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決戦 天沼矛!

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決戦 天沼矛!

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06:イコン奪取

「やあ、お嬢ちゃん。オタク鹵獲したイコンの整備やってるんだろ? ちょっと聞かせてくれよ」
 そう女性整備士に声をかけたのは桐生 景勝(きりゅう・かげかつ)。ボサボサの茶髪に黒い瞳、バカっぽくて頼りない少年だ。そんな景勝の言葉だから整備士も抵抗なく答える。
「なあに?」
「寺院のイコンに鹵獲対策の罠とかついていないかとかキーがなくても起動することが出来るのかとか聞きたいんだよね」
「鹵獲対策についての罠はなかったわね。現に開放祭でも動いたし。プロテクトはなんとかハッキングできたし」
「じゃあ、寺院のイコンのプロテクト解除ツールを10個ほどいただけると助かるんですがね」
「了解」
 整備士はパソコンを起動すると銃型HC10個に。ハッキングツールをコピーした。
「さんきゅー。感謝するよお嬢ちゃん。帰ってきたら食事でもどう?」
「あいにくと食事する相手は決まっているの。それより、死なないように帰ってきなさいよね。そのほうがあたしにとっては嬉しいわ」
「ラジャー。帰ってくるよ、ベイビー」
「いってらっしゃい、坊や」
 そして景勝は一枚上手の整備員を相手に、敵イコン奪取に向けて駆けていったのだった。

 天城 一輝(あまぎ・いっき)はヴァンガード隊の遊撃隊隊員で小型飛空艇乗りで、ショートの黒髪に茶色の瞳、精悍で真面目そうな少年である。
 一輝は、小型飛空艇に乗り、上空から戦局を一望し、敵の待ち伏せを警戒しながらイコン奪取組を敵イコンまで誘導する役割を背負っていた。
 <銃型HC>を使い、実際に天御柱学院の生徒を侵入したイコンまで導くユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)と連絡を取り合っていた。
「問題は待ち伏せだ。敵イコンが乗り捨てられているなんて、どう考えても出来すぎだから、奪取しに来た人を返り討ちに会わせようと待ち伏せしていると考えるのが普通だ」
 一輝はそうプッロに連絡を入れると<デジタルビデオカメラ>で待ち伏せの状況を映し、そのデーターを<銃型HC>を介してプッロに送っていた。今のところ人影は見えないが油断はできない。
 金のショートウェーブに青い瞳、精悍で強そうなプッロに導かれて、【ヤンキー小隊】と【ズール小隊】の面々は進む。
 敵イコン奪取を行うということは敵の侵入経路を逆に進むわけで、敵との交戦は避けられない。そこで一行は換気ダクトの中を進んでいた。
「ろくりんピックに行くために天沼矛に乗っていたのですが運悪く巻き込まれてしまいましたわ」
 長い赤髪と茶色の瞳を持ち、育ちがよさそうな美少女オリガ・カラーシュニコフ(おりが・からーしゅにこふ)が、ダクトの中を進みながらぼやく。
「私たちも奇襲に参加して手数を増やすわよ、オリガ」
「当然ですわ」
 エカチェリーナ・アレクセーエヴナ(えかちぇりーな・あれくせーえうな)は薄茶色のロングウェーブと茶色の瞳を持ち、妖艶で色っぽいロマノフ朝女帝の英霊だ。豊かな肢体をパイロットスーツに包みこみ、換気ダクト内を進む。
 一輝は手榴弾を内部に転がしてみる。
 爆発が起こるが人の現れる気配はない。
「人がいないのか? 何たる間抜けな」
 一輝はそうつぶやくとプッロに突入合図を送った。
「みなさん、今ですよ」
 プッロの言葉に従い【ヤンキー小隊】と【ズール小隊】が換気ダクトから飛び降りる。
 警戒していた人影はない。
「さて、私はシュメッターリングをいただきますよ。TACネームは【ポーラスター】で行きます」
 そう言ったのは葛葉 杏(くずのは・あん)。ロングの黒髪に同じ色の瞳清潔な美少女である。
「それでは行きましょう」
 三編お下げの黒髪に同じ色の瞳、地味で胸が大きくメガネをかけている橘 早苗(たちばな・さなえ)がそうつぶやいた。
「私のコールサインは【ズール3】機体はシュメッターリング。TACネームは【イルマ】 ってTACネームがまた……デビットのヤツ……失礼だし不謹慎だろ」
 笹井 昇(ささい・のぼる)は黒髪をオールバックにして同じ色の瞳を持ち、育ちがよさそうで真面目そうな少年だ。
「昇さん、TACネームのイルマってどんな女性なんですか?」
「くっ……」
 景勝のパートナーリンドセイ・ニーバー(りんどせい・にーばー)が悪意のない質問をしてくる。
「うっ……、そ、それは」
 それだけに昇も答えにくい。
 ちなみにリンドセイには青の前髪ぱっつんロングに、金色の瞳で厳しそうと、詰め寄られるとたじたじになってしまいしそうな外見である
「きっと素敵な方なんですねー」
「はい……」
「いーなー、私もそんな風に思われたい。ちなみに私と景勝はシュヴァルツ・フリーゲで【ズール1】TACネームは【クサナギ】です」
「ま、イルマはカワイコちゃんさ。よろしくな、リンドセイちゃん」
 赤髪をポニーテールにし、白い瞳を持つ顔立ちが端正なデビット・オブライエン(でびっと・おぶらいえん)がそういうと
「作戦ではよろしくお願いします。私生活ではよろしくしたくありません」
 とすげなくふられた。
「あはは榊 孝明(さかき・たかあき)、だ。シュメッターリングでコールサインは【ズール2】。TACネームは【ムラクモ】だ」
 孝明は黒のショートヘアに青い瞳、清潔で知的な印象を受ける青年だ。
「…………益田 椿(ますだ・つばき)。出撃前に女の子の話とか余裕ね……孝明にもそのくらい余裕があれば良いのに。」
 椿は黒髪を後ろで束ね赤い色の瞳を持ちバカっぽくて胸が大きい少女である。孝明以外の一切を拒絶するオーラを放っている。
「景勝ちゃんだよん。リンドセイにお株を奪われちゃったけど、取り敢えずイコン用のハッキングツールだ。これで動かなきゃ別の方法を考えよう」
 そう言って景勝は銃型HCを配っていく。そして次々と乗り込んでいくメンバーたち。
「それじゃあ端守 秋穂(はなもり・あいお)。【ヤンキー2】、【ブラックオニキス】。シュメッターリング、出ます」
 電子音が響く。秋穂は黒い髪をツインテールにして茶色い瞳をもち童顔ではかなげな美少女にしか見えない美少年である。
「天御柱のイコンと大差ないな……これなら、行ける!」
「いきなり奇襲って……刻まれたいのかなー? 絶対、撃退してやるー!」
 金髪のポニーテールに赤い瞳子供っぽくて目つきの悪いユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)がそう叫ぶ。
「【ヤンキー1】【クラースナヤ】、シュメッターリングで出る!」
 オリガが出撃する。
「【ヤンキー3】十七夜 リオ(かなき・りお)【クレーエ】出るよ!」
 飛翔音。シュメッターリングが遠ざかっていく。
 リオはロングの焦茶色の髪で目つきがわるくて胸が大きい少女だ。
「鏖殺の周波数はデフォルトか……チャンネルは覚えておくとして……」
「ビンゴだよ」
 一本三編の銀髪と青い瞳、痩身な美少女のフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)が寺院の周波数を調べてメモする。そして天御柱の周波数に合わせると、<寺院側イコン奪取成功>、<寺院側の通信周波数>、<寺院側の通信内容>、<【ヤンキー】【ズール】小隊の現在位置>を報告した。
「使われてない機体があるな、よし、こいつからマシンガンを……ん? あんたが乗る? しょうが無いな。さっさといけ あんたら【ヤンキー5】と【ズール5】な」
 天御柱の生徒が頷くのを見ると
「【ヤンキー4】葉月 エリィ(はづき・えりぃ)、【ダーククリムゾン】でるよ!」
 重力に逆らうツンツン頭で銀髪の、赤い瞳を持つ目つきがわるくてかっこいいエリィは発進した。
「あんな鉄の塊じゃ血も吸えませんわね」
 エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)は黒のセミロングと金色の瞳を持つ美形で色っぽい吸血鬼である。
「西の防御が薄いですね西の防衛に回りましょう」
 リオがそう言うとヤンキー・ズールの面々は従った。


「こちら【ホークアイ】。接敵まであと1分……なに、新手だと?」
 それはもちろんズール小隊とヤンキー小隊なのだが、奇襲のために敵味方識別信号を切り替えていないので敵と認識されたままである。
「バーニア急噴射。こちらの敵を先に倒して新手に備える」
 御空の指示に従って各機はバルカンの射程まで急接近する。
 シフとカノンは敵の弾幕を区切り抜けるとビームサーベルとビームライフルで敵の腕を破壊した。
 当然、敵はすぐさま距離を取ってくるのでこちらも距離をとって敵の攻撃に備える。
 と、そこへ新手がやってきた。
「【チャーリー小隊】の面々が絶望に捕らえかけられていたとその時、敵味方識別信号が味方へと変わって、敵は二個小隊のシュメッターリングとシュヴァルツ・フリーゲのマシンガンの集中射撃を浴びた。
「うわあ! ママ! ママ!」
 鏖殺寺院のパイロット――おそらくまだ幼い子供だろう――の叫び声がスピーカーを通してオリガの耳朶を叩く。
 全ての音が遠くで鳴っているように聞こえる。
 落ちていく敵機を呆然と見下ろす。
 世界がゆっくりと動いているようだった。
 手が震えてグリップを掴めない。
「私、人を……いや……!」
「何呆けてるの! 戦闘中よ!」
 エカチェリーナが後部座席からオリガに蹴りを入れる。
 首を横に振って、グリップを握り締める。
 手の震えを抑えるために、手の甲に強く噛み付く。
 しかしオリガはコクピットを狙えなくなっていた。
 足元ばかりを狙う。
「こちら【デルタ小隊】と【アルファ小隊】援護する」
「こちら【ズール1】了解。【ヤンキー1】これは戦争だぜ。何をためらう必要がある」
「でも、でも……あー、仕方がない。【チャーリー小隊】、敵を威圧射撃!」
 景勝の言葉のとおりに【アルファ小隊】は行動し、【ヤンキー】と【ズール】の面々は後背部に周りブースターを狙い打つ。
 大爆発。
「うわあああああああああああああああああああ」
 鏖殺寺院のパイロットの悲鳴が響く。
 オリガは耳をふさぐ。
 が、突然聞こえなくなった。敵が全滅したのだ。こうしてオリガは一人罪悪感に苛まれたまま勝利に湧き上がる仲間の中で、薄暗がりで膝を抱えていた。
 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は光る箒に乗って<光学迷彩>と<隠形の術>を使用していた。しかし効果が及ぶのは本人のみで箒が光るので敵にその存在はバレバレだった。
「ええい、鬱陶しい」
 寺院のイコンのパイロットはそう叫ぶと頭部バルカンを乱射する。バルカンの弾は直撃こそしなかったもののそばを通り過ぎた時の風圧でバランスを崩して箒から落下する。
「ちっ……」
 舌打ちしながらも姿勢を整えて落水時の衝撃に備える。
 そして彼は敵を撃破したあとのイコンに拾われるまで海の上に浮かんでいることになった。