空京

校長室

選択の絆 第一回

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選択の絆 第一回
選択の絆 第一回 選択の絆 第一回

リアクション


ゴーストイコン鹵獲作戦


 アウタナの護衛を勤めていたミルト・グリューブルム(みると・ぐりゅーぶるむ)は{ICN0004670#Seele―?}に乗りながら、ジッと蜂型イコンを見つめていた。
「校長先生、質問です!あのゴーストイコン、校長先生も見た事無い機体なら
 出来そうだったら1体くらい確保した方が良いかなー?」
 ミルトは通信でコリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)に質問した。
『ふむ……確かに敵の情報を把握しておくのも良いかも知れんな。では、首尾良く鹵獲できたら艦隊に持ってきてもらいたい』
「了解です!」
 ミルトは元気よく通信を切ると蜂型イコン一気を凝視して、ペルラ・クローネ(ぺるら・くろーね)に声をかける。
「ペルラ、鹵獲の許可が下りたよ! 捕まえて持って行こう」
「ええ、でも攻撃する前にもう少し平和的な手段を試みましょう?」
 ペルラはそう言うと膠着状態に陥った蜂型イコンに向けて通信を試みた。
「パイロットは応答せよ。繰り返します、パイロットは応答せよ」
「……」
 が、蜂型イコンからはなんの反応もなく、ただ、ペルラたちの目の前で羽を羽ばたかせる。
「やっぱり無理ですわね。後のことはミルトに任せますわ」
「うん、了解了解」
 Seele―?はスナイパーライフルを素早く構えると、目の前にいたイコンの針の部分を打ち砕いた。
 蜂型イコンはそのままバランスを崩して落下しそうになるが、Seele―?はそれを抱き留めた。
「よし、鹵獲成功」
「でも…この後はどうしましょう?」
「え?」
 ミルトが周囲を見渡すと、いつの間にかSeele―?の周りを蜂型イコンが針を出して構えていた。
「迂闊でしたわ……この機体を囮に周りを囲むなんて……」
「これを抱えてたら、少なくとも機体は無事じゃ済まなそうだね」
『大丈夫ですかー? 今すぐ助けてあげますねー』
 突然、通信に割り込んできたのはセレナイトのサブパイロットユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)だった。
『敵はこちらでお相手しますから、その隙にそれを届けてくださいねー』
「道中の護衛は私が勤めよう」
 そう言ってきたのはグレート・ドラゴハーティオンに心化したコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)だった。
『あ、じゃあお願いしますー。それじゃあ、秋穂ちゃん攻撃しよー』
 そう言って、ユメミはメインパイロットの端守 秋穂(はなもり・あいお)に声をかけると、セレナイトを上昇させると、蜂型イコンたちを見下ろせる場所まで高度を上げた。
「どう? ここなら見渡しやすいんじゃない?」
「ええ、十分です。さあ、ここから先へ、易々とは行かせませんから!」
 秋穂が叫ぶとセレナイトは新式アサルトライフルを構えてSeele―?を囲んでいた蜂型イコンたちに向けて引き金を引いた。
 鉛の弾が容赦なくはき出され、狙われた蜂型イコンたちは何機かは回避をしたが包囲網には穴が空いてしまった。
「さあ、こっちです。私についてきてください!」
 ハーティオンは包囲網を抜けると、Seele―?に合流して艦隊まで援護した。
 それを蜂型イコンたちが見送るようなこともなく、追撃をかけるがセレナイトがそれを阻む。
「おお、凄い凄い。これだけやればエースも狙えるんじゃないかな?」
「称号より、防衛が成功する方が大事です」
 秋穂の返事にユメミは唇を尖らせる。
「ユメミとしては、秋穂ちゃんにエースになってほしいんだけどなー……」
 ユメミは呟きながらもセレナイトは防衛の仕事を全うする。
 一方、護衛を務めていたハーティオンだったが相棒である龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)から文句がきていた。
「ガオオオオン?!」
 他の生き物にはただ叫んでいるようにしか聞こえませんが、ハーティオンにはしっかりと意味が伝わっています。
「なに? 防衛の役を買って出れば暴れられたのになんで護衛なんだ、だって? それは暴れることなんかより、この子たちが抱えているイコンの方を調べるのが大事だと判断したからだ」
「ガウウウウ……」
「うむ、分かってくれたならそれでいいんだ。……それに、護衛も退屈な仕事というわけではないぞ?」
 ハーティオンはそう言うと、風斬剣を手に取りセレナイトの攻撃をかいくぐってきた数機を切り裂いた。
「ガウウウ!!」
「こんな数じゃ物足りない? まあ、そう文句ばかり言うな。そのうち、私たちが前に出なければいけない場面があるさ」
「ガウ?」
「ああ、本当だとも。とにかく今はこの子たちの護衛に集中するんだ」
「ガウウウウ!」
 ドラゴランダーは了承したように叫ぶと、大人しくなりハーティオンは無事にSeele―?を護衛し終えた。



 後に、その蜂型イコンから、パラミタともニルヴァーナとも違う技術が用いられていることや、
 一部に薔薇学第二世代機であるファーリスに用いられているのと同様の技術“も”用いられていること、
 また、部品の中には、数万年を超える過去の物と思われるものがあることが判明したのだった。