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カノンを取り戻せ!

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カノンを取り戻せ!

リアクション


8

  讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)は泰輔のパートナーとしてイコンを操縦し涼司の護衛を務めていた。
 涼司の周辺はカノンがいるため敵の攻撃が来ない空白地帯となっていたが油断はできない。
 カノンはこじ開けられたままのコクピットで涼司に契約しようと迫ってくる。
『レオ、山葉校長! 露払いは俺達に任せろ。二人でカノンを説得するんだ!』
 ルアーク・ライアー(るあーく・らいあー)の言葉に涼司とレオは一生懸命言葉を紡ぐ。だが、カノンがそれを聞き入れる様子はない。
「茉莉さん、電波とミレリアの歌の解析が終了しました。プログラムも作成済みです」
 KAORIはモニターからそう告げる。
『よっしゃ! 山葉校長、みんな、これからカノンを説得するための洗脳解除プログラムをカノン機に流すから援護して』
『わかった! 頼んだぞ!』
 茉莉はカノン機に向けて突出すると接触回線でカノン機に通信を行う。
 イーグリットのコンピューターのセキュリティホールからイーグリットに侵入し、コントロールを奪う。
 それからミレリア・ファウェイの『歌』を元に作り出した精神コントロールプログラムを注入する。
 そうするとダミアンは通信を茉莉に交代し、カノンと交信する。
『カノン、こっちに来なさいよ。そうすれば、山葉といっしょに過ごせる時間がきっと増えるわ。それにもうすぐバレンタインだし』
『あ……ああ……あああ……』
『ねえ、カノン。剣の花嫁の特徴って知ってる? 容姿がその契約者の大切な人にそっくりになるのよ。つまり、山葉のパートナーの花音があんたにそっくりってことは山葉がカノンを大切に思ってるってことよ』
『だったら、あたしと、契約……』
『それは駄目だ!』
 リカインが叫ぶ。
『いいかい、カノン君、もし君が涼司君と契約をしたら、パートナーになる。パートナーになるということはどちらかが死んだらもう一人も死ぬということだ。わかるね?』
『う、うん』
 カノンの洗脳は弱まっていた。アザゼルが手元の機械を操作するがカノンがおかしくなる様子は見せない。
『涼司君、そういう事だから、二人が契約したら、鏖殺寺院がパートナーロストの原理を利用して涼司君を殺そうとしようと思う。だからね、カノン君、二人が契約するということは君たち二人は死ぬことになる。二人だけじゃない。花音・アームルート君も死んでしまう。アームルート君は、事故で君を守れなかった涼司君が自責の念から産み出してあの姿になった。だからね、カノン君、君と涼司君が契約するということは、大きな危険を孕んでいるんだ』
『でも……』
『それに、パートナーとなるということは、一緒に戦って危険な目に合わせるということだ。涼司君がそんなことを望むと思うかい? 涼司君は君のことが誰よりも大切なんだ。妹みたいに思ってる。世界で一番大切な存在なんだ』
『妹……それじゃあ、あたしは涼司くんの恋人にはなれないの?』
『残念ながらそういう事になる。それに、涼司君にはもうお付き合いを約束している女の子がいるんだ。でもそれとこれとは別で、涼司君は君のことを愛している。大切な家族として。たとえ涼司君が結婚しても、夫婦というのは薄っぺらい紙一枚の契約の関係だ。恋人だって、いつ縁を切られるか分からない。でも、妹なんだ。家族なんだ。だから、君と涼司君の絆はなくなることはない。それは断言できる!』
『涼司君……』
『すまねえ……リカインの言うとおりだ。俺はお前のことを女としてみることはできない。あくまで、妹だ。でも、世界で一番大切にしたい、それは間違ってない』
『そんな……そんな……』
『じれったいな。でも俺とカノンは面識がないからな……校長とレオにまかせるしかないか』
『そうだな。俺はカノンと会話したことはあるが、あの二人ほど深い関係じゃない。やはりまかせるしかないだろう』
 そんな通信が部隊内で交わされる。
『カノンさん、傍で笑っていて欲しいのは誰ですか? 近くに居る強化人間部隊の人たちですか? 本当に傍にいたいのは涼司くんやレオくんじゃないんですか? 好きって気持ちが本物なら洗脳なんかに負けないで!!』
 加夜が叫ぶ。
『カノンさん、私の声に答えて! 貴女の居場所は此処じゃない、もう見つけてるはずです! お願い、思い出して! カノンさん!!』
 加夜の言葉にカノンは動揺する。
『カノン、レオや涼司がお前を待っている帰って来い! お前は洗脳に負ける弱いやつなんかじゃないだろう!』
 紫音が叫ぶ。
『目を覚ませ設楽カノン。お前の想っている人物はこんな事では手に入らない』
 真司も精一杯声を届ける。
『うるさい! だまれだまれだまれえええええええ!』
(やはりダメか……レオか山葉校長しか……)
『僕は君の過去や、どんな辛い思いをしたのかは知らない。それでも、君のこれからを守る! 騎士として――迎えに来たよ、お姫様!』
 レオがカノンの騎士として迎えに来たという。
『僕は君を見捨てない。君の前から消えたりしない。何度でも助けるよ。これからもずっと。だから、帰ろう、僕らの居場所に』
 レオはカノンに告白をしたことがある。そしてこれまでもカノンを守ってきた……
『レオ……』
 戦闘が続く一方で空白地帯ではカノンの説得が続けられていた。
 だが、タイムリミットを迎える。
『カノン様、戯言に惑わされないでください!』
 アザゼルが手元の機械を操作する。
『あああああああああああああああああああああ!』
 カノンが悲鳴をあげる。
『カノン様の居場所はここです。我らの女王です』
『レオ、レオ……たすけて……』
 カノンはそう言いながら機体を撤退させていく。
『カノン、僕は君と一緒だ……』
 レオはカノンを追撃する。
『メタトロン、落とせ!』
 アザゼルが指示を出す。だが
『僕は鏖殺寺院に投降する!』
 そう言って機体を自爆させ、告死幻装 ヴィクウェキオール(こくしげんそう・う゛ぃくうぇきおーる)を纏ってカノンのイコンに飛び移る。
『地獄の果てまでお伴するよ、お姫様』
 そしてパイロットシートに潜り込む。
『こんな時のために蒼空学園に転校しておいたんだ。山葉先輩、イスカと久遠乃 リーナ(くおんの・りーな)を頼みます。みんな、また逢おう!』
 カノン機からレオの通信がはいる。
「やれやれ」
 可憐はそう苦笑しつつ手を振る。
「行ってらっしゃい、レオくん。頑張ってくださいね♪」
「仕方ないな」
 和葉も苦笑する。
『全く、心配させるなんて……仕方のない師匠だよね。カノンちゃん共々取り戻してみせるから、その日まで元気でね』
 和葉はレオの弟子として心配していた。
『情報しっかり流して下さいね〜』
 シルフィーナが笑いながらそう通信を入れる。
『ちぃっ、仕方がない。全機撤退だ。カノン様を守れ!』
 アザゼルが強化人間部隊に指示を出す。
 その結果強化人間部隊はカノンと共に戦場から去っていった。
 残るは数人の教官とシュメッターリングが多数。そして随伴飛行歩兵である。数としては相変わらず敵のほうが多かった。
『撤退の頃合いだな……全部隊凹型陣形をとりつつ後退……』
 ルースが少尉として指揮をとる。
 学院側のイコンは左右両翼をすこしずつ後退させ中央が下がるという方法で敵の攻撃を柔軟に防ぎながら戦線を後退させ、やがて敵との距離が開くと一機に反転して逃げ出した。
 教官たちは追撃してくる様子は見せず、イコン達は次々と空母に着陸する。
 ローザマリアや朝斗も寺院のネットワーク接続されたコンピューターにゾンビBOTを侵入させると、それらを使って鏖殺寺院のサーバーにDDoS攻撃を行い寺院のサーバーをゼロレベルフォーマットすると、誤動作を起こす電波を発生させる装置の破壊・奪取は諦め一定の結果は得られたとして撤退していた。
 そして――

 平等院鳳凰堂 レオはパラ実送りとなった。いかなる理由があれ鏖殺寺院にいったのだから仕方が無い。
 そんなレオがリーナに託した手紙が涼司の手に渡った。

この手紙をあなたが読んでいるという事は、僕は帰還できなかったのでしょう。
でも心配しないで。
カノンだけは必ず連れて帰ります。
それまで彼女の居場所を守っててあげて下さい。

「レオ……」
「涼司様、レオさんについては復学の機会をという嘆願書がいくつか着ています。また、レオさんによって流されたとみられる鏖殺寺院の機密情報が蒼空学園のマシンに届けられています。パラ実送りは仕方がないとしても、いつか設楽さんと共に帰って来る日のために除籍はしないほうがいいと思います。天御柱学院側でも強化人間達は処分しないという方針を出しています」
 花音がそう言うが涼司の表情は芳しくなかった。
「……分かることにはわかるが、一応けじめとして放校処分は仕方がない。だが、パートナーたちがこちらに残っていることだし復学の事については環菜と話し合っておく。俺一人の判断で決めていい問題じゃない」
「分かりました。それが涼司様の判断ならそれに従います」
「頼む。問題はアザゼルという強化人間だな。やつがカノンの洗脳をコントロールする装置を持っているらしい。次の戦場ではアザゼルを真っ先に撃墜することが必要になるだろうな……」
「はい」
「あとは、小隊単位での連携は取れていたが、突出して撃墜されたり、全体的に見渡せば連携がしっかり出来ていなかった部分もあるから、、もう一度中国の基地を攻める前に、全体的な連携訓練が必要になってくるな」
「そうですね。教導団にも協力を打診しましょう」
「ああ、コリマ校長の方から連絡を入れるように頼んでおく。事後処理はこんなところか……」

 そしてミレリア・ファウェイの歌と朝斗の持ってきたデータを解析した対洗脳プログラムがKAORIによって作成され、完全版として全校に配布された。ただし、洗脳プログラムに関しては強力すぎることと悪用されるおそれがあることからKAORIに搭載するのみにとどまった。
 それが、今回の作戦の結果だった。
 勝ちはしなかったが大敗もしなかった。そして次回につながる鍵も得た。
 総括すれば、そのような感じであった。

担当マスターより

▼担当マスター

樹 和寿

▼マスターコメント

 今回は割とイコンの戦闘の描写を多めにしてみました。
 カノンの説得が涼司とカノンのNPC劇場になるんじゃないかと心配だったのですが、割とカノンを思ってくださるPCさんが多くて涼司の台詞は必要最低限となりました。
 本当はカノンとの面識が薄いPCをもう少しカットバックして盛りいれても良かったのですが、戦闘以外のシーンが多くなるということで一部のPCさんが活躍する結果となっています。

●お詫びと訂正
 オフィシャルに確認したところ、パラミタの種族が一人、あるいは二人でイコンを操縦している場合の出力は30%程度だそうです。
 ですので、今後MCのみでのイコンの搭乗も可能とします。ただし出力は30%なのでMCとLCが乗り込んだイコンほどには戦力にはならないでしょう。
 ここらへんは当初のオフィシャルの方針と変わっていますがロボットミッションを受けてのこととなります。