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闇世界の廃病棟(第2回/全3回)

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闇世界の廃病棟(第2回/全3回)

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第3章 命の再利用

-PM19:00-

 情報を集めようと神楽崎 俊(かぐらざき・しゅん)神楽崎 沙織(かぐらざき・さおり)は、Bエリア内で看護師の霊を探し歩いていた。
「他のところ行ってみたが、なかなか現れてくれないな」
「ハァ・・・怖いですね。ん・・・義兄さん・・・アンッ♪」
 沙織は怖がっているそぶりをして、俊と腕を組み胸をくっつける。
「―・・・・・・そうなのか」
 少し間を空けて、軽く返事を返す。
「それにしても見つからないな・・・」
「夕方までに出られる時間過ぎちゃいましたし、朝まで帰れませんよね。あぁ〜怖いです♪」
「あぁ・・・ゴーストに遭遇しないように気をつけないとな」
「(とり憑かれたフリしたら、義兄さんどういう反応しますかね・・・フフフ)」
 頭の中で沙織は甘い想像する。
「ん・・・あれは・・・・・・黒いナース服の女・・・・・・あっ、待ってくれ!オレたちはここに囚われている魂の開放してやりたいだけなんだ」
 駆け足で追うが腕に沙織がひっついている俊の状態はかなり走りづらく、看護師の霊になかなか追いつけない。
「あんたたちに危害を加えようとか、そういうことをしに来たんじゃない!」
 転びそうになりながらも走っていくと、霊は資料室らしき部屋に入って行った。
 俊はようやくその部屋にたどりつく。
「ここに入っていったはずだが。どこにいるんだ・・・出てきてくれ」
 周囲を見回しながら俊が呼びかけていると、ステンレスの棚から数冊のファイルがズルッと床に落ち、風もないのにペラペラとめくれる。
「実験記録のファイルか?」
 開いたページを見ると悪魔のような実験内容が書かれていた。
「検体Aに薬品を投与して強化しようとしたが失敗・・・不用品を焼却して処分。次の検体は完成したと思ったが、失った身体の一部を求めて人を襲うようになる・・・改良して開発中の兵器に使えるか検討・・・」
 霊はこのことを知らせようとしたのか、書かれている内容は生物兵器についてだった。
「病院の患者たちが材料に使われているようだな。こんなものを作ってどうするんだ・・・どこかと戦争でもするつもりか?」
 ファイルをめくりながら俊は顔を顰めて考え込んだ。



「さて・・・資料探しとゴーストの再生スピードの検証・・・どっちを先にやるかな」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)はBエリアの廊下を歩きながら、どちらを先に済ませようか考えていた。
 しばらく歩いているとペタペタッと足音が背後から近づいてくる。
「クツ音じゃないな、まさかこんなところに素足で来るヤツなんでいないだろうし・・・なっ!」
 ディテクトエビルの術で殺意しかない塊の存在を探知し、振り返り様にショットガンのトリガーを引く。
 ドンッと銃声が響き、ゴーストの頭部が吹き飛ぶ。
「元の部分がないと、その部分は再生できないようだな」
 亡者は手探りで頭を探し掴むとすぐさま再生した。
「時間はたっぷり有るんだ。死ぬまで殺してやるから覚悟しろ」
 間合いを取ってアシッドミストと氷術を放ち、銃弾で粉々に粉砕する。
「おいおい・・・これでもまだ復活するのかよ・・・・・・」
 ベチャッグジュリとゴーストの細胞がくっついていき、凄まじいスピードで再生していく。
「だったら地獄の業火で燃えてみろっ!」
 火術を放ち炭化させると、黒い灰がズズズッと集まり再生しようとする。
「さて・・・まだまだ試すパターンは残っているぜ。無闇に突っ込まず距離をとっていれば避けられるしな」
 再生速度をメモしながらニヤリと笑い次なる戦法を考える。



「今の爆発音は何でありますか?」
「どこかで生徒がゴーストと戦っているのかもな」
 比島 真紀(ひしま・まき)サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は武尊が放つ火術の激しい爆音を聞き、なるべく戦闘を避けようと別のルートを調査する。
「このドアは自動で開くようであります」
 マットを踏むと体重センサーでドアが開いた。
「使われていないわりに電気が通っている部分があるようだが・・・」
「誰かがまだ使っている・・・ということでありますか・・・・・・」
「その可能性はかなり高いだろうな。しかし・・・必要な所しか使っていないようだ」
 薄暗い室内を覗くとサイモンは、目を凝らしゴーストから襲撃を受けないよう注意深く中に入る。
「いろんな薬品があるようであります」
 ガラスの棚の中に並んでいるペニシリンやベンジンを見ながら、ゴーストたちの心臓が隠されていないかチェックする。
「ケースに何か入ってるようだな。暗くてよく見えないが」
 サイモンは溶液の入ったケースを左右に揺らし、何が入っているのか確認しようとする。
「―・・・人の心臓であります!」
 目を凝らしてじーっと見ると、その中には人の心臓が2つ入っていた。
「動いていないな」
 ゴーストの不死性を成すため動き、生きているようにドクドクと脈打っているのかと思ったが、停止している状態だった。
「再生するための媒体なんでありましょうか?」
「さぁな・・・これを取り上げることで、執念のみで探し動くようにするという卑劣な考えかもしれないな」
「他の誰かが立ち入らないように、ゴーストを放った可能性もあるであります」
「それもあるだろうし、善意で助けようとしている者を襲わせやすい状況にしている・・・ということも想定できるな!」
 死角から襲いかかろうとするゴーストに、機関銃のトリガーを引く。
「これを探しに現れたのでありますか!」
 ケースの蓋を開けて亡者へ投げ、氷術で足元を凍らせ火術で火葬してやる。
「再生しないようだな・・・見つけた心臓がそいつのだったんだろう」
「まだ隠させれているかもしれないであります!」
「時間もかなりあることだし、根気良く探してやるか」
 室内にまだ亡者たちが求める心臓が隠されていないか、真紀とサイモンは再び探し始めた。