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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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第4章 学園に食材を届けよう

「病気や怪我に詳しい医者を探したけど・・・見つからなかったわね」
 謎の病について調べようと、セレンス・ウェスト(せれんす・うぇすと)は医者を探していたが、休暇中だったりして見つからなかった。
「単なる流行病ではなさそうだが・・・。極端な体力低下によるものかもしれないな」
 ウッド・ストーク(うっど・すとーく)は首を傾げ、考え込むように言う。
「そうだわ、ここではウィザードが医者の代わりなのよ!怪我はヒールで治るんだから病気も魔法で治しているのよきっと!」
「魔法でそこまで出来ないんじゃないか・・・人の手でしか治せない病もあるだろう。風邪とかの特効薬の開発一つにしても賞とれるような領域だぞ」
「それもそうね・・・もしそうだったら薬草なんていらないもの」
「とりあえず食材を探そう」
「そうね・・・何がいいかしら。きゃぁ!」
 探し歩いてると、セレンスは何かにつまづき転んでしまう。
 草にギュルッと足を掴まれ、宙吊りにされる。
 野生のマンドラゴラが彼女を食べようと捕まえたのだった。
 足を掴んでいる草へ火術を放ち、なんとか捕食から逃れる。
「これは結構な大きさだぞ!」
 体長6メートルの巨大な魔法草に食われてたまるかと、ウッドたちは草むらの中に飛び込む。
「―・・・もう行ったみたいね」
 草陰から顔を出し、魔法草が遠ざかっていくのを確認する。
「ん?何かイイ香がする・・・」
 セレンスの鼻先にミントの葉があった。
「これ料理に使えそうね。マンドラゴラに追いかけられて不覚にも隠れちゃったけど・・・こんな所で見つけるなんてラッキーね」
「それを採って持っていこう。また襲われてはたまらないから、学園の方へ行こう」
 必要な分だけ採ると、イルミンスールの学園の方へ駆けていく。



「ナツメと栗・・・それとネギとニンニク」
 佐々良 縁(ささら・よすが)はカゴの中を見て、採った野菜を確認する。
「椎茸に似た毒キノコとかあるよね。本草綱目啓蒙・・・ツキヨタケがそうね」
 野草辞典を開いて、どれに毒性があるのか見る。
「これは?」
 暗い場所で青白く光るキノコを、佐々良 皐月(ささら・さつき)が指差す。
「それツキヨタケ!毒キノコよ」
「えぇえ!?そうなんだ・・・似てたからてっきり・・・。あっこれは?」
「それが椎茸ね」
「カゴに入るよ」
「食材揃ったから電話しなきゃ・・・。森って電波なかなかつながらないんだよね。場所によってはまったくつながらないから厄介だよ」
 携帯電話の電波を探し、縁は30分間ウロウロ歩き回る。 
「都市間はつながりやすいけどこういう所はね」
 皐月も電波のない携帯を見てため息をつく。
「パートナー間なら多少つながりやすんだろうけどな」
 傍らで佐々良 睦月(ささら・むつき)がボソッと呟くように言う。
「あっ!やっとつながった」
「メールの方がいいんじゃないの?」
「そうね・・・会話中に途切れるかもしれないし」
 縁は遠野 歌菜(とおの・かな)へメールを送る。
「さて戻ろうか」
 新鮮な食材を届けるために家庭科室へ向かう。



「―・・・これも毒草ですわね。似たようなのがあるから注意しないと・・・」
 博識で毒草かどうか、ジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)が調べていく。
「今の所怪しい気配はしませんわね」
 ジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)は周囲を見回し、クリーチャーが襲ってこないか警戒する。
「これは大丈夫?」
 見るからに危険そうな虹色のキノコを指差しアンドレ・マッセナ(あんどれ・まっせな)は、ジュリエットに食べられるかどうか訊く。
「それは毒キノコですわ!こっちなら食べられますわよ」
 ジュリエットは、サルノコシカケを指差して言う。
「いっぱいあるじゃん」
「ちょっと、そんなに採ってはいけませんわ!」
「ちょっとぐらいお小遣い稼いだってバチはあたらないじゃん?」
「駄目ですわ。あくまでもラズィーヤ様のために必要な分だけを採りにきたのですわよ」
 無闇に採ろうとするアンドレに対して、ジュリエットはラズィーヤために採りにきたと、眉を吊り上げて叱りつけた。
 アンドレはつまらなそうにムゥッと膨れっ面する。
「何か飛んでくるよ!あっ、痛い痛い!」
 肉食の目のない怪鳥が、アンドレに襲いかかる。
「クリーチャーは人型だけではないようですわね!」
「撃ち落としてやる!」
 ハンドガンで狙い撃とうとトリガーを引く。
「空を飛んでいるなんて厄介ですわね」
「しっかり狙えば必ず撃ち落とせますわ!」
 跳びまわる怪鳥に照準を合わせ、ジュスティーヌはハンドガンのトリガーを引き銃弾を撃ち込む。
 撃ち落とされた怪鳥はドサッと落ち、白骨化して消え去った。
「さぁ・・・ラズィーヤ様のために、まだまだ探しますわよ」
 ジュスティーヌたちは、さらなる食材を探して森の奥へ入っていく。



「この辺には亡者がいないようでございますね」
 生者を狙うナラカの亡者が徘徊していないか、ヴェロニカ・ヴィリオーネ(べろにか・びりおーね)が辺りを見回す。
「何か見つかったでございますか?」
 比島 真紀(ひしま・まき)が食材を探しているゴザルザ ゲッコー(ござるざ・げっこー)に声をかける。
「いや・・・まだ見つからないでござるな」
「どんなのを探しているんだ?」
 目当ての食材は何なのか、サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)が首を傾げる。
「パラミタ人参を探しているのでござるが・・・それらしいのが見つからないでござるな」
「人参か・・・たしか橙色の野菜だったな」
「これはなんでござろうか」
 土の中に埋まっている草を見つけ、引き抜いてみた。
 黄色と橙色のマーブルカラーの、丸い野菜だった。
「カブ・・・でないようでありますな」
「やけにカラフルでございますが、毒はなそうでございますね」
「5つくらいあればいいでござろうか」
 ゲッコーがパラミタ人参をカゴの中に入れる。
「ト・・・タナ・・・」
 不気味な声色で、亡者が木の上から飛び降りてきた。
「―・・・モリノ・・・イノチ・・・ヲ・・・ハラエ・・・」
「そんなの払えないでございます!」
 襲いかかる亡者の足を狙い、ヴェロニカはランスで突きを繰り出す。
 掠めてだけで避けられてしまう。
「痛覚がないなんてやっかいでございますね」
「代金を命で払えなんて・・・ずいぶんと高級食材なのでありますな」
「やれやれ、ちょっと採っただけで酷いな」
 鋭く尖った亡者の爪がゲッコーの喉元に届きそうになった瞬間、真紀とサイモンが氷術で動きを封じ、ヴェロニカがランスで叩き割る。
「必要な分をとったし、そろそろ家庭科室へ届けに行くでござる」
「そうでございますね。また命を・・・なんて言われたらたまりませんから」
 疲れたようにヴェロニカは肩をすくめて言う。
 採った食材を届けようと、ゲッコーたちはイルミンスールの校舎へ向かう。



「この森には沢山の亡者たちがウロついているようじゃが・・・」
 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)は注意深く森の奥へ進む。
「喋れるようですから、多少の知能はあるんでしょう」
「ひょっとしたら罠を仕掛けてくるかもしれませんわね」
 ファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)の言葉に頷き、シルフェノワール・ヴィント・ローレント(しるふぇのわーる・びんとろーれんと)は罠が仕掛けられていないか警戒する。
「罠といえば・・・去ったふりをして、いきなり戻ってくる・・・とかでしょうか」
 考え込むように言い、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は左右を見ながら歩く。
「後ろから襲撃してくる可能性もあるけんのぅ」
 シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)が、何者かが後をつけていないか背後をぱっと振り返る。
「アウラネルクが姿を消してしまったのと、クリーチャーの出現の多さは何か関係があるかもしれませんから見つけたら倒しましょう。」
 カルスノウトの柄を握り、亡者が現れないか警戒している高月 芳樹(たかつき・よしき)が、ガートルードたちに向かって言う。
「森にとってもいい影響ではないからね」
 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)も同意するように頷く。
「ところで・・・目当ての食材は見つかったのかのう?」
 足を止めてセシリアは姫北 星次郎(ひめきた・せいじろう)に話しかける。
「山芋とサンショウ・・・ネギと紅棗・・・。普通の人参が見当たらなかったからパラミタ人参は見つけたんだが・・・。その他が見つからないな・・・」
 食材探しに森へ入った星次郎を心配して、シャール・アッシュワース(しゃーる・あっしゅわーす)が後をつけていた。
「(食材探しをしている生徒を守る人・・・結構いるんじゃない。ボクの出番あるのかな?)」
 草陰から後を追いながら、シャールは心中で呟く。
「あれはオレンジか?少し小ぶりみたいだが」
 軍手をはめ直し4メートルの木によじ登って1つ採り香を嗅いで確認すると、ヘタの部分からシナモンのいい香がした。
「ちゃんと洗えばシナモンの代わりになるな」
 果実を採って木から下りると、カゴの中にドサドサと入れる。
「この葉っぱはどうだろう」
 1枚千切り味を確かめる。
「いきなり口にして大丈夫のかのぅ?」
「大丈夫だったぜ。結構甘いな・・・これが甘草なんだろうか」
 少し採ってカゴの中に入れた。
「これも採っていくか」
 オオバナオケラとホソバオケラを根ごと採る。
「キノコもありますね」
「あっ!それも欲しかったんだ」
 地面に生えている茯苓を採り、カゴの中にいくつか入れた。
「よし・・・これで10種類揃ったな」
「それでは学園に戻りますわよ」
 ファルチェたちがイルミンスールの学園に戻ろうとしたその時、ガササッと葉が擦れる音が聞こえ、腹部が裂けたクリーチャーが星次郎に襲いかかる。
 草陰から見守っていたシャールが、亡者に向かって雷術を放つ。
 シュウシュウと焦げた匂いを漂わせながらも、鋭く尖った歯で星次郎に噛みつこうとする。
 雷術で追い払おうとするが、あまり効き目がない様子で向かってきた。
 食材の入ったカゴを抱え、とっさに地面へ伏せる。
 異変を察知したガートルードが標的の身体を蹴り飛ばす。
 亡者は土の上に転がりながらも向かってくる。
 深手を負うことを恐れないターゲットの手足を、ファルチェとシルヴェスターが剣でザクッと斬り落とす。
 セシリアとシャールの2人がかりで氷術を放ち、さらにガートルードも氷術を発動させる。
 完全に凍てついた亡者はシルヴェスターのソニックブレードによって、パキィインッと粉々に砕け散った。
「まだくるぞ!」
 迫りくるクリーチャーの胴体を、芳樹がカルスノウトの刃で薙ぎ払う。
 身体から流れ出る血で、あっとゆうまに土が赤黒く染まる。
 アメリアが氷術で凍てつかせ、カルスノウトで芳樹が叩き割った。
「早く学園へ戻るのじゃ!」
 どこからか湧いてくるのか、次から次へとクリーチャーたちが現れてくる。
 セシリアたちは全速力で学園への方に駆けていった。