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リアクション
■たいむちゃんタワー
吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、
巨大カブトムシのヘラクレスグレートに乗って、
空中からたいむちゃんタワーの様子を見張っていた。
「なんだァ、ありゃあ!?」
すると、たいむちゃんタワーのビームが、より一層、強い光を放ち始めた。
地響きとともに、たいむちゃんタワーが鳴動し始める。
「竜司、たいむちゃんタワーが!」
ヴォルフガング・モーツァルト(う゛ぉるふがんぐ・もーつぁると)が、慌てて叫ぶ。
「浮き上がろうとしています!」
「なんだとー!?」
アッシュ・トゥー・アッシュ(あっしゅ・とぅーあっしゅ)とシュラウド・フェイスレス(しゅらうど・ふぇいすれす)の、
グレイヴストーンが進み出て、たいむちゃんタワーの発進を阻止しようとする。
「また暴走したら、周辺住民に被害が出てしまいます!」
アッシュが叫ぶ。
多くの人の希望でデザインされたたいむちゃんタワーを傷つけないよう、
アッシュは武器は使わずに、イコンで押さえつけようとする。
「ヘラクレスグレート!
てめえの巨体で、たいむちゃんタワーを止めるんだァ!」
竜司が巨大な羽音ともに、ヘラクレスグレートを
たいむちゃんタワーにしがみつかせる。
しかし、たいむちゃんタワーの側面部の巨大ドリルが回転し、
ヘラクレスグレートを狙って来た。
「オレのヘラクレスグレートがー!」
モズのはやにえのように、
巨大カブトムシが、たいむちゃんタワーに突き刺さる。
それにもかかわらず、
たいむちゃんタワーは、天に向かって飛び立とうとしていた。
「くっ、もうダメかもしれません……!」
アッシュが、浮かび上がるたいむちゃんタワーに、
グレイヴストーンを引きずられながら言う。
さらにすさまじい光と、
轟音を巻き上げつつ、たいむちゃんタワーは発進した。
■□■
「うるさぁぁぁぁぁぁぁいっ!
いぃまっ何時だと思ってるんですか、このぉぉっ!」
大型飛空艇シグルドリーヴァを、
立体駐車場と間違えて、たいむちゃんタワーに停泊させて寝ていた
ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)が、
ネグリジェ姿でデッキガンを発射する。
たいむちゃんタワーのドリルの部分が派手に爆発した。
「おお、助かったぜェ!」
それと同時に、身体を突き刺されていたヘラクレスグレートが、
脱出に成功する。
「なんですか、こんな時間に騒いで……って、お嬢様!?
たいむちゃんタワーを破壊してるじゃないですか!」
風森 望(かぜもり・のぞみ)が、ノートに突っ込む。
「あ、あれ?」
「まさか、自分の頭のドリルが目立たなくなるからって、
こんなことされたんじゃないでしょうね」
「そんな!?
わたくしは無罪ですわー!?」
ノートが、カーラがついた縦ロールの髪を振り乱して叫ぶ。
「このヴァカキリー!」
望が、ノートを罵倒する。
コンクリート モモ(こんくりーと・もも)とハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)の乗る
コームラントカスタムが、大形ビームキャノンをたいむちゃんタワーの方向に向ける。
「今なら大型ビームキャノンで上昇するタワーを撃てるわ!」
「モモ、著作権侵害しまくりの、あのゆる族をギルティネー!」
自分のことを盛大に棚に上げて、ギルティが言う。
「万博の締めくくりに、宇宙へと飛び立つのね。
ただで行かせはしないわ!」
モモは、大形ビームキャノンを発射した。
パッ!! ドッカーンッ!
たいむちゃんタワーの周りに、色とりどりの花火が炸裂する。
モモが、万博のフィナーレ用に仕込んでいた花火であった。
「よい帰郷の旅を……グッド・ラック!」
「モモ、親指が下ネー」
『勝手に締めるんじゃねェー!』
竜司をはじめ、皆から、モモは総ツッコミを受ける。
モモの祝砲を受けて、
たいむちゃんタワーは、月に向かって順調に向かおうとしてたのだが……。
「ば、爆発してるぞっ!」
たいむちゃんタワーは各所から火を噴きだしたのだ。
■□■
花火に包まれ天へ昇っていくたいむちゃんタワー。
だが、その巨体のあちこちで爆発が起き、いつ壊れるか分からないのだ。
「やっぱり無理しているんだ。
……中にはたいむちゃん以外にも残ってるやつがたくさんいる!
こうなったら、多少、ぶっ壊してかまわねえ!
あいつらごとタワーが飛んでかないように、イコンで押さえるんだ!」
竜司が言い、
その場にいた者たちは、たいむちゃんタワーを止めようとしはじめる。
「なんだかよくわかりませんけど、
推進装置っぽいのを壊せば止まるんじゃないかしら!」
ノートが、さらにデッキガンで、
たいむちゃんタワーを攻撃する。
館下 鈴蘭(たてした・すずらん)が
ネレイドのアサルトライフルで、
タワーの飾りの中から、推進装置に見えるものを破壊する。
「お願い、止まって!」
「止まってくれ!
ここは、日本とシャンバラの、絆の地なんだ!」
前原 拓海(まえばら・たくみ)が、クェイルのグレネードを投げながら叫ぶ。
そうしたイコンたちの攻撃で推進装置は破壊され、
ビームの光が通常通りとなり、残ったドリルの勢いも弱まっていく。
上昇していたタワーは、ぐらりとゆらぎ、
地面へとゆっくりと降下し始めた。
「よし、今のうちだ!
みんなでタワーを戻すぜっ!
ヘラクレスグレートを含めその場にいたイコンは
みんなでタワーを掴み、誘導を始める。
そうして、広大な空京万博の敷地へと、
地響きを立て、たいむちゃんタワーが横たわって不時着することが出来た。
契約者たちの活躍で、
皆の想いがこもったタワーが完全に破壊されることはなく、
無事に地上へと戻れたのだった。
■□■
そして、たいむちゃんタワー前。
「皆、どうして……」
たいむちゃんは、
皆が必死になって自分を助けてくれようとしたことに呆然とする。
館下 鈴蘭(たてした・すずらん)と
アシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)が、
イコンから降りて、
たいむちゃんに近づく。
「だって、私たちはもう……」
「友達でしょう?」
微笑を浮かべる鈴蘭とアシュレイに、
桐生 円(きりゅう・まどか)や
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)もうなずく。
「しかたないですぅ!
キャンティも許してやるですぅ!」
キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)も、
そっぽを向きながら言う。
「み、みんな……」
たいむちゃんの着ぐるみの瞳に涙があふれる。
「ありがとう……それに、ごめんなさい」
堰を切ったように、たいむちゃんは泣き崩れ、
着ぐるみ越しに涙があふれてくる。
それはたいむちゃんが10年間溜めていた、涙だった。