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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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第10章
オークスバレー


 序章(前回)において、パラ実、それに呼応する黒羊軍、南部諸国の一国(ドレナダ国)の攻撃を受けて、陥落したオークスバレー。
 これは、様々な波紋を呼び起こした。
 ――状況を見てみよう。
 オークスバレーにある砦や村落は敵の占領下に置かれ、唯一東端にあるプリモ温泉が持ちこたえ難民キャンプと化していた。ここは宇喜多 直家(うきた・なおいえ)(プリモ温泉女将のプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)LC)が守っていたが、敵の攻囲を受け、風前の灯である。他、鉱山も敵の手に落ち、鉱山開発に着手していたアンジェラ・クリューガー(あんじぇら・くりゅーがー)(本営代表・戦部小次郎LC)や鉱山守備にあたっていた秦 良玉(しん・りょうぎょく)(軍師候補・沙鈴LC)等が囚われたとなった。この地における指揮官ソフソ(そふそ)ゾルバルゲラ(ぞるばるげら)や守護神のシャンバラン(しゃんばらん)はいずれも激しい戦いの末に行方不明となってしまっている。
 更に……オークスバレーを発って三日月湖へ向かっていた大規模な輸送隊も、おそらく敵の追撃を受け、そのまま何処へ逃れたのか、もしくは途中で壊滅させられたのか、行方が知れぬままとなっていた。輸送隊の護衛には、大岡 永谷(おおおか・とと)があたっていたのだが。


 また、余勢を駆って街道を上がってきた敵(南部諸国)の一隊と、街道に展開する【ノイエ・シュテルン】のうちゴットリープ隊が接触。彼の隊は事が起こったとき最もオークスバレーの近くにあった。小規模な戦いになり、ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)はこれをひとまず退けた。三日月湖や谷間の方面からの隊の到着を待つ間に、彼は兵を同僚の水原ゆかりに預けると、自らはパートナーのレナ・ブランド(れな・ぶらんど)と共に、敵地となったオークスバレーへの潜入を試みたのである。状況がまったく見えないでは、動きようがない。


10-01 ノイエ、峡谷へ

「水原さん。お久しぶりね」
「香取さん。ええ、そうね少しお久しぶりですね」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)。教導団に入る前には普通の大学生であったが、知人が教導団への入学願書を取り寄せたので便乗して試験を受けたところ合格。法学部に在籍していた関係で、憲兵科に所属した(水原ゆかり伝より)。尚、上記の知人というのが香取翔子であるとの言い伝えもあり、友人の仲である。一見大人しめであまり自己主張するタイプではないが、ノイエ・シュテルンの一員として活躍する。
 ともあれ、ゴットリープ隊を預かり街道にて待機していた水原のところへ、香取 翔子(かとり・しょうこ)が兵600を率いて駆けつけた。自らの100と、共に谷間の宿場にあったマーゼン兵の100、更に本陣のクレーメックの200、同じく戦部から借り受けた200である。(※戦部の200は今回のターンで送られ実際には少し遅れて合流になる。また、同じく本陣のもう一人クレア・シュミットもこちらへ兵100を送る。なので、遅れて合流する分300をクレア旗下エイミーが連れてきた形になる。尚、前回において香取と谷間まで向かったノイエ・シュテルン隊長のクレーメックは本営にてオークスバレー方面への指示を出していることになり、実際の部隊の指揮は香取が執る。同じく、谷間にあったマーゼンは、兵を香取に預け、彼は別章において登場することになる。)
 香取の隊には、この男の姿もあった。
「そうか、オークスバレーをパラ実がなぁ。
 国頭の野郎、なかなかやるじゃねえか。面白くなってきたぜ!」
 ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)である。
「それで、ゴットリープはすでにオークスバレーに潜入した、と。なかなか度胸あるわね。
 彼に連絡つながるかしら……?」
 香取は、さいわいゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)と連絡が通じると状況を聞き、同僚らとオークスバレーへの進撃を相談することになるが、ゴットリープにはそのままそこでかくかくしかじかの秘策を試みるように指示を出しておいた。
「え……。……。……。……マジですか??」
「ええ。ジーベックでもきっとそう言うわ」
「そ、そんなぁ〜〜」
「つべこべ言わないのよ。オークスバレー奪回がかかっているんだから。これが成功すれば、ノイエで最も有名な人物になれるのじゃない?」
「…………。……はい」
 レナ・ブランド(れな・ぶらんど)は隣で、「面白そうじゃない」とにっこり微笑んだ。
 ゴットリープ、「…………」
「さて、」場面は香取らのところへ戻って、「では私達の方も……」
 香取はまず、クレーメック兵の100を付けさせ、ゴットリープ兵の100と合わせた水原隊200には、街道で消息を絶った大岡永谷ら輸送隊の捜索と救助にあたらせることとした。
「水原さん、よろしく頼むわね」「香取さん、任せて」
 香取は、ジェイコブと残りの兵を率い、オークスバレーを奪回せんと進撃したのだが……
「はっ。……橋が焼き落とされている」
「国頭の野郎、なかなかやるじゃねえか!」
「敵も、すぐに三日月湖へ攻めてくるつもりはないわけ? それとも別ルートから?
 何か策があるのかしら……
 ともあれ、これでは部隊を渡せない。橋の修復を行うわ」
「なら、オレの方は予定通り少数の部下を連れ、隠密行動に移るとするかな?」
「ええ、お願い」
「香取、大丈夫か?」
「ジェイコブこそ、気を付けて。事を焦り過ぎないようにね」
 こうして香取は橋の修復に取りかかった。ジェイコブは少数の部下を従え、川を渡った。



10-02 国頭の峡谷支配

 パラ実本拠となった南西分校では国頭 武尊(くにがみ・たける)が行動を開始している。
 まず国頭は恐るべきことをしでかした。
 旧オークスバレー及び南西分校に残されている教導生徒や教員達の私物を掻き集め処分し、換金。これによって当面の軍資金を確保したのである。中でも女生徒や女教師の私物は顔写真入りでオークションに出品され、高値で買い取られた。
 (ジェイコブ、「国頭の野郎、なかなかやるじゃねえか!
  ところで、オレ達の本拠地でもあるオークスバレーには、香取のあれとかああいうものとかも残されていたのでは」
  香取、「……国頭。絶対に許さない」
  「…………(コワイな)」
  こうして(下は)月島?から(上は)御茶ノ水まで、騎凛先生やおっぱい先生やプリモ女将からマリー・ランカスター将軍のものに至るまで、オークションに出回ったという。これは、蒼フロにおける伝説的な事件となった。)
「こまけぇこたぁいいんだよ!
 ともかく、これで当面資金には困らない。さて、次は子分どもに知人友人を勧誘させ、更なる兵力増強を図るか。
 反教導の立場の者であれば、出自を問わず、受け入れるんだ!」
 ヒラニプラ南部の入口が、不良のたまり場と化しつつあった。
 国頭のもとへは、オークスバレーから諸々の戦況・戦果の報告が届けられた。
「ふむぅ。温泉に鉱山に……色々と指示を返さねばならないな」
 司令官・国頭の誕生だ。
 国頭は、オークスバレーに出兵している又吉や、温泉の敵将、奪回に向かいつつある教導の部隊にと、使者を送った。



 オークスバレーの一砦。
「又吉様!」
「おう、武尊からの指示が来たか。何々……
 教導の攻撃を暫く凌げば、連中は継戦能力を失うって」
 胡散臭げなこと言ってきやがったが、ここはあいつを信じて踏ん張ってやっか。猫井 又吉(ねこい・またきち)は、そう呟き、木刀を肩にかけて砦の下を眺めた。
「ふふぅ。いい眺めじゃねえか。……そうだ」
 それから間もなく、オークスバレーの砦群には、゛鬼魔狗野獣会゛゛猫まっ゛゛なめ゛等の旗がはためいた。
 峡谷の歴史において、「フォルク・レーテ要塞」は一時的に「風雲又吉城」と改称されたのである。
「おら、今から捕虜んとこへ向かうぞ!」
 又吉は手勢を率い、鉱山へ赴いた。



 鉱山。
 本営代表・戦部小次郎のパートナーの一人であるアンジェラ・クリューガー(あんじぇら・くりゅーがー)が囚われている。
「ならぬ堪忍、するが堪忍。……まさか自分にその状況が訪れるとは、ね」

「舐めんじゃねーぞ。この野郎!!」
 脱走を図った秦良玉(しん・りょうぎょく)は捕まえられ、又吉のところへ引き立てられた。
 びしっ。木刀で地面を打つ又吉。
「逃げられると思ってるのかい。
 いいか、よく聴けや。武尊からの言伝だ、聞き逃すんじゃねえぞ!」
 アンジェラと良玉は正座させられ拝聴した。
「残念だな。捕虜ども」と言い、眉間にしわ寄せ眉を下げる又吉。「あんたらには教導から解放交渉の使者は来なかったようだぁ?」
 がっくり……。肩を落とす、アンジェラ、良玉。
「そこで、武尊の言うことに従い今後を決めさせる。
 転校を希望する者は受け入れ、原隊復帰を望む者は解放」
「え、解放してもらえる……?」
「ただし、装備は没収だ!
 出てっていいぞ。ふふ、裸に剥かれたおまえらを、パラ実どもがほうっておくかな……?」
「ま、待って」アンジェラは、又吉に希望を述べる。
「その……わかったわ。転校まではしないけれど一時的に、パラ実のもとで働いてあげるわよ」
「ほう、俺らに何してくれるってんだ? 奉仕か?」
「え、ええ……鉱山採掘に働くわ。いいものが見つけてあげられるかもしれないでしょう?」
「そうか。
 あれ、じゃあ身包み剥ぐのはこっちの……ババァだけかよ!」
「し、失礼じゃのう!」(74歳)
「ええい。いい、いい、早くもう出てけや」
 良玉はパラ実絶対に許すまじと心に誓いを立て、鉱山を出て行った。



 プリモ温泉。
 【プリモ温泉守将】の宇喜多 直家(うきた・なおいえ)は、籠城戦の構えを取っていた。
 宇喜多は温泉にディフェンスシフトを張って敵への防備を強化し、ファイアプロテクトで火攻めを防いでいた。
「おお、プリモ温泉……」
 それを、峡谷入りしたジェイコブが遠目に見る。
「攻囲しているのは……黒羊旗か」
 ここには、パラ実の支配は及んでいないのか? 国頭の温泉への思いは後に語られることになる。
「城内に入ることはできそうもないな。とにかく、香取隊の到着まで持ち堪えてくれよな。もうすぐだぜ」
 ジェイコブはそう言うと、少数の兵達と、オークスバレーの中心に向かい木々の合い間を抜け入り込んでいった。