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リアクション
赫夜は佑也が制服の一部を切り裂き、巻いてくれた手の傷の痛みを抑えながら、星双頭剣を手にすると、じっとそれを見つめる。そして無言のままで、ケセアレと目を合わせた。
「…ケセアレ、お前は…私と同じなのだな」
赫夜の言葉にケセアレはにやり、と笑う。
「無駄口を叩くな。私の気が変わらぬうちにやるがいい」
赫夜はケセアレの言葉に無言で、星双頭剣を手を広げたケセアレの体目掛けて突っ走り、突き立てる。じゅぶっと肉の切れる音がして、星双頭剣はケセアレの体を表から裏へと貫いた。
その瞬間、噴き出す血潮。目を見開くケセアレ。そしてケセアレの血を体中に浴びる赫夜。
「ケセアレ様ァー!!」
ミケロットの悲痛な声が王座の間に響き渡る。
「早くしろ、赫夜! …清符を!」
ごぶごぶと血を吐きながら、ケセアレが告げると赫夜は震える手で清符を取り出す。青く光る清符は血に反応しているのか、激しく脈を打って光を放っていた。それを奪い取ると、ケセアレは自分の左胸、心臓部分に当て、自分の血を吸わせると、血でしたたる清符を真珠の心臓の上にのせた。すると、清符は光り輝き、ふわっと一瞬百合の花の形状を取ったかと思うと、そのまま、真珠の体の中に吸い込まれて行ってしまう。
「う…うう…」
一瞬真珠の全身が輝いたかと思うと、その顔が歪み、青い瞳を開けた。
「真珠! 真珠!」
赫夜は真珠の体を強く抱き締める。
にゃん丸やリリィ、佑也や正悟も驚きを隠せない。
「わたし、どうなっていたの…?」
体を起こすと血まみれの白いドレスのまま、真珠は目の前に星双頭剣に貫かれ、倒れているケセアレを発見する。
「伯父様!! 伯父様!!」
叫ぶがケセアレはすでに虫の息だった。
真珠の脳裏には、ケセアレが行ったことが血と清符と共に記憶に残っている。
「伯父様、私のために…!!」
「…真珠、もう、言うな」
「ケセアレ様、私もお伴します!」
ミケロットはシャープシューターをこめかみに当てるが、真人がバーストダッシュで間合いを詰め、その二丁あるシャープシューターを叩き落としてしまう。
「貴方達が死んでも、真珠もケセアレも悲しむのではありませんか?」
羽入 勇(はにゅう・いさみ)もケセアレと命運を共にしようとするミケロットを連れ出そうとする。
「ミケロットさん! 死んでは駄目です! 真珠さんのためにも、ルクレツィアさんの為にも、そしてケセアレさんのためにも生きて!」
「…いけ、ミケロット。死んではならん…私の代わりに、そしてルクレツィアの代わりに生き続けろ」
と促すケセアレ。
「ケセアレ様! いやです! 私はケセアレ様とルクレツィア様と一緒に…」
「…生きろ、ミケロット! 命が尽きるまで、生きろ! これは命令だ!」
政敏とリーンもミケロットを連れ出す手伝いをする。
「ケセアレ様!!」
涙混じりのミケロットの声が響き渡る。
「真珠…お前達も行け…。…だが赫夜、この…星双頭剣は、私が貰っていくぞ…」
「ケセアレ…」
赫夜は何も言えない。
「さあ、行こう!」
にゃん丸は真珠を抱えると『王座の間』を飛び出して行く。
「伯父様、伯父様…」
赫夜も佑也たちに連れられ、駆け出す。
トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は落ちてきた瓦礫から真珠や赫夜、にゃん丸などが巻き込まれそうになるのを、スキル・バーストダッシュで素早く助け出しながら、
「ぼやぼやするな…行け!」
と促した。
「伯父様…!」
「真珠、早く!」
最後にそれでもケセアレのことが気になった陽太が
「あなたは寂しかったのではないのですか?」とケセアレに問うた。
トライブも
「言い残す事があれば、聞いておくぜ?」
「…孤独でない、王者がいるものか」
ケセアレは呟き始める。
「…その孤独を癒してくれたのがルクレツィアだ。…そしてヴァレンティノ家の血の唯一の継承者が真珠だ。笑うがいい。我々の血は絶やしてはならないものだ。だが、それ以前に、私は…ルクレツィアに恋をしてしまった。実の妹にだ。他の女を抱いてもひとときの愉楽も感じなかった。…おろかな私を笑うなら笑うがいい。だが、それが真実だ」
陽太はかっと血を吐くケセアレに
「それでも、俺は、あなたの愛が真実だった、そんな気がします」
勇気を振り絞って語る。
トライブも
「あんたは筋を通したんだな…自分の命を真珠に与えて…」
「当然だ。愛する者のためなら、…命など要らぬ。それがルクレツィアであろうと、…真珠であろうと、私の愛した者たちだ」
そういい、
「お前たちも、ここから早々に去るがいい。…もうこの島は落ちる…そして、私は誰の情けも受けぬ」
と言うと瓦礫が落ちてくる。
陽太を抱えて逃げ出すトライブ。
「わ!」
「もう、やばいぜ、ここは。…まあ、あんたの小型飛行艇まで送ってやるよ」
トライブは陽太に告げると、その場を離れた。
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