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生贄の遺跡を攻略せよ!

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生贄の遺跡を攻略せよ!

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8・生贄の間

 ギギギギギギギッ。

 音と共に皆が座った椅子と石碑が沈んでいく。
 広間前の扉が開く。
 続く階段。
 「たいせつな人」捧げたものたちが降りてゆく。
 全てが階段に消えると、扉は再び閉ざされた。

 最深部には女王器の一つ「朱雀鉞(すざくえつ)」が眠っていた。小振りの青銅製の鉞(まさかり)で、両刃になっており、朱雀が羽を広げたような形状をしている。
 朱雀鉞を祀るように、等身大の女性の石像が安置されている。
「あの石像はシャンバラ女王です。なんて素晴らしいのでしょう」
 息を呑む一同。

 月夜とマナが朱雀鉞にゆっくり近寄っていく。
 共にプルーストの二人は、この朱雀鉞には邪悪なものがないことを感じでいた。
 そのとき、カタッと音がした。
 石像群が朱雀鉞を守るように配置されていた石像が動いたのだ。
「あっ!」
 全員が声にならない声を上げる。
 石像は、「たいせつな人」として生贄に差し出したものたちにそっくりなのだ。
 皆が、差し出した「たいせつな人」に似た石像に近づいたとき、「彼ら」が動き出した。
「メイベル・・似てるんじゃない、メイベルだ」
 セシリアは叫ぶ。
 先ほど来ていた服と全く同じ格好、それだけでなく、回廊内でつけた傷まで残っている。

 「ストーンゴーレムにされたんです」
 ファルチェが、セシリアの姿を見つけ駆け寄る。
 セシリアは襲ってきた。

 ストーンゴーレムと化したものたちが、襲い掛かってくる。
 戦うことは出来ない。壊すわけにはいかないのだ。

 大切な人を差し出さなかった亜璃珠は、高笑いをしている。
「大丈夫だと思いますわ。壊れても直りますわよ。さ、女王器をいただきますわよ」
 襲ってくるストーンゴーレムを手にしたムチで払おうとしたとき、
 黎明が体を割り込ませる。
「それはネアだ。」
 痛みに耐える黎明、
「ネアを壊すわけにはいかない」
 ネアのストーンゴーレムは、今度は黎明を襲う。
 ストーンゴーレムを抱きしめる黎明、体が傷だらけになる。
 ライが黎明を助け出す。
「とにかく、離れるんだ」
 無理やり引き放つ。
 セシリアが寄ってきて、ヒールで傷を治す。


 オリヴィアはシリウスを保護して、部屋の隅に避難している。
「わたしのガラでなないけどねぇ〜たまにはねぇ〜」
 華奢な円は、ストーンゴーレムになってもあまり迫力はない。ふらふら動いているだけだ。
 同じようにエリスもふらふらしている。石になると、その痩せっぷりは見事だ。

 各務は泣いていた。ストーンゴーレムになった神山は、各務を前にしてひたすら床を攻撃している。床も固い石だ。神山の手が少しずつ欠けてゆく。
「やめて、やめてね。神山、私を攻撃して!」

 イビー・ニューロは動かない。
 変形して大型二輪車になっていた。察知して変形したのだろう。
 武は変身していたが、戦う気持ちはなかった。
 イビーに他のストーンゴーレムが危害を加えないよう前に立つ。

 九頭切丸のストーンゴーレムは自分の頭を床に打ち付けていた。
「ど、どうしよう・・・」
 睡蓮は、体の震えが止まらない。

 武尊のストーンゴーレムはハチャメチャに動いている。
 戦うというよりは憤って自棄を起こしているようにみえる。

 ラルクとアインのストーンゴーレムは、共に戦っていた。
 お互い巨漢だ。既に体のあちこちがかけている。

 ウィングのストーンゴーレムは腕にまるで剣があるかのように振り回している。
 剣の修行を再現することで呪いと戦っているのかもしれない。
 
 
 クリストファー・モーガンとクリスティー・モーガンのストーンゴーレムも、お互いで戦っている。
 
 ミリアはロイのストーンゴーレムと対峙している。
 ロイがミリアに襲いかかる。逃げるミリア、ロイのストーンゴーレムが泣いていることに気が付く。
 自らの力で、後ろ向きに倒れるストーンゴーレム。

 ベアはストーンゴーレム化したマナを抱きしめていた。
 時折、魔力に負けたマナの腕がベアを打つ。しかしベアはじっと耐える。

 天音のストーンゴーレムは、動かない。自らの美学に反する姿に呪いに負けず死を選ぼうとしているようだ。
 時折、ガタッと体の中から音がしている。
 ブルースは叫ぶ
「襲うんだ、お願いだ!」

 ジゼルのストーンゴーレムも動かない、動けば英希を壊してしまう。
 必死にたえるジゼルの姿に、英希はなきながら部屋の隅に移動、石碑の蔭に隠れる。
 膝を抱え、声を殺してなく英希。
「僕は隠れてる、だからジゼル、動いて!」

 ライ、ダリルのストーンゴーレムも静かに横たわっていた。
 二人とも、パートナーに危害を加えるなら、壊れた方がいい、石化する中で、そう決意していた。

 亡霊、メイベル、月夜、セシリア、レイディス、ユリのストーンゴーレムは、集団で広間を歩いている。
 その歩はゆっくりで、牧歌的でもある。それぞれのパートナーは部屋の隅で息を殺している。
 優梨子は亡霊と戦いたかったが、他の皆に制止された。

 イーオンはアルゲオの変わり果てた姿に衝撃を受けている。
 みなストーンゴーレム化されても、どこかに自分が残っている。今のうちなら助かるはずだ。
 呪いの源は・・・
 イーオンが叫ぶ。
 「ストーンをおびき寄せるのだ。一箇所に集めよう。その隙に誰か、朱雀鉞を!」
 それぞれが、対峙しているストーンゴーレムを部屋の隅に誘導する。
 動かないストーンゴーレムには、祭壇が目に入らぬようローブなどで即席の壁を作った。
 朱雀鉞に近づく輩がいると、ストーンゴーレムに異変があるかもしれない。


 速人がローグのスキル「隠れ身」で朱雀鉞に近づく。
 鍵を外して、朱雀鉞を手にする。

 瞬間!

 石化していた皆が元に戻った。
 血だらけのものもいる。
 あちこちでヒールが行われている。


 それぞれが、差し出した「たいせつな人」は、石化して操られようと、自らの「たいせつな人」を襲わなかった。
 みな、必死に耐えた。
 それぞれが、それぞれの絆を確かめている。

 エリスが呟く。
「家に帰りたいのじゃ。わしも早くたいせつな人にあいたくなったのう」