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リアクション
第4章 最後に笑い最後に泣くのは誰か
「結構探しましたけど、見つからないものですわね。動き回っているからというのもあるでしょうけど」
ビルの中へ最後に入ってきたティアラクーナ・ルアシア(てぃあらくーな・るあしあ)は生徒たちを探し歩いている。
「あら、男子を2人見つけましたわ。交換されていると、どっちが女神か分かりませんわね・・・」
エレベーターに乗って9階に移動した真とみのりの姿を見つけ、どっちを倒すべきか考え込む。
「邪神を持っている生徒がこっちを見てるね。近寄ってこないけど、どう騙そうか考えているのかな」
真は何も仕掛けてこようとしない彼女を睨むように見据えて警戒する。
「当たればよしということで、強そうな方から戦ってみる方がよさそうですわね」
「(来た・・・っ)」
とっさに飛び退き、カルスノウトの刃を避ける。
「騙し合いじゃなく力づくで奪うんだね。他の生徒を借金苦に落としてまで、そんなに賞金が欲しいのかい!?」
「そうですわ、だって騙すのは趣味じゃないんですの。でも・・・あなたは1つ勘違いをなさっているわ」
「勘違い・・・?」
「女神を奪ってもわたくし、逃げも隠れもしませんわ。ですけどね、賞金には興味ありませんの」
バーストダッシュで真の懐へ飛び込み、柄で殴り飛ばす。
ズザザァアアッ。
床へ足を滑らせ何とか倒れずに済んだが、腹にくらった一撃で真は咳き込んでしまう。
「げほっごほ・・・。だったら・・・何で俺たちを狙う・・・・・・!?」
「わたくしが渡されたのは邪神ですし、たとえ奪われても借金なんて背負いませんもの。だからひたすら戦ってみることにしましたの」
「それだけの理由でこんなことを?」
「えぇそうですわよ」
ティアラクーナは当然のようにさらりと言い放つ。
「生徒たちが借金を背負わないようにするっていうことは考えなかったのかな・・・」
「賞金が手に入ったら考えますわ」
「2人助けられたとしても、他の3人はどうするつもりなんだい?」
「知りませんわ。集めても途中でどれが誰のか分からなくなるかもしれませんし」
「悪いけど俺たちは無駄に戦う気なんてないよ。―・・・みのり!」
真は傍にいるみのりに、光術でティアラクーナに目晦ましをくらわせようとする。
「わたしくしの視界を封じようというのですの?でも残念、それは出来ませんの」
フェルキアの試金石でみのりの光術を封じ、爆炎波を放ち床へ転ぶ彼の手からペンダントを奪い去る。
「両方奪ってもペンダントをそちらに戻されるだけですわ。残り時間もあまりないですし、他の方と戦ってきますわ」
紐を掴んでフリフリと揺らし、階段を駆け下りていく。
「みのり、大丈夫かい?」
「うん・・・、何とかね」
取られてしまった彼は真に助け起こされる。
一方、ティアラクーナはペンダントの蓋を開けて残念そうに俯く。
女神を奪ったと思ったら、みのりが真と交換した邪神の方なのだ。
「交換されていたのですわね」
運営に回収されてみのりの元へ戻されてしまう。
「仕方ありませんわ、9階に戻ってもすでに逃げられた後でしょうし。別の生徒を探しましょう」
下りていくと、コツンカツンと階段を上る足音が聞こえてくる。
「あの方なんて強そうですわ」
手摺を掴み上ってくる陽子たちを見下ろす。
「私を狙っているようですね」
察知した陽子はピタッと足を止める。
「芽美ちゃん、上にいます」
「上の階からこっちを見ているのね」
「開始から結構時間が経ったし、他の生徒から取ったペンダント持っているかもね。私が行くよ」
透乃は階段を駆け上り、ティアラクーナのペンダントを奪おうとする。
「(わたくしの持っているやつが女神だと勘違いしているようですわね、向こうから突っ込んできてくれるなんて好都合ですわ)」
ツインスラッシュの検圧を向かってくる透乃にシュシュパッと飛ばす。
「当たらないよ!ペンダントもーらいっ」
彼女は軽身功の体術で壁に上って軽々と避け、彼女の手首にかけてあるペンダントを奪いかかる。
「そう簡単に奪わせませんわ」
狙ってくる相手の手を見切り柄で受け流す。
「守られている方が女神を持っているっぽいですわ。倒していただいてしまいましょう」
「避けられちゃった!芽美ちゃん、陽子ちゃんを守って!」
「任せて。陽子ちゃん、こっちよ」
芽美は彼女の手を掴み8階のフロアへ走る。
「逃がしませんわっ。―・・・っ、何て足の速さですの」
ティアラクーナは芽美たちの後を追い、フロアへ駆け込むもののすでに影も形もない。
「隙ありっ」
ペンダントの紐をガシィイと掴んだ透乃がひったくる。
「やったね♪中身は・・・うわーん、邪神だー!」
即、運営にペンダントを回収されティアラクーナに返されてしまう。
「はぁ・・・もうすぐタイムリミットですし、わたくしの体力もここまでのようですわ」
SPが切れてしまったティアラクーナは床にぺたんと座り込んだ。
「負けたらというか、渡された女神を奪われたら借金が加算されるんですよね」
女神のペンダントだと確認するシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)を、月詠 司(つくよみ・つかさ)がじぃっと見つめる。
「さぁツカサ、ワタシのやつと交換しなさい」
「やっぱりそうなるんですね」
強引に眼前へ突き出す彼女に、しぶしぶ交換する。
「一応、私たちが持っているやつに目印しをつけておきましょうか」
司は刀でちょんと指に傷をつけてペンダントに血を塗る。
「それじゃあワタシも」
彼と同じくシオンも血をつける。
「今思ったんですけど、交換しても元の持ち主は変わりませんね」
「っていうと?」
「つまり私が持っている女神を奪われたら、シオンくんに借金が加算されるということです」
「―・・・。(ワタシたちの分を誰かに渡して混乱させるなんてことを考えたけど。女神が他の者の手に渡ってしまったら、ヤバイじゃないのワタシ!借金なんて冗談じゃないわっ)」
「シオンくん・・・?」
受け取ったペンダントをぎゅっと握り締め黙ってしまう彼女の顔を覗き込む。
「(うん?待って・・・ワタシに借金が加算されたとしても、ツカサを代わりに働かせて返せばいいじゃない!)」
「どうしたんですか?(借金苦になるかもって怖がっているのでしょうか・・・)」
腹の中で黒いことを考えているとも知らず、考え込む彼女の傍へ寄った司は心配そうな顔をする。
「フッ・・・フフフ。(だったらワタシに負けはないわ!そうよ、そうすればいいのよっ)」
シオンは不敵に笑い脳内整理をする。
無理やり連れてこられた司は、彼女の子羊となってしまった。
「心配ないわ、2人で頑張りましょうね」
邪神のような本音を隠し、にこぉ〜っと司に笑顔を向ける。
「(何ですか・・・そのわざとらしいくらい爽やかな笑顔は。絶対何か企んでますね、というか確実に!まったくとんでもないところに来てしまったものです。あは・・・あははは・・・)」
裏があると読んだ司は乾いた笑いを漏らす。
「シオンくん。嘘をつかなきゃいけないっていうことを利用して、本当のことだけを言うっていうのはどうでしょうか?」
「いいんじゃないかしら。わざと感情を逆撫でするようなこともいいと思わない?」
「そうですね、それもいいかもしれません。(むしろシオンくんにピッタリな手段ですね)」
司は心の中で呟きを声に出さず飲み込んだ。
「いい玩具・・・もとい、女神を持ってそうな生徒がこっちに来るわ」
ぽつりと小声で言うと無理やり奪おうとはせずに、司と交換したペンダントを見せながらゆっくりと近寄り、取りやすいようにわざと紐をつまんでフリフリと見せつける。
「それはいかにも取ってみろといわんばかりの行動だな。邪神なのだろ?その手には乗らん!」
「えぇそうよ。これはミハエルにとって無意味なものよ」
ミハエルにあっさり見破られてしまうものの、シオンは挑発的な言葉を言い放つ。
「(妙だな。さては女神の方か!?)」
守りに入ってハッタリをかましているだけだと思い、彼女のペンダントを雷術で床へ落とす。
「ずいぶんと浅墓な行動だな」
シオンの手から落としたそれを拾い上げ、フンッと鼻で笑う。
「そんな見え透いたことをするから、こうもあっさり女神を奪われるのだぞ」
「早く蓋を開けてごらんなさいよ。それともそれを取らなかったことにするつもり?とんだチキン野郎だわ」
「あぁ、焦らなくても開けてやる」
強気の態度をとるシオンに対して、ミハエルはどうせハッタリだと蓋を開ける。
「なっ何だと。邪神!?」
蓋の中身が女神ではないことに驚愕の声を上げる。
「最初に邪神だって教えてあげたのにおバカさんね♪」
それとミハエルの手持ちの女神は運営に回収され、シオンの手に渡ってしまう。
「ワタシなら相手の言葉なんか聞かないで迷わず奪うわよ?こうやってね!」
大事そうに持っているペンダントが女神に違いないと、躊躇なくシオンが満夜の胸に手を突っ込む。
「ひきゃぁあっ!?」
本当に取られると思わなかった彼女は悲鳴を上げる。
「フフッ、女神を拝ませてもらおうかしら?」
シオンは逆に相手から奪うためにわざと隙を作ったのだ。
「―・・・あら、邪神・・・騙したわねっ」
邪神を女神だと思い込まされたシオンは悔しそうに満夜を睨む。
奪ったばかりのペンダントを運営に回収されてしまい、その邪神の持ち主の彼女に渡されてしまった。
「よくも我を騙したな!」
交換させまいとミハエルがシオンたちの周囲にサンダーブラストの落雷を落しまくる。
「こうなったら・・・奥の手よっ」
「へっ?あぁぁあああ゛!?」
シオンに術を避ける盾にされてしまった司の髪の毛は雷様のようなアフロになってしまう。
「これって女神だよね?風がもらうー」
彼の手から女神が運悪く風華の足元へ滑り落ちてしまい、ひょいっと拾われる。
「あらら、取られちゃったわ。頑張ってね、ツカサ」
「(どうやってあんな額を払えっていうんですかぁあーっ!?)」
借金を全額押しつける気満々のシオンに、司はがっくりと項垂れる。
「こうしておけば見つけにくいかな」
佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は入り口は近くに落ちていた板に迷彩塗装を施し、自分のペンダントをそこへ隠す。
「人を騙すって苦手なんだよね・・・」
植木鉢を通路に並べ、壁とその隙間に寝そべる。
「何でそんなところに隠れてるの?」
7階にやってきた秋日子に早くも見つかってしまう。
「―・・・バレちゃった?」
「隠れ身や隠遁の術だとかじゃなきゃ、すぐにバレるって」
「うーん困ったね。もうすぐ終了時間なのに」
観念した弥十郎がペンダントを差し出す。
「むっ、これ邪神じゃないの!」
蓋を開けてみた彼女は顔を顰め、回収しにきた運営に渡す。
取られたペンダントは一瞬で彼の手元に戻った。
「これだけ?」
「うん、私たち女神持ってないもん」
「そうなんだ・・・」
1つも持っていないことを知るとがっくりと肩を落とす。
「女神は10個もないから勝者は1人だけだよね。今誰の手にあるのかな?」
「私たちも騙すなんて難しいこと出来ないよ。力づくで奪いにかかっている生徒もいるっぽいけど」
「なるほどね」
「頭脳だけで勝つ生徒がいたら見てみたいよ」
ふぅっと肩をすくめた秋日子は、真尋と別のフロアへ移動する。
「心理戦みたいなものだよね。疑いすぎてもミスしそうだし、やっぱり難しいなぁ。かといって騙したりするなんて出来ないよ・・・」
弥十郎はどうしたら勝てるのかうーんと唸る。
「ヴァイスが渡されたのは邪神だな」
ペンダントの蓋を開けてカシス・リリット(かしす・りりっと)が確認する。
「そうなの?俺にも見せてよ坊ちゃん。あっ!」
ヴァイス・カーレット(う゛ぁいす・かーれっと)は彼の後ろから覗こうとするが、見る前に蓋を閉められてしまう。
「ちゃんと俺が確認したからヴァイスは見る必要はない」
「えーっ、ちょっとくらい見せてくれたっていいじゃない」
「いいか?ヴァイスのは邪神だ。もう1度言う、ヴァイスは邪神だ」
抗議の声を上げる彼にカシスは繰り返し言う。
「坊ちゃんがそう言うなら間違いないね」
「しかしあれだ。殴って奪おうとする連中もいるからな。集めたやつからごっそり取ってやろう」
「勝ったとしても大怪我なんかしちゃったら、ご飯を美味しく食べられないよね」
「―・・・うん?まぁ・・・そういうことだな」
「(やっぱ物として狙われるのは怖いのかね?何だかいつになくビクビクして俺にくっついてくるし。猛獣の檻に入れられて怯えているウサギみたいな気分なのかもね)」
おにーさんが坊ちゃんごと女神を守ってあげなきゃと思い込む。
ルールを分かっていない彼は利用されているとも気づかず、生徒が突然襲ってこないか警戒する。
「何か話しているようですけど、ここからじゃ聞こえませんね」
彼らがいる2階にやってきた満夜が、こそこそと隠れながら接近する。
「ねぇ坊ちゃん、誰かこっちに近づいているよ」
「あぁ、きっとペンダントを狙っているんだ・・・。俺から絶対に離れるなよ・・・」
「俺が守ってあげるから安心して♪」
ヴァイスはよしよしとカシスの頭を撫でる。
「(隠れるならちゃんと相応の術だとか使わないと、こっちから丸分かりだぞ)」
満夜をちらりと見てカシスはふぅっと息をつく。
「(よし、演技するか)」
彼はヴァイスの腕にすがりつき、怯えているように見せかける。
「まだここから出られないのかヴァイス。騙されるだけじゃなくて病院送りにされるかもなんて・・・・・・俺・・・怖くて泣きそうだ・・・」
顔を伏せてカシスがブルブルと震える。
「ふぅん、太平楽な学生にしては結構やるねぇ」
味方も騙そうとする彼の演技を、モニターごしでミルディアは足を組んでじーっと眺める。
「ぎょぁああぁあっ、きたぁあー!!」
物陰から飛びかかる満夜の姿に、カシスはぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。
「ヴァイス、助けてくれ!借金なんていやだぁあっ」
「任せて坊ちゃん。雷術で金の亡者を追い払ってあげるからっ・・・・・・しびばぁべばばばぁあ!?」
サンダーブラストのパワーに負けてしまい、直撃を受けたヴァイスはビリビリと痺れてしまう。
さらに彼女が投げつけた彼の顔面にクリーンヒットし、あまりの激痛に床へ転がる。
「止めです!皮の汁ビームッ」
みかんの皮を握りつぶし目潰しをする。
「ふぎゃぁうぅうっ。俺の目がーっ、目がぁあー!痛くて開けられないから何も見えないー!坊ちゃん、坊ちゃんどこ!?」
「ペンダントいただきます」
カシスが服に隠しているペンダントを満夜がひったくる。
「うぇええんっ、取られたー!―・・・クククッなぁんてな。中身をよく見てみろよ」
「こっこれは・・・邪神!?」
「あーっははは!騙されてやんの」
絶望に沈む満夜の姿に、カシスはケラケラと高笑いをする。
「せっかく集めたやつを俺に取られるなんてざまぁないな。お疲れさん」
運営から渡された女神をわざとらしく見せつける。
「くぅーっ、悔しいですー!」
女神じゃないペンダントを掴まされた彼女が地団駄を踏む。
「このゲームって・・・、こんなにハードなのかい?攻略出来る確立が低すぎるよ・・・」
その光景を見ていた弥十郎は、味方すらも利用する酷い騙し方に唖然とする。
「(ヴァイスの含めて4つか。後1つ足りないな・・・)」
手元にある女神を数えてカシスはチッと舌打ちをする。
「もうすぐ集まるの?風にそれちょうだい」
「はぁ?誰がやるか。お子様はさっさと帰ってトレイして寝ろ」
「―・・・ぐすんっ。風、帰れないの。だってお母さんの病気を治すためにお金が沢山必要なの・・・。ペンダントが1こ他の人に取られちゃったから足りないのお願い」
「そう言われても簡単には渡せないな」
「風に借金を背負うことになったら、その分ちゃんと払うよ。嘘じゃないよ、だからちょうだい・・・。後数日で資金を集めないと、お母さんが・・・お母さんが・・・うぅう・・・・・・ぇええーん!」
なかなかくれない彼に、風華はぼろぼろと涙を流し泣き喚く。
「ぶぇえんっ坊ちゃん!可哀想すぎるよぉおっ。そのペンダントをあげようよ。坊ちゃんの分まで俺が働くからっ」
少女に同情したヴァイスが起き上がり、カシスの肩を掴んでガクガクと揺らす。
「な、何言っているんだ!?ちょ、それ返せ!そんなもん信じるなっ」
女神を両手で握り締めて逃げようとするが彼に取られてしまう。
「坊ちゃんが邪神ってことは、俺のは女神ってことだよね。これで足りるよね?」
「うんっありがとう!」
受け取った少女はにっこりと微笑む。
「もうすぐタイムリミットやね。はぁー、オレのは取られなくってよかった」
階段から下りてきた陣が安心したように壁へ寄りかかる。
「じんじん、それ返して」
「返す?オレのだけど」
「ううん風のだよ」
「いやいや、オレのだから!」
「だってじんじんのは他の生徒に取られちゃったよ。風のが取られそうになったから階段のところでサイコキネシスを使って移動したの」
「これ陣さんのだったんですね?数秒で時間ギレですから、私たちはそこへいけませんけど」
陽子が手にしている女神を彼に見えるように手の平へ乗せる。
「っていうとオレが持っているのは・・・」
「風の返してっ」
呆然と立ち尽くす彼の手からぱっとペンダントを取り戻した瞬間、“1時間経ちました、ゲーム終了です”っとアナウンスが流れる。
「しゃ、しゃしゃ借金!?しかも500万G・・・嘘だぁあーっ、こんなのありえないっつーの!!」
うぎゃぁあっすと陣が絶叫する。
「まぁ。取られたといっても、自分のとは言ってませんからね」
観戦室にいる瀬織が冷静に言う。
「ペンダントを5つ集めた鈴倉様には、賞金を贈呈いたします」
運営がジュラルミンケースを開けて風華に差し出す。
「やったー。風、勝っちゃった♪約束通り、500万あげて借金なしにしてあげる♪」
風華は受け取った額から、ヴァイスの分の借金を運営に払う。
「よかったですね!これでお母さんを助けられますよ」
「オルフェりん、あれね嘘♪」
「へ・・・?」
少女の言葉をいまいち理解できないのか、オルフェリアはきょとんとする。
「パートナーさんが風に協力してくれなかったから払ってあげないー」
「そ、そんなぁあ!?約束が違いますよー!?」
「何言ってるの、そういうゲームだよ?騙されるほうがいけないもん」
どす黒く風華がクスッと笑う。
「な、なぁ・・・風華ちゃん。オレは・・・」
「やぁだ。じんじん、風に冷たくしたから払わないもん。しっかり働いて返してね♪」
「そんなのってありかぁあ!?」
まんまと利用されポイ捨てされた陣が床の上にぐにゃる。
「陣さん、ドンマイだよ」
しょんぼりとする陣の肩を弥十郎がぽんっと叩く。
「ニコ、俺たちパートナーだよな?当然俺の借金返済を手伝ってくれるよな!?」
「うん?元々女神はナインのだよね。だから僕が働く理由なんて塵の一辺もないね。何かの実験台にでもなれば、手っ取り早く稼げるんじゃない?頑張ってね♪」
「困っているパートナーを見捨てるなんてなんて酷いやつだ!人でなし、ちくしょぉおっ」
1人で500万Gを返すことになったナインはぎゃあぎゃあと騒ぐ。
生徒たちが出られないように閉められていたドアが開き全員外へ出た。
借金苦に苦しめられることになった多数の犠牲者を出し、ディセイブ ゲームは幕を閉じた。