校長室
マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!
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第四章 初詣1 「あけましておめでとうございます。本年も変わらぬご交誼のほどお願い申し上げます」 天御柱学院で鬼鎧調査隊として活動していた御剣 紫音(みつるぎ・しおん)は、葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)の元へ、紋付羽織袴で新年の挨拶を行っていた。 彼女の三人のパートナーたちは皆、華やかな振袖姿で髪を結い上げている。 そして、手作りの三段重おせちを持参であった。 「えびの煮しめ、田作り、煮しめ、紅白蒲鉾、伊達巻き、鰤の焼き物、昆布巻き、栗きんとん、トビコ、鯛の焼き物、数の子、酢の物、お多福豆、鰻の焼き物、黒豆、伊勢えびの焼き物……」 紫音はそれぞれの名称をアメリカ人のハイナに説明してやる。 「口に合うかはわからんが食べてくれ」 「こ……これは。見た目も鮮やかな……宝石箱のようでありんすね〜!」 ハイナはおせち料理に感激したらしい。 もくもくと頬ばっていた。 「ハイナはん家は普段どんなお正月どす?」 艶やかな振袖姿の綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が尋ねる。 「アメリカに、特にお正月の味はないでありんすよ。祖先が皆違うから、各家庭が異なった伝統で異なった正月を迎えてて、割と静かなもんでやす」 「それはちょっと味気ないのう。お正月はやはり、縁起物を食べて長生きしたいもんじゃ」 「まだ長生きする気か!」 紫音は、推定年齢4500歳越えの魔鎧アストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)に突っこみたい気持ちを抑える。 ふと紫音は、ハイナの部屋の外に積み重ねてある、異様なオーラを放つダンボール箱を見つけた。 なにやら腐臭がする……。 「あれは何だ? 米軍の新兵器でも入ってるのか?」 「……ああ、あれはネット通販で買ったもんでありんすよ。通常弐万のものが半額でやす。でも、届いたのはまったく違ってて、こんなもんじゃなかったでやす」 ハイナはしかめっ面をして、お正月明けのゴミ収集車が来るのを待っているのだといった。 「……まさか」 アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)の脳裏にとあるネットサイトが横切ったが、これ以上は何も言わなかった。 「ハイナ殿、ネットショッピングは危険じゃぞ。どんな罠があるかも解らぬゆえ」 「もう買わないでありんす。こうやって、手作りおせちにありつけたし。しかし、天御柱学院の生徒が新年の挨拶に来て、葦原明倫館生は来ないとは一体どういう了見でありんすかね?」 ハイナはのろのろと立ち上がり、葦原明倫館生の姿を求めて、東光大寺院へ向かう支度を始めていた。