空京

校長室

開催、空京万博!

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リアクション


■たいむちゃんの秘密

「たいむちゃんタワーはうごいたりなんだかどこかに行きたいみたいです。
どうして、どこにいきたいんですか〜」

ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、
セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)とともに、謎の声の主を探して歩いていた。

ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)
セス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)も、
アイリの銃型HCでマッピングしながら、セスのダウジングで、展示品を探していた。

(異国から来た展示品が故郷に帰りたいと
騒ぎを起こしていたという昔話を聞いたことがある。

もしそんな事情なら万博の後にちゃんと
元の場所に帰してやるって安心させてやりたい)

アイリは、そう考えていた。

「あれっ、もしかして……」

「たいむちゃん、ですか?」

屋上に空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)がいるのを、
アイリとヴァーナーが発見した。

「これは……」

セツカが、目を細める。

召喚者の知識でわかったことだが、
たいむちゃんは、普通のゆる族と、どこか違う雰囲気がある。

(まるで、以前お会いした、ポータラカ人の方のような……)

普通のパラミタの民とは、どこか違う雰囲気。
それを、セツカは感じた。

■□■

その頃、屋上にまで到達した二機のイコンがあった。


桐生 円(きりゅう・まどか)オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)
ゲイルバレットと、
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)
スパルトイである。

「ボクの考えが正しければ
秘宝を集めてるのはたいむちゃん? 帰るために?」

円が、独りごちる。

そうしていると、屋上にゆる族怪人が現れて、
契約者たちをロケット弾で攻撃しはじめる。

「か弱い乙女はイコンの操縦もか弱いものですので、
このような場合、困ってしまうのですけど……」

コロージョン・グレネードや
ミサイル、バルカンを発射しながらロザリンドが言う。

「百合園生は戦闘とか本当に苦手ですわ」

「ぎゃー」

「わああああ」

「すっごく攻撃してるよー」

メリッサが突っ込む。

その戦いのさなか、たいむちゃんに迫る影があった。

聖・レッドヘリング(ひじり・れっどへりんぐ)を伴った
キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)である。

「犯人は、空京たいむちゃんですぅ!
名探偵キャンティちゃんの目は誤魔化せませんわ〜おーほっほっほっほっほ!」

キャンティは、同じゆる族として、
時の人であるたいむちゃんをライバル視していたのだった。

「偽物のゆる族を探し出すなんて、本物のゆる族の勘をもってすれば簡単なことですぅ。
この恨みはらさでおくべきか〜!!」

「当たらないよ」

キャンティのとどめの一撃を、たいむちゃんは高速で回避する。

「もし、故郷に帰るためなら協力するよ!」

ゲイルバレット円の呼びかけに、
たいむちゃんはかぶりを振る。

「幻の展示品のことでは迷惑をかけたけど、協力はいらないわ。

これ以上傷つける人を増やしたくない。
……恐竜騎士団の時みたいな」

たいむちゃんの着ぐるみの瞳が、冷たく光る。

「え? 恐竜騎士団って?」

円が疑問を投げかけようとした時、

トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)
ジョウ・パプリチェンコ(じょう・ぱぷりちぇんこ)が現れた。

「女の子をよってたかっていじめるのはいただけねえな!
俺は、たいむちゃん、あんたに味方するぜ」

「しょうがないなあ、つきあってあげるよ」

トライブが、たいむちゃんをかばって立ち、
ジョウもそれに並ぶ。

「ギャハハハハハハハハハハハハ!
たいむちゃん、俺様に、時を渡る方法を教えろ!」

そこへ、

ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)シメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)が、
アヴァロンに乗って現れた。

「時が渡れれば、東京湾の歴史も変えられる!
俺様が勝者の歴史を作るんだ!」

「ロザリン、あいつ、ヤバいよ!」

「そんなことさせません!」

円とロザリンドが、アヴァロンにミサイルを放つ。

「俺様の邪魔するんじゃねえよ!」

ゲドーは、ヴリトラ砲を撃って応戦する。

しかし、2対1では、やがて追い詰められる。
アヴァロンは段々と傷だらけになる。

「くっ、覚えていやがれ!
お家かえるううううううううう!」

ゲドーは高速で逃げ去った。

「たいむちゃん! 
何が目的か分かりませんが、これ以上の混乱は必要ないと思います!」

アシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)ゆるやか 戦車(ゆるやか・せんしゃ)と共に、
アシュレイロボで現れる。

前原 拓海(まえばら・たくみ)
フィオナ・ストークス(ふぃおな・すとーくす)
クェイルも、アシュレイとともに行動していた。

「これ以上の抵抗はやめて投降するんだ!」

拓海も、たいむちゃんや、ゆる族怪人たちに呼びかける。

「……ううっ」

たいむちゃんは苦悶の表情を浮かべていた。

「次から次へとイコンで来やがって! くらえ!」

パイロキネシスで、トライブが拓海のクェイルを攻撃する。

「前原さんをやらせません!」

アシュレイロボが間に割り込んで
トライブの攻撃を受け、機体が炎に包まれる。

「大丈夫か、アシュレイ!」

「イコンですから、平気です!
……それと、“アシュレイ”って呼んで下さいましたか?」

「あ、ああ。呼んだかも知れない……すまん」

「いいえ、嬉しいんです」

アシュレイは前原からいつも名字で呼ばれていたのだ。
二人は戦闘中にも関わらず顔を赤らめていた。

■□■

たいむちゃんはトライブたちに守られつつも、
追いつめられていた。

「どうしてなの、たいむちゃん!

『盛り上がる』のと『騒ぎが起きる』のは違うんじゃない?
タワーの暴走を治めた時に言ってた『もう少し』って、何の事なの?」

「もうやめて!
みんな、平和に万博を楽しみたいだけなの!」

館下 鈴蘭(たてした・すずらん)霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)とともに、
ネレイドから声をかけていた。

「私だって、平和に暮らしていたかった……それなのに」

鈴蘭の説得に、
たいむちゃんが目を伏せる。

「え、どういうことですか〜?」

キャンティが驚いて尋ねる。

「私は、向こうから来たの……ニルヴァーナから」

天を指さして、たいむちゃんは言った。

『ニ、ニルヴァーナ?』

その言葉に一瞬、場は静まり返る。

「パラミタに漂着した私は、
ティル・ナ・ノーグの『クン・チャン』で暮らしてたわ」

「……たいむちゃん」

アイリが、息を飲んでつぶやいた。

「10年前。

エリュシオン帝国は私を捕えてニルヴァーナの情報を得ようとしたわ。
クン・チャンに恐竜騎士団を派兵して。

そして、クン・チャンは炎に包まれたの」

たいむちゃんの言葉に、この場の時が止まったようになる。

「……余所者の私を受け入れたせいで。
クン・チャンの皆が、犠牲になった」

たいむちゃんの顔が、着ぐるみでもはっきりと、悲しみに曇るのがわかる。

「命がけで逃がしてくれて、
今も協力してくれるクン・チャンの皆のためにも」

たいむちゃんが、うつむいていた顔を上げる。

「私は、ニルヴァーナに戻る。

滅びかけてた自分の故郷が、
そこに住んでた皆が、どうなったかを確かめたいの。

みんなを騙していてごめんなさい。
エリュシオンに気がつかれたくなかったから」

たいむちゃんは円に向き合って言葉を返す。

「たいむちゃん!」

一同の声が重なる。

たいむちゃんは、不思議な光を放つ、ニルヴァーナの石を取り出した。

「このタワーはロケットよ。
ニルヴァーナの石で、幻の展示品を制御することで、飛ぶことができるの。

……行くわ。
確実に飛ぶためにはもっとたくさんの展示品がなければならないけれど」

「待って! それって、危険なことなんじゃないの!?」

鈴蘭が、不完全な形で装置を起動することの危うさに気付いて叫ぶ。

たいむちゃんは、月を見上げた。

「このまま、行くしかないわ。月へ。……“ニルヴァーナの回廊”へ」

一行が止めるのも聞かずに、
たいむちゃんは無理やりロケットを発進させようとしはじめた。