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第25章 魔人転生

 麻野 樹(まの・いつき)雷堂 光司(らいどう・こうじ)天草 四郎(あまくさ・しろう)の3人はなんやかやと言いつつ3日連続でリリーハウスに通い詰めていた。
 樹の恋愛対象は男だが、可愛い女の子が嫌いというわけでもない。
 光司はそれほど女に興味はないが、樹が女の子と楽しそうにしていると超むかつく。
 四郎は最初のうち『まあ、たまにはいいんじゃないですか』という態度だったが、樹の酒浸りと、日に日に悪くなる光司の機嫌とが心配になってきていた。

 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)と出会ったのは、そんな3日目のことであった。
「暇なら相手が見つかるまでどうだい?」
 1日目と2日目には見たことのないタイプであった。ピエロのような格好をしていて、性別は女のように思えるが、確たる自信は持てない。せっかくなので3日目くらいは変わった相手と酒を飲むのもいいかも、と思った樹は指名してみることにした。
「よせ樹、これ以上おかしなやつと関わるな」
 光司は反対らしい。四郎は光司を落ち着かせようとしている。

 テーブルに移動した四人はとりあえず日本酒を注文。
 ナガンと樹は、実は先日すでに出会っていた。薔薇の学舎で行われた体育祭の騎馬戦で、ふたりは対決していたのだ。そのときのナガンは今とだいぶ違う姿だったので、樹は見逃しているらしい。

 この両者の関係は説明しがたいものがあるが、考えようによっては“褌”の漢字一文字でも説明できる、奥深いものだった。

 ナガンはどうやって樹をその気にさせようかと相手を観察していたが、
「ねぇ君ぃー♪ ポ○キーゲームしようかー♪」
と樹のほうから提案される。これを断る話はない。この話を聞いて光司はイラっとしたらしく、即座に日本酒を飲み干し、もう一杯注文した。

 ポ○キーを加えたナガンは、挑発するようにゆらゆらと上下させる。一口、二口、と進んでいき、だいぶ二人の唇が近づいてきたところで。

 とうとう耐えられなくなった光司が、空手チョップでポ○キーを叩き折った。

「樹、こんなところに俺たちを連れてきて、一体どういうつもりだ」
「いや、光司のこと愛してない訳じゃないんだけど、折角だしみたいな」
 光司の怒りは収まる気配がない。
 ここでナガンは十八番の“SPリチャージ”を使うことにした。光司の興奮が極限にまで達する!


 このあとは樹、光司、四郎による白熱した家族会議である。

「樹、女や校長につきまとって何が楽しいんだよ!」
「光司、落ち着いて。ほら樹、謝りなさい」
「すいません羽目を外しすぎました。すいませんすいません」

「あのーお客さま?」
 薔薇の学舎のことは薔薇の人間に任せよう、という理由で貧乏くじを引かされたエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)が仲裁にやってくる。
 いや仲裁はもう無理なので、まわりの迷惑にならないよう別室に誘導するためやってきたのだ。
 樹と四郎は別室に移動しようとするが、光司はとんでもない剣幕で、なかなかその場を離れない。

「……これでも喰らってろー!」
 ついには光司が光条兵器を振り回す。


 薔薇の学舎の情念の深いこと、凡人には量り難いものであるなあと、この一件は『百合屋敷事件』として後々までの語りぐさとなったのであった。


ナガンの売り上げ:3000G


第26章 最後の賭け

 いよいよ李 梅琳(り・めいりん)は退くに退けないところまで来ていた。今日中に挽回するしかないのだ。

 この日、梅琳を指名したのは宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)だった。同伴しているのは以前からのパートナーであるセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)と、新しく契約を結んだ英霊、湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)である。

「サー・ランスロット、今日は貴方の歓待よ。こういう場は初めてでしょうけど楽しんでね」

 祥子は高名な英霊と契約できたのが嬉しくてたまらないらしい。ランスロットと梅琳を引き合わせるのが、今日の祥子の目的だった。梅琳は素直に感嘆しつつ、何を飲むか尋ねた。
 祥子とランスロットは黄金の蜂蜜酒を選び、梅琳とセリエは果実ジュースにした。祥子はおつまみとしてサラミとスモークサーモンを追加する。

 梅琳は祥子に近況を聞いてみる。話題に出るのは第三師団や謎の遺跡についてのことだ。人づてに聞いてはいたものの、当事者の話はやはり重みが違った。

 セリエは小腹が空いたのか、ピザを注文している。もともと悲観的な性格をしているのだが、この機会に打ち解けようと思ったらしく、梅琳に話しかけてきた。
 話の内容は主に祥子との思い出話であるが、怖い思いをした話であるとか、悔しかった話だとかが多かった。しかし梅琳はセリエを邪険にせず、かといって過度に深刻にもとらず話を聞いたので、だいぶ気が楽になった。

 蜂蜜酒を飲んだランスロットは昔を懐かしむように言った。
「ミードか! ローマ人やサクソン人が好んでいたな!」

 祥子たちは積極的に飲食したので、自然と梅琳も釣られて果実ジュースを何杯か飲むことになった。明るい雰囲気のせいか、普段よりも口数が多くなる。

 その様子をみて、祥子はずっと疑問に思っていたことを質問することにした。
「ところで梅琳、新入生歓迎訓練の時に『私の豪華ディナーが』っていってたけど、あれは何だったの? 今だからってことで教えて欲しいわ」
「教導団の伝統よ。新入生歓迎戦闘訓練で何人無事かを賭けるのよ」
 祥子は肩をすくめた。
「つまり私たちは先輩の賭けに使われていた、と」
「でも、一番少ない被害者数を予想したのは私だったのよ。そして事実、一人の犠牲者も出なかったわ」
 そう言って梅琳は胸を張った。


梅琳の売り上げ:+3400G(計4200G)


 最後に梅琳を指名したのは、やはり教導団員であるクロス・クロノス(くろす・くろのす)であった。梅琳はあまりクロスを意識していなかったが、クロスはあこがれの感情を抱いていた。
 クロスはヴァイシャリーの果実ジュースを注文し、梅琳にも勧める。断る理由も特にない。

 梅琳の機嫌がいいので、クロスは思い切っていろいろ質問してみることにした。
「梅琳さんは地震が苦手だそうですけれど、なぜなのでしょう」
「子供の頃、大きな地震があってね。それ以来どうも苦手で」
「今の教導団についてはどう思っておられますか」
「そうねえ。ひとつだけ言えることがあるわ。
 もっと私に活躍の場を用意すべきよ」
 そういって梅琳は笑った。一緒になってクロスも笑う。

「それじゃあ、鋭峰団長についてはどうお思いですか?」
 気分が軽くなっていても、鋭峰にまつわる噂は忘れられない。梅琳は言葉を選びながら模範的回答を目指す。
「私たちにとって最良の指導者だわ。教導団員であれば誇るべきことよ」

 クロスはさらにおずおずと切り出した。
「お写真を撮ってもよろしいでしょうか。できれば皆さんの集合写真を……」
「私は構わないけど、集合写真についてはラズィーヤに聞いた方がいいわね」
 クロスは礼を言って、梅琳の写真を撮った。


梅琳の売り上げ:+400G(計4600G)



第27章 注文の多い酒豪大会

 この27章には林田 樹(はやしだ・いつき)が登場する。
 読者が混乱するかもしれないので、蛇足かもしれないがご説明させていただく。この話には

和原 樹(なぎはら・いつき)
麻野 樹(まの・いつき)
林田 樹(はやしだ・いつき)

と3人の樹が登場しており、全員まったくの別人である。


 さて林田 樹(はやしだ・いつき)に話を戻そう。
 樹がピンクのワンピースでスカートの裾にレースいっぱい、髪は下ろして、頭に大きなおリボンも付けた状態で呆然自失としているのには、それなりに理由があった。

 2日前のこと。パートナーのジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)に誘われて、樹はリリーハウスにやってきた。どうやら『学園対抗酒豪大会』の会場であるらしい。
 樹は酒を飲めば酔いはするが、ひどく体調を崩した記憶はなく、『白金の肝臓』と自称するほどだ。負けることはあるまいと気楽な気分で参加したのが運の尽き。

「この書類にサインしてください。大会出場の届け出です」
「わかった」
「ではこの衣装に着替えてください」
「なんだ、このひらひらした服は?」
「大会出場者用の衣装です」
「わからないがわかった」
「次はメイクを直します」
「なんだ、そんなことまで必要なのか?」
「参加者によっては顔色がひどく赤くなったりして、見苦しくなることもありますので」
「注文の多い大会だな。私はそんなことはないのだが、まあわかった」

「ところで林田様、実はここは『学園対抗酒豪大会』ではなく、きゃばくらなのです」
「……帰る。私は、このような所とこのような服が嫌いと……」
「林田様の銃器コレクション、ご無事だといいですね」
「急に何を言い出す? ……まさか!?」

……というようなやりとりが樹とジーナのあいだに取り交わされたのであった、

 1日目には黒いレースのゴスロリを。
 2日目にはやはりレースを使った女海賊のコスプレを。
 そして3日は先述のとおりの甘ロリと、滅多に見られない姿をビデオカメラに収めて満足するジーナであった。


 ところでついうっかり見逃すところだったが、リリーハウスはきゃばくらではありません!


林田樹の売り上げ:600G