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カノンを取り戻せ!

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カノンを取り戻せ!

リアクション


5
「涼司様、後方に反応多数! 味方です!」
 花音がレーダーを読み上げながら言う。
「ひゃっはー! 騎兵隊登場だぜ!」
 それは風花が戦力増強のために無期停学中の生徒を呼び寄せたのだった。

 ――コリマ校長との面会
(停学処分は私でも覆せんよ、少女よ)
「ですが、戦力が足りひん今の状況では、負けるのは確実どす。停学者の謹慎処分の解除が必要どす」
(それは理解できる。ただし、停学処分のものについての処分解除はできん。建前上は、出撃をしたかったらかってにしろ。ただし学院からの一切の援助は得られん。補給も整備も自分たちで行うしかない……ということになる)
「わかりました! 学院には一切期待しません! 私が停学中の生徒たちを説得してみせます!」
 おとなしい楓花の激高する場面だった。
 そして楓花は停学処分中の生徒たちに参加を要請する。
 熱意を持った楓花の説得で彼らは参戦を決意した。
 だが、補給や整備を一切受け入れられないことによる参戦の遅れは免れざるを得ず、このタイミングでの参戦となったのだった。
 これによりベトナムへ救出に行った命令無視の生徒たちの参戦により、戦力が拮抗することとなる。

 そして――
 鏖殺寺院に撤退していた教官部隊が加わる。
 教官たちの戦術指揮は妥当であった。
 弱点を補強し、攻撃力を増加させる。
 それに対し統一的な指揮権を持たない学院側は苦戦を強いられた。
「くっそう! こんなことなら教導団の生徒に指揮権を委譲すればよかったな!」
「涼司様、今更言っても始まりません。涼司様が指揮をするしか!」
 花音がそう言うが、
「俺は戦場の指揮なんてものは勉強してないんだよ! できるわけがねえだろ!」
 そう言いながらも
『全機、固まれ! とにかく集中しろ! 一機ずつ確実に落としていけ!』
 と最低限の指示は出す。
 すると各小隊の小隊長がそれを解釈して部隊に指示を出す。
 学院側の各小隊は火線を一機の機体に集中させそれによって一機ずつ確実に落としてゆく。
 たいして鏖殺寺院側は包囲陣形を敷いて周辺から切り崩していく。
 一進一退の攻防は続き、戦線は膠着していた。
「【ゲイ・ボルグ アサルト】! 行く!」
 紫音は【リベレイト】小隊内部の連携をとりながらも高高度からの狙撃を行い敵部隊に出血を強いる。
「山葉校長、引いて! 指揮官は前線に出るよりも後方で指揮を取ることが大切だよ!」
 茉莉が涼司に後退を促す。
「おうよ」
 それにしたがって涼司は後退する。
 黒のショートヘアーに赤色の瞳、大人びていてかっこいい氷室 カイ(ひむろ・かい)はゴーストイコン八将軍を撃破したその実力で鏖殺寺院のイコンを潰していく。【リベレイト小隊】に所属し、その目的はカノンと深い関係を結んでいる平等院鳳凰堂 レオをカノンの説得に向かわせることだった。
 焦げ茶色のロングヘアーに青い瞳の髪が綺麗な雨宮 渚(あまみや・なぎさ)はカイの操縦をサポートしながらカノンに思いを込めた言葉を送る。
 昔から超能力者としての才能があり子供のころに鏖殺寺院に家族を殺され攫われ、そのときのショックで彼女は自分の強大な力をコントロールできなくなった。その為ずっと監禁されていた。という経歴を持つ渚は自分とカノンを同じ境遇にしないためにもカノンの説得に言葉を割く。
『カノンさん、惑わされないで! 涼司さんはあなたを誰よりも大切に思っているわ。でもそのあなたと契約したら、鏖殺寺院はあなたを殺して涼司さんを殺す作戦に出る! そうしたらふたりとも無意味に死んでしまうわ。それはあなたも望んでいないでしょう!?』
 渚の言葉にカノンは動揺する。
『……黙れえええええええええええ!』
 カノンが叫ぶ。認めていても理解したくはないのだ。
『お願い! 理解して!』
『うるさい! だまれ!』
 渚は言葉を重ねる。しかしカノンはそれに理解を示そうとはしない。
 カノンのイーグリットの射撃を受けて渚は黙った。
 魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)は涼司に事前に通達した作戦に従って行動する。
 しかしカノンの強固な抵抗の前にはそれも無意味であった。
 カノンはとにかく「涼司と契約をする」以外の行動原理は存在しない。
 それに対して涼司は「カノンは妹的存在」であり「守る対象」であり「パートナーとして共に並び立つ相手」ではない。
 その相違が涼司にも事前通達した作戦を放棄した行動を取らせる要因となっていた。
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)はブースターの片方を瞬間的に噴射するという方法で回避を試み、敵の攻撃を回避しながら【リベレイト小隊】の一員としてレオがカノンに向かうための障害の排除に動いていた。
 彼の考えによれば、カノンを説得できるのは涼司かレオしかいないというものであり、その他の多くの味方もそれに賛同するものであった。
(真司さん、右2下5から攻撃)
 ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)は情報伝達の遅延を最大限に抑えるため精神感応で会話を行う。
(おう!)
 真司はその情報に応じて回避行動を取る。シュメッターリングのマシンガンの弾が先程まで真司のいた空間をなぎ払う。
「あぶねー!」
 真司は冷や汗を流しながら敵を攻撃する。
 レイヴは地上から発射された対空ミサイルを頭部バルカンで撃ち落としながらアサルトライフルで敵イコンを攻撃する。
 それによって攻撃されたイコンは爆発し、パラシュートが空に舞う。
「EMC出力最大! 敵ミサイルを回避する!」
 レイナ・アルフィー(れいな・あるふぃー)はレイヴの機に乗りながらイーグリットの補助を担当し戦闘機動を取る。
 EMCとチャフ・フレアでミサイルを回避しながら戦闘機動をとり続ける。
「ああ、ったくもう! しつこい男は嫌われるぜ!」
 レイナはそんな罵声を吐きながら戦闘を続ける。
「グリム、こっちは回避で精一杯だ! 撃墜は頼むぞ!」
 四谷 大助(しや・だいすけ)は火器担当のグリムにそう言うと、とにかく回避機動をとりまくった。
 EMC、チャフ・フレアでミサイルを防ぐのも忘れない。
「こちら【ミッシング】。【リベレイト小隊】は高高度を進め! なるべく他の敵に邪魔されるな!」
 カノンの保護が目的である【リベレイト小隊】としてはここで無駄な出血を強いられるのは避けるべきだった。
 敵と戦いながらも高度を取り、「レオちゃんさん! 今のうちに急いで! カノンちゃんを説得するんだ!」
 水鏡 和葉(みかがみ・かずは)がそんな指示を出しながら高高度からレオの説得の援護をする。
「人の恋路を邪魔するヤツはあああああああああ、イコンに蹴られて死んじゃえええええええええええええ!」
 祠堂 朱音(しどう・あかね)が【リベレイト小隊】としてレオ援護のために動く。
「人の恋路はせっかくですもの、ハッピーエンドがみたいもの。どこまでその声が届くか判りませんが、私も手伝いますよ!」
 シルフィーナ・ルクサーヌ(しぃるふぃーな・るくさーぬ)もイコンを操縦しながら叫ぶ。
「風呂で私を洗ってくれたカノンさん……そりゃあ怖いところもあるし、普通じゃないかもしれません。でも涼司さんを思う心は普通の女の子だと思います……洗脳されてたって、攻撃なんてできません!」
 白石 忍(しろいし・しのぶ)も【リベレイト小隊】でカノン奪還のためにフォローする。
『カノンさん! 白石です……戻ってきてください! ……また一緒にお風呂に入りましょう』
『だれっ!? 知らな……頭がいたい! お風呂……』
『カノン様、お風呂なら中国の秘境にいくらでもありますよ! そんな戯言には耳を貸さずに!』
『そうだったわね、アザゼル。あたしと涼司くんの契約を邪魔するヤツはみんな死ねー!』
 停学を一時解除されたグループがカノンの前に壁として立ちはだかるがカノンの強さは尋常ではなかった。一機、また一機と撃墜されていく。
「イナンナの加護よ!」
 リョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)がイナンナの加護と心理学を使ってカノン機の攻撃を読む。
 とにかくカノン機に傷をつけることはできなかった。逃げまわるしかない。