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Deceive Game

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Deceive Game

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第1章 昨日の友は今日の敵・・・騙し合いゲーム

 とあるゲームが空京のビルの中で開催されると聞き、各学園の生徒たちが集まってきた。
 その名も人を騙し勝ち残るDeceive Game。
 賞金が出ると聞きつけてやってきた者がいれば、それを阻止しようとする者もいるようだ。
 参加者たちはダイスを振りそれぞれ女神のロケットペンダント、邪心のロケットペンダントを運営に渡された。
 最後に笑うのは正直な者か、それとも多くの人々を騙した者が勝ち残るのか、はたまた実力行使の者が勝ち残るのか。
 それは勝利の女神のみぞ知る。



「邪神のペンダントの所持者が建物内に隠したり、壁に掛けたりして一時的に手放してもいいのかな?それとペンダントに自分のものだと分かる目印をつけてもいいかな?たとえば少しだけ傷つけるとか、紐を結ぶとかさ」
 ロケットペンダントを受け取った椎名 真(しいな・まこと)が運営に聞く。
「そのように扱っていただいても構いません。備品ですので本来は傷をつけるのはご遠慮願いたいですけど、何か策があるのであれば」
「ありがとう。(何か変な笑い方されたなぁ)」
 許可してくれた運営の人間に苦笑された意味を、この時まだ彼は知らない。
 後に生き残りが厳しくなろうとは露ほどにも思わなかったからだ。
「あっ、蜃気楼都市で遊んでくれたお兄さんもいる!」
 真も参加しているのに気づいたニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)が嬉しそうにはしゃぐ。
「また鬼ごっこ出来たら嬉しいけど、今日は違うゲームなんだよね」
「おいニコ、ちょっと耳を貸せ」
「何?耳は千切って貸せないよ」
 ナイン・ブラック(ないん・ぶらっく)につんつんと肩をつっつかれて振り返る。
「そういうボケは後にしろ。今から言う俺の案をよく聞け・・・」
「うんうん・・・」
 耳元で言う彼の提案に頷きながら聞く。
「いいか、ちゃんと言った通りにしろ」
「分かったよ。(それで上手くいくのかな?)」
 本当に作戦通りに成功するのか考え込む。
「皆、自分のペンダントに目印をつけておこうよ。取られても取り返すチャンスあるかもしれないし」
 ゲーム開始直後、真が生徒たちに呼びかける。
 借金苦に突き落とされるかもしれないこんな恐ろしい遊びを早く終わらせたい。
 誰もが賛同するかと思ったその時、1人の女子生徒がおかしそうにクスリと笑う。
「フンッ。目印なんかつけら奪いに来た相手にわかっちゃうじゃないの。バカ正直にそんなことするヤツいるかしら?」
 彼の言葉に月美 芽美(つきみ・めいみ)は鼻で笑い飛ばす。
「(そ、そんなことしている間に取られちゃいますよ!)」
「(やだやだぁあ、借金怖いよーっ)」
 冷笑する彼女の姿にオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)夕夜 御影(ゆうや・みかげ)は、その場でのんきに目印をつけてはすぐ奪われてしまうと危機感を察知し一目散に逃げる。
「たしかまこたんだよね?フフッ、話しに聞く以上に甘いね。世の中騙して得してなんぼの世界なのに♪」
 鈴倉 風華(すずくら・ふうか)はクスリと笑い、階段の方へ走っていく。
「ペンダントを僕と交換するんだよね?」
 生徒たちの目の前でニコはナインと交換する。
「ゲームは勝てばいいのよ、勝てばね。さっそくみのりちゃんのペンダントをいただこうかしら。透乃ちゃん、みのりちゃんのペンダントは女神よ」
 真とみのりのペンダントがまだ交換されていないのを知っている彼女は、霧雨 透乃(きりさめ・とうの)に教える。
「分かった!早く集めて秋の味覚をたーくさん食べたいもんね♪」
 捕まえて奪おうと綾女 みのり(あやめ・みのり)の傍へ寄る。
「この場じゃ呼びかけに応じてくれる余地はないようだね。逃げるよ、みのり!」
 力づくでペンダントを奪おうとする透乃たちから逃げようと、真はみのりの手を掴み必死に走る。
「痛い目に遭わないうちに、さっさとこっちに渡しなさい」
 芽美は透乃を抱え、獣が得物を狙うような神速の速さで間合いを詰める。
「(このままじゃ追いつかれる!)」
 焦りながらも真はペンダントの紐を丸めてみのりの手を握る。
「手の中に隠しても無駄よ」
 小さく笑い芽美は抱えている彼女を、みのりに向かって力いっぱい投げる。
 透乃は人間大砲のようにぶっ飛んでいく。
「ペンダントもーらい♪」
 ガシィイッ。
 真が渡したみのりの手の中にあるペンダントを鷲掴みひったくる。
「ふっふー。まずは1つゲットだね。―・・・え、えぇえ〜!?何で女神じゃないのー!」
 中身を見るとそれは女神ではなく邪神のペンダントだ。
 たしかみのりが女神のペンダントを持ってるはず。
 そう思っていた透乃は自分の目を思わず疑ってしまう。
 女神を奪われてしまうと思った真とみのりは、互いの手の中ですりかえたのだ。
「このペンダントは所持者に返却させていだきます」
 手の中にある彼から取ったそれを、運営にさっと回収されてしまった。
「あっ・・・もういない」
 回収されたペンダントはみのりに返され、はっと気づいた瞬間すでに運営はそこから去った後だ。
「すりかえたのね」
 見抜けなかった芽美は悔しそうに顔を顰める。
「うぅ・・・せっかく取れたと思ったのにー」
「大丈夫よ透乃ちゃん、2人で両方奪えば確実に女神を奪えるわ」
 彼女はしょんぼりとする透乃を慰め、真たちがいる方へ振り返る。
「あのー・・・もういませんよ」
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が遠慮がちに2人へ声をかける。
「―・・・えっ。ぁあ、逃げられたちゃったー!」
 透乃たちが話している数秒の隙をつき、真とみのりは別のフロアへ逃げてしまったのだ。
「まだそんなに遠くへ行ってないはずだよ、急いで探そうっ」
 慌てて彼女たちは彼らを探し始めた。



 ゲーム開始から数分後。
 真とみのりは机の下に隠れて透乃たちが通り過ぎるのを、息を殺してじっと待つ。
「まずいなぁ、ほとんどの生徒が殺気立っているよ」
 見つかっては今度こそ奪われてしまう。 
「はぁ・・・もう行ったみたい。もしみのりのペンダントが取れたりしたら500万Gの借金が加算されるのか・・・。そんなの何年かかっても返しきれないじゃないか」
 これでは子羊もいいところだとため息をつく。
「誰か呼びかけでペンダントに印しつけてくれたかな?あの場じゃ無理だったから、どこかで隠れてつけてくれているといいんだけど」
 みのりは自分のだと分かるように、目印変わりに真と交換したペンダントの紐を軽く結んでいる。
「(真さん、こういうの苦手そうだからボクが考えなくちゃ・・・)」
 心の中でそう呟き、真の方へ顔を向ける。
「ねぇ真さん。考えたんだけど女神のペンダントを誰かから取った人に、邪神の方を取らせるっていうのはどう?」
「それをどうするのかな」
「さっきみたいにボクと交換して、邪神のペンダントをわざと取らせるんだよ。取られた人に返してあげれば、借金を背負うことはないからね」
「でも、透乃さんたちにその手はバレているよ」
「他に邪神のペンダントを持っている人が協力してくれるといいんだけどね。壁に真さんと他の人のペンダントをかけて、ボクが持っている女神と勘違いさせて二者択一させるんだよ」
「みのり、よくそんなこと思い付くなぁ・・・どこまで上手くいくか・・・!」
 真は関心したように茶色の目を丸くする。
「どこかに信用できそうな人いないかな・・・」
 とはいったものの邪神のペンダントを渡されたほとんど生徒は協力なんて皆無だ。
 そんな状況の中、きっと協力出来そうな生徒がいるはずと思いながら、身を屈め階段を慎重に上っていく。
「この辺りで誰かの話し声が聞こえよね?」
 2階のフロアにやってきた東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)は周囲をキョロキョロと見回す。
「ウチもたしかに聞きましたよ!しかも男の声をっ」
 三次元男に勝利させてなるものかと奈月 真尋(なつき・まひろ)は殺気立ちながら探している。
「(私のペンダントを隠しておいたけど。まぁ誰かに見つからないとは思うけどね・・・。もし見つかったら・・・その時に考えよう)」
 中身を確認していない秋日子は、見つけられたらその時はその時だと思いつつ声の主を探す。
「あれは・・・2人とも邪神の方を持っている人だね」
 ダイスの出目でどちらになるか覚えている真が秋日子たちを物陰からじっと見る。
「協力してくれる気配は・・・なさそう」
 みのりはこそこそとオフィスの中を移動する。
「そこですねっ!?勝ち負けはどげんなってもいいですけんど、個人的に男の人が勝つっちゅうのは不愉快のなにもの以外でもねぇです!」
 カッと目を見開いた真尋が、ペタペタと床を這いながら逃げようとするみのりに気づき、碧血のカーマインの銃弾を撃ち鳴らす。
「ちっ、違うよ。誰かからとったやつじゃないって!」
「そーんなの信じると思ってんですか?」
「違うったら!」
「黙りなさいこの三次元男。ウチが片付けてやるってんですよ。撃つべし撃つべしっ!」
 ガウンガウンッ。
 オフィス内に銃声が響く。
「あわわっ!嘘じゃないのにーっ」
「逃がさねぇですよ」
「わーっ真尋ちゃん、ちょっと過激すぎるよ!」
「三次元男なんてとりあえず動けないようにしてやればえぇんです」
 流血沙汰になりそうだと騒ぐ秋日子の言葉を聞かず、真尋はみのり目掛けて発砲し続ける。
「真さん、目を閉じて!」
「え!?わ、分かった」
「きゃぁあ!何ですか、いきなり光が!!」
「前が見ないよーっ」
 みのりの光術で目晦ましをされた彼女たちは、思わず目を閉じてしまう。
「むぅー、よくもやってくれたですね。三次元男のくせに・・・ってあれ・・・。どこいったんですか!?」
「ありゃー逃げられちゃったね」
 秋日子は超感覚でみのりたちの匂いをたどろうと嗅ぐが、もうすでに近くにはおらず彼らはそのオフィスから離れてしまっている。
「ん、こっちにいるみたい!」
「逃がさねぇですっ」
 彼女の指差す方向へ真尋が走り、逃がすまいと追いかける。
「見つけたですよ」
 ドォンッ。
 みのりへ銃弾を一発撃つが、エレベーターの扉に兆弾した弾がコンッコロンと床へ転がり落ちる。
 彼に届く前に扉がガーーッと閉まってしまったのだ。
「上の階に行っちゃったね」
「階段で追いかけるですよっ」
 真尋は秋日子の腕を引っ張り、みのりたちを追って階段を駆け上がる。