蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

カノンを取り戻せ『完結編』

リアクション公開中!

カノンを取り戻せ『完結編』

リアクション





補給、修理、治療。後方の激戦



 後方に待機していた部隊は、今、まさに大混乱の戦場であった。
 ミルディアはパートナーの真奈とともにトリアージからこぼれた重傷者の治療を積極的に行なっていた。
「絶対助けてみせるからね。誰も殺さない! 死なせはしない! 『ヒール』、『ヒール』、『ヒール』!」
「あきらめないでください。私の技なら助かります。『命のうねり』!」
 神の力が生命力となってほとばしる。通常の治療では助からない重傷者が一気に回復してゆく。
 それは命を守るものとして嬉しい一方で、また戦場に立たせることになることを申し訳なくも思う。
 だが、死なせるのは絶対に嫌なのだ。
 ここは銃弾が飛び交う戦場ではない。それでも、ここが彼女たちの戦場だった。
 未沙はサイコメトリで機体の思いを読み取る。
 機体自身が発する声に耳を傾け、機体の望むがままのセッティングを施すために。パイロットや整備班、機体に携わった人たちの想いが機体に染み込んでいるから、それが機体の『声』となって聞こえてくる。
 そして整備用の簡易ハンガーにとりついて工具を握り整備を施す。破損したパーツはイコンも使って取り替え、準備された真新しいパーツへと取り替える。
 それらを取り仕切るのは真琴だ。
 イコンで資材をどんどん運ぶ傍ら周辺の者たちに声をかける。
「さあ、カノンさん奪還作戦はこれでおしまいにしましょう。無事にカノンさんたちが帰ってきたら、お帰りなさいのパーティーをしましょうね。そのためにも皆さんの機体は万全のコンディションに整えてみせます」
 それを補佐するのはクリスチーナ。
「あんたの機体は再出撃は無理だね。ここでおとなしく休んでな。命があっただけでもめっけもんだよ。機体がぼろぼろでも、生きていれば修理してまた戦える。でも、死んじまったらなんにもならないよ。だから、休んでな。とりあえず空母に戻れるだけの応急修理はしとくからさ。ほら、コーヒーだ。これでも飲んでな」
 そして再出撃する機体には弾薬やエネルギーを補充し、万全の体制で送り出す。
「あー、ダメダメ!そっちは補給物資を運び込む通路だから、イコンはもっと奥に行って!」
 リオはイコンを交通整理しながら大声を張り上げる。
 そして他学校のイコンが来るとマニュアルとにらめっこしながら整備をする。
「……機体の整備受領印はこっちに……はい、確かに……」
 フェルクレールトはリオの補佐としてこまかいぶぶんをおもに担当する。
 二人は手分けをしながら整備をして、効率を上げていた。
「リーダー、これはどうすればいいんですか?」
 リオは分からないことがあると真琴に確認する。
「あ、これはですね……」
 整備の経験をずっと積んできているだけあって真琴の知識は豊富だった。どんな疑問にもすぐ答えを出す。
「ありがとうございます。あ、そっちは補給用だよ。武器ごとに弾薬が違うから取り間違えないで!」
 リオがイコンの交通整理をすることによって、効率よく物資を配給することができた。
 そしてふたたび前線へと戻るイコン達。
 リオたちの働きがあってこそ初めて出来る作戦であった。
 たまきは関節系のパーツとオイルを重点的に見ていた。これらのメンテナンスの出来不出来はパイロットの安全に直結する。しがって最も力をいれている場所だった。
「朝野、すまないがスパナをとってくれないか?」
 たまたま近くを通りかかった未沙にたまきが頼みごとをする。
「オーケー、これでいい?」
「ああ、サンキュ。今のところ鏖殺寺院のイコンが攻めてくる気配はないが、警戒を忘れるなよ。補給路を潰すのは戦争の初歩だからな」
「うん」
 果たしてたまきの悪い予感は当たっていた。
「エマージェンシー、エマージェンシー! こちら【ラプラス小隊】。こちらに向かってくるイコン8機を確認! 直ちに迎撃に向かう!!」
 後方の戦場に、そんな不穏な通信が飛び交った。
「こちら【アサルト4】の鳴神 裁だよ。敵がこっちに来るまであと何分!?」
「敵の進軍速度からしておよそ10分後。動ける期待は援護を頼む!」
「こちら【アサルト5】の葦原 めいです。整備、あと何分で終わりますか!?」
「あと8分……いや、5分で終わらせて見せる」
 たまきはそう言うと通信機に向かい【イロドリC】を呼び出した。
「おい、【イロドリC】、欺瞞情報の流布はどうなってる?」
「3個小隊が欺瞞情報に踊らされて反対方向に向かっているわ。でもだめっ! 敵が多い!!」
 彩羽の悲痛な叫び。
 敵の数が多い上に補給のために【アサルト小隊】は後方に下がっていた。
「補給と整備は簡易で済ませます。全員3分以内に出撃体制に入れるようにしてください」
 真琴が大声を張り上げる。
 にわかに活気づいた後方で、補給と整備が大急ぎで進められる。
 整備員が群がりイコンに弾薬とエネルギーを補充していく。
「よし、これでいつでも出れるぜ! 行ってきな、【アサルト小隊】」
 クリスチーナが叫ぶ。
「【アサルト1】了解。【アサルト小隊】はこれより敵部隊の迎撃に入ります。
「こちら【イロドリC】。敵はすべて鋼竜の模様!」
「了解!」
「【アサルト1】より各員へ。味方の2個小隊が押さえてくれますが、ここを突破されたら戦線全体に大きな影響を与えます。各自、全力で防衛に当たってください」
『了解!』
 シフの言葉に応えて全員が動き出す。ただし歩兵は警備のためにこの場に残る。
 そして味方の【ラプラス小隊】と【グングニル小隊】の大型ビームキャノン装備型砲戦仕様のイーグリットが敵に攻撃を加えていた。
『撃てー! 撃て撃て! 狙いは正確でなくても良い。とにかく敵を近づけるな」
 【ラプラス小隊】の小隊長が叫ぶ。
 8機の鋼竜対8機のイーグリット。しかし敵もマジックカノンを装備しているため砲戦では潰し合いになるだけだった。
 しかも――
「綾瀬、レオ、カノン、ミレリア! 行くぞ!! この隙に空母を強襲だ!」
 トライブが満を持してシュヴァルツ・フリーゲを離陸させる。そしてそれにレオとミレリアのシュヴァルツ・フリーゲ、カノンのイーグリットが続く。
 結果、【ブレイズ小隊】と【リベレイト小隊】は空母の防衛に回ることになる。
 しかしリカインが【激励】を込めて言葉を発すると、戦線は一気に持ち直した。
「みんなが帰ってくる場所は守ってみせる。だから、ちゃんと帰ってくるんだよ」
 そしてリカインは飛空艇の火器を操作してイコンを迎撃する。