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黒毛猪の極上カレー

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黒毛猪の極上カレー

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第一章 極上肉と魔王

「す、すごい人数が集まったわね……みんな、そんなに暇なのかしら?」
 来栖 綴(くるす つづり)は、イルミンスールの森に集まった生徒達を見て衝撃を受けていた。
「来栖ちゃん。みんな、せっかく集まってくれたんだから、そんなことを言っちゃダメだろう? でも……予想以上に集まってくれたのは、たしかかな」
 綴をたしなめた『カリー大和田』の店長――大和田だったが、本当のところは彼も驚いていた。
 綴に黒毛猪のカレーを食べさせるため、生徒達に協力を依頼してみた大和田の予想では……せいぜい、十人程度集まるか集まらないかだろうと思っていた。何せ、幽霊少女のワガママに付き合うのだ。物好きでも集まりそうにない。
 だが――実際に集まった生徒の数は、大和田の予想を大きく上回っていた。彼は、そんな生徒達に感謝の気持ちでいっぱいだった。
 綴も言葉にこそ出さないが、生徒達に感謝していた。
「みんな! 本当に、今回のカレー作りに参加してくれてありがとう!」
 大和田の声に、集まった生徒達から地鳴りのような歓声が上がり、イルミンスールの森の木々たちが震える。
 ある生徒はこれから始まる黒毛猪との戦いに気持ちを昂ぶらせ、またある生徒は未知の食材を調理できるという事で血が滾っていた。
 ここに集まった生徒全員が、それぞれの目的とそれぞれの戦いに興奮していた。
「さっそくだけど、今回の依頼の内容を説明させてくれ!」
 大和田により、黒毛猪についての説明が始まる。
 
「コレだけの人数がカレーを食べるとなったら、いくら黒毛猪が巨大でも二頭ぶんの肉が必要になるはずだ。狩り班は森に入って、黒毛猪を二頭狩って来てくれ」
 大和田の説明を受けて、黒毛猪を狩る予定の生徒達が気合を入れる。
「狩り班が出かけている間に、僕たち調理班は準備を整えておこう。食材の調達から、食器の準備まで。やることはたくさんある。狩り班が帰ってきたら、すぐに調理できる環境を作っておくんだ」
 調理を担当する予定の生徒達も、気合は充分のようだ。
「あんた達、私を成仏させるほどの絶品カレーを必ず作りなさい!」
「く、来栖ちゃん! せっかく、みんなが君のために頑張ってくれるんだから、そんなこと言っちゃダメじゃないか……」
 不遜な態度の綴を、大和田が慌てて制す。
 だが――逆に生徒達は、綴のその態度に鼓舞されたようだ。
『絶対に黒毛猪を狩って、絶品カレーを作ってやる』
 生徒達の間に、強い連帯感が生まれた。
 そして……この瞬間こそが、シャンバラのカレー史に残る激動の一日の始まりとなったのだった。