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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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第2章


 どこかの山中。
 彩鮮やかに花が咲き乱れ、小さな虫が集まって来ている。
 竹の子の頭が地面から顔を出している。
 しばらく歩いていると、大きなしだれ桜が見えてきた。
 近くまで行くと、和風の旅館のような建物が姿を現した。
「ここだよ! 皆、お疲れ様!」
 ホイップが後ろを振り返り、皆にそう告げる。
 結構歩いてきていたので、クタクタになっている者の姿もある。
「ホイップ殿か!?」
「久しぶり」
 ホイップは声の方へと向くと笑って、答えた。
 声の主は純白の着流しを身につけ、雪のように白い肌を持ち、長い黒髪が美しい青年だ。
 少しきつめの印象を受ける。
 ホイップに話しかけた人物は急いで駆け寄り、ホイップをきつく抱きしめた。
「この5000年、何をやっておったのだ! もう少し顔を出せ!」
「うん、ごめんね……」
 抱きしめられながら、ホイップは困った顔をする。
「して……ホイップ殿の後ろに居る有象無象の輩はなんだ?」
 ホイップを放すと、男性は後ろにいたホイップが招待した人達に向かってそう吐き捨てた。
「みんな私の友達だよ! 良いよ……ね?」
「ホイップ殿が言うなら良いだろう」
 ホイップはほっと胸をなでおろす。
「皆、この人はここの温泉の精霊で秘湯 鄙(ヒトウ ヒナ)さん」
 紹介するとお世話になる皆、頭を下げた。
「うむ。ここの温泉は女王の保養地である。おかしな行動は慎むようにな。……丁度良い、現在温泉が埋まってしまって困っていたのだ。掘り出してもらおうか。――って、貴様ら何を持ってきているー!」
 いきなり叫んだかと思ったら、ある特定の人へと向かっていった。
「何でーーっ!?」
 最初の犠牲者エル・ウィンド(える・うぃんど)が投げ飛ばされた。
 どうやら武器を持ってきた人を狙っているようだ。
「エリザベートーーーっ!」
 桐生 円(きりゅう・まどか)は何故か本人の代わりにお風呂用のひよこが投げられた。
「お風呂に入る時はちゃんと外しますよ!?」
「持ってくること自体不届きなり!」
 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)の抗議も空しく、吹っ飛ばされた。
「のんびりしにきただけなのに!」
「なら、武器は外してこんかーーっ!」
 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は猛ダッシュで逃げたが、逃げられなかった。
「むっ? モップは武器ではない! 掃除用具だ!」
 広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は攻撃を免れた。
「ハッピー☆ウィッチの象徴を置いて来るなんて出来ないよ!」
「ハッピー☆ナイトのシンボル……らしいです」
「知らんわ!」
 ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)の言葉は届かなかった。
 見事に輝くお星様となった。
「私もッスか!?」
 そのままの勢いで広瀬 刹那(ひろせ・せつな)も吹っ飛ばされた。
「本はヨシ! だが、剣は――」
 茅野 菫(ちの・すみれ)は免れたが、パートナーの相馬 小次郎(そうま・こじろう)はダメだった。
「剣士の剣を愚弄するとは……祟るぞ」
「祟りなど、怖くはないわーっ!」
 綺麗に放物線を描き、地面へとダイブする羽目になった。
「なんだか目立ってる!?」
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
 美羽とベアトリーチェは仲良く一緒に投げ飛ばされた。
「癒しはどこに――」
「俺の前には何人たりとも――げふんっ!」
 比島 真紀(ひしま・まき)を右手に、サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)を左手に持ち、空へと投げた。
「書はヨシ!」
 そう叫ぶと、次へと向かっていった。
 和原 樹(なぎはら・いつき)フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)ショコラッテ・ブラウニー(しょこらって・ぶらうにー)セーフェル・ラジエール(せーふぇる・らじえーる)はお星様になるのを避けられた。
「目立つことは別に嬉しくはないんだけど……無視されるのも少しさびしいような……」
「我が可愛がってやる。そんなことに気をもむな」
 樹の言葉にフォルクスはお尻にタッチしながら返した。
 そのまま樹に無言で光術を使われ、フォルクスは可哀相な感じになってしまった。
「あわあわ……こ、これは温泉を掘りだすのに、つ、使うんだよっ?」
 琳 鳳明(りん・ほうめい)は自分の持っているパイルバンカーを指して言った。
 あまりの事に言葉がどもってしまっている。
「ならばヨシ!」
 それを素直に認め、鄙は鳳明を攻撃対象者から外した。
「あーれーーーーっ!」
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)は嬉しげに投げ飛ばされた。
「ルーシーは武器を持ってて良いに決まってるでしょう!」
「そんな我儘は通さぬわーーーっ!」
 リュシエンヌはあえなく撃沈した。
「たーまやー、って言ってる場合じゃないな」
「たまやってどういう意味ですかーーーっ!」
 薙刀を持っていた香住 火藍(かすみ・からん)は上に放りあげられながら、久途 侘助(くず・わびすけ)の口にした言葉の意味を聞いていた。
 侘助は火藍の落下地点で受け止めようと動いたが、間に合わなかったようだ。
「これも温泉に入る為に通らなきゃいけない道なのかい!?」
「違うからっ!」
 アルフレッド・テイラー(あるふれっど・ていらー)の言葉に突っ込みを入れながら、一緒に飛ばされてしまったのはミレーヌ・ハーバート(みれーぬ・はーばーと)だ。
 その様子をほほえましく見ているシルヴィア・テイラー(しるう゛ぃあ・ていらー)も一緒に上空へ飛ばされている。
「出番だよ……蹴散らせ、ノウマン」
「……」
 鄙からの攻撃を防ごうと繭住 真由歌(まゆずみ・まゆか)は自分を掌に乗せているノートリアス ノウマン(のーとりあす・のうまん)(全長3メートル)に迎撃態勢を取らせたが、それも空しく簡単にノウマンごと吹っ飛ばされてしまった。
 こうして、武器を持ってきてしまった人達のお仕置きは完了した。
 今回ホイップが『そうだ、今回は戦闘はないから武器は置いて来るように皆に伝えなきゃ!』と言っていた意味を体で理解させられたのだった。
 お仕置きが終われば、もう武器を持ってきた事を問わず、旅館の中へと皆を案内したのだった。
「……過激ですね」
「うん……昔からそうなの」
 宿屋の青年主人グラン・リージュの言葉にホイップは苦笑いで言ったのだった。

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 旅館の中の廊下を歩いて行く。
 中は綺麗に掃除されており、板の廊下に自分の顔が映る。
「すまないが、ここに調理場はあるか?」
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は前を歩いていた鄙に駆け寄った。
「ある。使うのなら……そこを折れて突き当たりの右がそうだ」
「ありがとう!」
「お借りしますわ」
 クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)がお礼を言い、エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)が会釈して、涼介の後を追う。
 温泉へと向かうメンバーはそのまま鄙に案内されていく。
 料理をしようと考えていた人達は教えてもらった場所へと足を向けた。
「私は近くで材料を集めてくるッス!」
 刹那はファイリア達にそう言うと、走って外へと向かって行った。
 見送ってからファイリア達3人は調理場へと歩いて行く。
「私達もがんばって美味しいものを作ります!」
 メイベル達も調理場へと向かったのだった。