぶったぎって雪片に変えていっていたのだが、『妖蛆の秘密』からの連絡を受け、街の人間に呪術師の訃報を知らせるよう衛に言われ、一時的に離脱してスノーモービルを走らせていっていた。
 突然、雪野原全体が震えるような、大きな地響きが走った。
「!!!」
 それまで静かに後方で佇んでいた、他の雪像たちが動き出したのだ。数は六体、どれも巨大雪像よりは一回りから二回りほど小さいが、ある者は攻撃者に対して大きな雪塊を投げつけ、ある者は助けようというのか巨大雪像の方に向かおうとしている。展示場の騒がしさは一気に増した。
「あやつらまで動き出すとは……」
「! ……上等や! 全部ひとまとめにしてだるまにしてやる!」
 衛と優奈は驚きながらも、新たな戦意を燃やして構える。

「落ち着いてください、皆さん……あの雪像たちの注意は、私が引きつけましょう」
 美和はそう言うや、『プロボーク』で後方の雪像たちを挑発し始めた。

「!! こりゃまた大騒ぎになってきたな」
 雪像を太らせる段階に入って銃撃を控えるよう言われ、遠距離から様子見に徹していたサミュエルとディーンは、この事態を目にするや背を正し、再び戦闘態勢に入った。巨大雪像の周りにいる人間を巻き込まない位置から他の雪像を銃撃するべく、相応しい場所を探して走り出した。
 時同じくして、
「ルノー、ここから手前の雪像を越えて、後ろの奴らを砲撃できるか?」
「ん〜この位置からじゃ無理ですぅ〜」
「なら、動くぞ!」
「はいですぅ!」
 ジャンヌとルノーも、同じ目的で戦場を移動し始めた。