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エクリプスをつかまえろ!

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エクリプスをつかまえろ!

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 望遠鏡や撮影用の機材などは高価なため、星見石のあたりには監視が付いた。カルナスとチェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)、白波 理沙、朱華、ウィスタリアが主にそれを担当した。
 特にウィスタリアはこっそりと禁猟区を作り上げ、朱華と仲間、機材を守った。
「朱華には秘密です」
 大きなリボンにラベンダー色の髪をふわふわゆらして、チェルシーは『星見石』発見の大役を終えた理沙と、お喋りを楽しんでいた。
「みなさん、聞いて下さいな。各自で持っていくものを用意していたのですがウチのマリーちゃん、ああクマのヌイグルミなんですけどね、を持っていこうとしたら理沙さんが何故か微妙なお顔をされていましたわね。あ、理沙さんも可愛いお友達が欲しくて羨ましかったのですわね、うふふ☆」
「いや、ぜんぜん、羨ましくないし。て、いうかマリーちゃんよりもキャンプに必要そうなものがあるでしょうっ!」
 二人の絶妙な掛け合いに、どっと笑いが沸く。
 こうやって四日目も過ぎていった。



第4章 ナゾ肉とエクリプス焼きと私。

 五日目−
 この日は特にすることもなく、天文部も適度に休憩を取りながら、それぞれがキャンプを楽しんでいた。
「エクリプス自体は、明後日、昼の11時頃から約5分間、起こります。『星見石の丘』が一番、観測地点としてはベストポジションです。各自、朝の9時から場所取りをして下さい。それ以前は認められません。丘に来ても、監視の生徒が『力づく』で追い返します」
ケテルからのアナウンスに生徒たちは、カメラやビデオのチェックを重ね、更に天文部にベスト・オブ・ベストポジションはどこかを聞いて回っていた。

「さて、謎肉の屋台を始めるか!」
 東條 カガチ(とうじょう・かがち)は黒髪をきゅっと後ろで縛り、屋台の準備にかかった。
「出た! 謎肉!」
 佐々良 縁らが噂を聞きつけて、わらわらとやってくる。
「ふ、ふ、ふ。この『スターゲイザー』まで、背負ってきたダッチオーブン。そして、炭。筋肉痛で死ぬかと思ったよ。さあて、俺、東條 カガチが腕にヨリをかけて作った謎肉のケバブと謎肉スープだよ〜炭火焼きだから、熱々で肉質も最高だあ〜よっといで〜」
「よっといで−!!」
 柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)が、カガチとお揃いのサファリシャツ、サファリパンツにサファリハットで呼び込みを手伝う。
「カガチさん、謎肉って何」
 佐々良 縁の質問にカガチの顔に青い影が差す。
「人間、知らない方が良いこともあるんだよ」
 カガチの目が一瞬暗く闇色にそまったことに何人かが気がついたが、謎肉のジューシーな匂いの前に、食欲が屈服してしまう。
「おれ、ケバブ二人前!」
「あたし、謎肉のスープ!」
 飛ぶように謎肉が売れていく。
「謎肉ですって。ひな、行ってみない?」
「そうだね、緋音ちゃん。美味しかったら、謎肉のサンドウィッチを作ってみたいです」
 緋音とひなは二人で手を繋いで、謎肉屋台の列に並んでいる。
「レイ、おいしい?」
「祥子も食べてみな。このケバブ、結構いける。あと、甘い物が食べたいなあ…」
 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)と祥子も、謎肉に舌鼓を打つ。

 また、別の所では大草 義純(おおくさ・よしずみ)が「エクリプス焼き」なる屋台を出していた。気合いが入ると背中に入った「夫婦滝登り鯉」に色味が増す。
「食事の後は甘いものも欲しくなるはず…謎肉でおなかいっぱいになった生徒たちが、かならずこっちに流れてくるはずです。しっかりとお客さんにさせてもらいまっせ! なにより、粉もんは儲かりますから! …それに環菜校長に屋台や材料を運んでもらえなかったのが痛いものですね。財布の紐が固すぎるで、環菜校長…よっしゃ、自腹で運搬費を支払った分、取り戻しますよ! え〜好きなあの娘に!日食の記念に! エクリプス焼きはいかがですかー」
 義純は、二重焼きにダイヤモンドリング焼印をぽんぽん!と、手際良く入れていく。
「おおっと! エクリプス焼き! いいね〜! 女の子にモテそうだ!」
 早速飛びついたのは、勇敢なるナンパ師、鈴木 周。
「もてる、もてるよ!」
 義純が商売上手にも、おだて上げる。
「ケテルも、きっと疲れがたまっているはずだから、甘いのは欲しいだろうなあ〜『ありがとう、周くん』『良いって事よ! ケテル、君が俺を見つめているのは、判っていたよ』『私の気持ちに気がついてくれたのね』って、ケテルからアプローチされちゃったりして!  うっひゃー! よし、愛しのケテルにも持って行ってやらなきゃな…兄ちゃん、焼けてる分、全部おくれ!」
「おおきに!」
 義純がささっと『エクリプス焼き』を包んで渡すと、喜び勇んで周はケテルのもとへ駆けだした。まさに愛の力。
「お、美味そう。食うか、ルナ?」
「食べます〜!」
「おれも、食おうっと。意外とうまいなあ」
 永夷 零とルナは一つずつ、エクリプス焼きをほおばる。
「クルードさん! 私も『エクリプス焼き』食べたいです!」
「ユニ、落ち着きなさい。『エクリプス焼き』は逃げないだろう」
「いいえ、逃げちゃいます! 早くたべたーい!」
 クルードはユニにぐいぐい、屋台まで引っ張られてしまう。