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【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

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【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

リアクション

 円は大量の花や枝を使って、曲げたり絡めたりしながら何かの形を作っている。
 興が乗ってきたのか、ついに立ち上がって、制作に没頭し始めた。
「この牙で、切裂くのだよ、がぉー!」
 どうもサーベルタイガーもどきの模型のようなものを作ろうとしているらしい。

「甘いわぁーオリヴィアの雷光の最速猫の速さには誰もかなわないのよぉー」
 オリヴィアは円を挑発して、猫もどきを作り始めた。

 悪乗りする三人をたしなめるものは、いない。
 それぞれに、自分の作る花に没頭していうのだ。
 老女は誰がどう騒ごうと涼しい顔で自分の作品を作っている。

 突然、マリカの持つモミジの枝に、くさびが打ち込まれた。
 驚きのあまりマリカが振り返ると、
 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が立っている。
「くさびで曲げるのですわ、ねえ」
 話しかけた相手は、百合園女学院生徒会執行部『白百合団』副団長の神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)だ。
 控えめな紺の着物を舞妓風に着てはいるが、化粧はしておらず、凛とした雰囲気は損なわれていない。
「はい、おっしゃるとおりです」
「大作になるわね、お手伝いしますわ・・・」
 ここから、マリカはラズィーヤの言われるがままに、くさびを打ち込み、木を曲げる作業に関わることになる。

 野々は1人、黙々と花を活けていた。
 老女が立ち上がって野々の背後にまわる。
「筋がええどす」

 マリカの作品は、いつのまにか曲がりくねったモミジの幹の絡み合う、なんとも前衛的な作品となった。
 老女は、無言だ。

「円さんたちは面白いものを作っているのね」
 円とオリヴィアは出来あがった作品を光情の腕輪を使って目に光を入れようとしていた。
「先生がびっくりしますわ、おいたはだめですよ、ここは京都ですのよ」

「さあ、出来上がった作品を前に記念写真を撮りますわね」
 ラズィーヤの言葉に、車夫がカメラを取り出す。
 みながラズィーヤを遠巻きにしている。
 マリカが体育会のノリで、まず隣に座る。
 もう片方が空いている。
「・・・私、お隣に行ってもいいですか」
 気まずい雰囲気を察知した野々が座った。
 円たちは少し離れて立っている。
 マリカの隣にテレサが座る。

 老女の指示で、車夫が活けられた花を運んでくる。
 レサと野乃、投げ入れたわりには形になったミネルバの作品だけだ。
 マリカの作品は移動すると壊れてしまうとの理由で、そのまま借景としてカメラに収まるようになっている。
「あれ、ボクらのは?」
 円の問いに車夫が答える。
「生き物は外に、と仰せです」
 庭の大きな石の上に、円のタイガーとオリヴィアの猫が対峙していた。

「優子さんを置いていきますわ、みなさん」
 高笑いと共に去ってゆくラズィーヤ。
 花と、ラズィーヤとに疲れきったみんなに優子が提案する。
「近くの寺院まで散歩しませんか」

 そのとき、ガラっと障子が開いて、リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)
 カレンデュラ・シュタイン(かれんでゅら・しゅたいん)がひょこっと顔を出した。
 蒼空学園の二人だ。
「今、この前でラズィーヤさんに会ったんだ」
 おどおど室内を見回すリアトリスは、なぜか新撰組の衣装を着ている。
「いけばなをしているって聞いたぜ、俺たちも出来るのか。」
 訊ねるカレンデュラも新撰組だ。
「なんだ、その服?」
 ミネルバがとりあえずといった感じで聞いている。
「舞妓体験の店にいったら、男はこれだって言われたんだ」

「どうしましょう」
 野乃が優子に訊ねる。
「まだ花材も残っていますし、このお二人も大丈夫ですか」
 訊ねられた老女が頷く。
 室内には、ラズィーヤが追加で注文した大木が残っている。
「じゃあ、私が教えてあげるよ」
 満面の笑みで仁王立ちしているテレサ。