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人形師と、チャリティイベント。

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11.怒る時は怒ります。


「俺の店っていつからこんな風になったんだろうねー」
 リンスの座る席の横に座り、フィルがあははと笑った。なお、レジにはSFM0004623#梓}が立っている。
 フィルの視線の先には、様々な恰好なメイドさんが居た。
 黒を基調とし、スカートが踝まである長さのクラシカルタイプのメイド服を着て客側に給仕するレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)。頭には猫耳もついている。
 彼女は、夜月 鴉(やづき・からす)――この状況下では文乃という――と、共に行動していた。なぜなら文乃の恰好が、同じメイドさんであるにも関わらず正反対だったからだ。
 ピンクを基調とした衣装。スカートの丈は短く、今時っぽいメイド服なのだ。オプションである獣耳だけはレティシアとお揃いで猫耳である。
「二人で並ぶとなんだか風変わりで楽しいねぇ♪」
「別に楽しくなんて無いわよ。仕方なく着てやってるだけなんだからねっ!」
「ツンデレってやつですしねぇ。あちきとは違ったタイプのメイドさん、良いねぇ〜♪」
 文乃のメイド姿にレティシアはご満悦である。
 そんな二人から少し離れた場所で、これまた給仕に勤しむ影が二つ。アルティナ・ヴァンス(あるてぃな・う゛ぁんす)ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)である。
 アルティナの恰好は、文乃と同じくピンクを基調としたメイド服で丈も短め、やはり今時なメイドさんスタイルである。違いは、獣耳が猫耳ではなく羊耳というところだろうか。オプションで伊達眼鏡も着用済みで、クールビューティという言葉がよく似合う。
 また、ミスティの恰好は、
「凄く恥ずかしいんですけれど……」
 顔を真っ赤にして本人が言うように、過激なものだ。
 メイド服ではなく、黒のボディスーツ。足元はニーハイソックスや清純な白ソックスでもなく、網タイツ。足元はハイヒールで、獣耳はウサギ耳。
 どう見てもバニーガールである。
 メイドさんはもう一人居た。
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)に憑依した、奈落人のマガダ・バルドゥ(まがだ・ばるどぅ)である。
 狐耳のメイド姿で、衣装はアリスロリータをベースにしたゴスメイド服だ。
 以上、総勢5名のメイド(バニーガール含む)が店内に溢れかえっているこの状況。
「…………まあ、頑張れ?」
 それ以外にかける言葉が見当たらず、また探す気もなかったのでリンスはそう言った。
「俺、メイドの恰好することもあるけどさ。まさかメイド喫茶にされるとは思わなかったなー」
 それは誰だって予想外だと思う。
 とは言わないで、黙って出された紅茶を飲んだ。紅茶はフィルが淹れたので、いつも通りの味だし美味しい。
 からん、とドアベルが鳴った。一斉に全員、ドアを見る。お客様のご来店のようだ。
「いらっしゃいませぇ♪」
「い、いらっしゃいませ……」
「お帰りなさいませお嬢様」
「お帰りなさいませお嬢様」
 ノリノリのレティシア、赤面しながら言うミスティ。そして同じセリフを口にしているにも関わらず、ツンとクールの差がはっきり出ている文乃とアルティナ。
「……!?」
 ずらっと並ばれ挨拶されて、お客様はかなり戸惑っているようだ。無理もない。
 それに加えて、
「当店は指名制となっておりマス。御好きなタイプのメイドをお選び下さい。勿論、本日限りのサービスですので、指名料等は一切生じマセンので御安心下サイ」
 マガダのこのセリフだ。
 お客様が戸惑うより早く、フィルの笑顔が凍った。
 ――あ、やばいな。
 リンスは直感的に判断する。
 これは、相当、怒っている。
「あのねー、そこの名前も知らないお嬢さん」
 声も、にっこりも、いつも通りだけれど。
 『名前も知らない』とわざわざ公言する辺り、棘が含まれていた。
「うちはそんなサービスやってないんだよねー。勝手なこと言わないでほしいな」
「そういうつもりでハ」
「ないにせよ、俺からすれば迷惑。帰ってくれるかな?」
 そして有無を言わさぬ笑みでマガダを追いだした。
 次に、一連の出来事で固まっているメイド少女たちに向き直り。
「あーゆーこと言ったら、帰ってもらうからねっ♪」
 にこっ、と綺麗な笑みで行ってのけた。
「あの、もしかして私達……この恰好も止めた方がいいですか?」
 メイドコスのメンバーの中でも冷静なアルティナがフィルに問う。
「んー……そうだねー、従業員は足りてるしね。
 いつも通りの恰好をして、ケーキでも食べて行ってくれれば俺は嬉しいなー♪」
 そうまで言われたら、ということだろうか。
 それまでメイドコスをしていた面々は、それぞれ着替えて私服に戻って。
「ご迷惑をおかけしました」
 ぺこり、ミスティが謝る。
「いえいえ♪ わかってもらえれば、それでいいよー」
 にこにこ笑顔は、完全に普段の飄々としたものに戻っていた。
 ――そういえば、怒らせると怖いんだったな。
 そんなことを改めて思いながら、リンスは食べていたケーキを嚥下した。