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カノンを取り戻せ『完結編』

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カノンを取り戻せ『完結編』

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事前会議(軍議)



「杏ちゃん、やっぱりミレリアちゃんを殺す気?」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が笑いながら(目元は笑ってない)葛葉 杏(くずのは・あん)に尋ねる。
「当然よ! 生地獄に居たのなら、生地獄に居ることの苦しみが解るでしょ! 彼女達のやっていることは関係のない人をその地獄に引きずり込もうとしているのよ!」
「そうねえ。でも、『助けてくれなかった世間の皆様』がどんなに被害を被ろうとも、『助けてくれた人の方が正しい』に決まってるのよ。寺院の武力で一般人を省みない、そのやり方に正義は無い。だけど、貧困に喘ぐ者たちにとって、とっても綺麗な理想や思想、哲学、神様の僕の説法、それらがどれだけ優れていてもお腹は膨れないわ。確かに寺院は多くの人を助けたのよね」
「くっ……それは……それでも、私はミレリアを許せない!」
「それは私怨よねえ? あなたのアイドルとしての。ミレリアという偶像を崇拝して現実と理想が違っていたから殺すの?」
「彼女のやっていることはテロリズムよ! テロリズムが歴史をいい方向に導いたことは一度たりしてないわ!」
「それを言ったら幕末の日本の志士だってテロリストよ。勝てば官軍、負けたら賊軍。歴史は勝者が作るのよ。まあ、殺したいならミレリアちゃんのイコンを破壊すればいいわ。でも、あたしはミレリアちゃんが死ぬ前に助けるわよん♪」
「どうぞご自由に! 戦場でミレリアに勝てれば、生きていようと死んでいようとどうでもいいわ。どうせ、ミレリアが鏖殺寺院だってのはパラミタでは常識なんだから、彼女が生き延びたところで、もうアイドルとしての道はないわ」
「そうね。勝手にさせてもらうわ。それじゃあそろそろ軍議の本題に入ってくれるかしら?」
 アルコリアがそう言うと、山葉 涼司(やまは・りょうじ)が司会を始めた。
「蒼空学園校長の山葉だ。司会進行をさせてもらうぜ。まず、誰がどんな立場で戦場に臨むのか、それぞれの立場を明確にして欲しい」
「S@MPコンマスの姫宮 和希(ひめみや・かずき)だ。カノンや強化人間の説得をサポートするぜ!」
 ぼさぼさの黒髪に茶色の瞳、学ランを身に纏った熱血漢が力強く宣言する。
「オーケー、じゃあ次だ」
「ベースのルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)だ。S@MPの戦場での指揮をさせてもらう。軍事の専門家の教導団員として、オレを使って欲しい」
「了解。次は?」
「パートナーのソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)です。イコン操縦のサポートを行います」
「蒼空学園生徒会副会長の小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)だよ。涼司と一緒にカノンの洗脳機械を持ってるアザゼルをやっつけるよ」
「パートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)です。カノンさんを取り戻したいと思ってます」
「頼むぜ親友。コリマ校長からの依頼もあるし、なんとしても強化人間たちも説得しないとな」
 涼司はそう言って次の発言を促す。
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)だよ! 負傷者の治療に当たるよ!」
 実は百合園なのだが天御柱学院の制服を着て身分を隠しているミルディアがそう発言するとパートナーの和泉 真奈(いずみ・まな)がそれに続いた。
「わたくしもミルディアを手伝います。トリアージからこぼれた方の治療も行いたいと想いますわ」
「俺はクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)だぜ。パートナーが歌いたがってるんでS@MPに参加させてもらう」
「ボクがそのパートナーのクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)だ。S@MPに参加させてもらいたいと思ってるよ」
 それに対してフレイ・アスク(ふれい・あすく)がこう答えた。
「歓迎します。S@MPの方針についての会議はこの後開きますのでその時はよろしくお願いします」
「よろしく」
 クリスティーとフレイは握手を交わす。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)よ。ルースさんや真一郎さんと一緒にS@MPの指揮をするわ。担当はキーボードと女性ボーカル。正式メンバーを目指すわよ」
「ルカのパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だ。操縦をサポートする」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)だよ。弟子がS@MPに参加するから私はみんなの帰ってくる空母を生身で守るよ」
シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)よ。リカと一緒に空母を護衛するわ。特に対空ミサイルの処理をやるつもり」
「オーケー。ここで、自己紹介は一度中断だ。先に情報整理のために各小隊の小隊長に挨拶をして欲しい」
「了解じゃ。対精鋭部隊【ブレイズ小隊】を指揮する織田 信長(おだ・のぶなが)じゃ。その名のとおり織田信長の英霊じゃが、何故か女になってしもうた。しかし天下統一目前まで行った私の指揮能力は衰えておらんぞ」
「パートナーの桜葉 忍(さくらば・しのぶ)だ。主に教官機を狙い撃ちする。戦闘力の高いアルコリアさんにもブレイズ小隊に加わって欲しいと思う」
 忍がそう言うと、アルコリアは
「了解〜♪」
 と答えた。
「雑魚掃討部隊【アサルト小隊】のシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)です。軍事知識はありませんがイコンの操縦には習熟しているのでそちらの面から小隊をサポートします」
「ワタシはミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)だよ。一応今のとこうちの小隊に入るのは4人だけど、対雑魚に専念したい人の参加表明はいつでも待ってるよ。地上班と空中班に分かれる予定だからね」
四瑞 霊亀(しずい・れいき)です。シフを守る魔鎧として頑張ります」
「カノン・強化人間救出班【リベレイト小隊】小隊長の柊 真司(ひいらぎ・しんじ)だ。レオが復帰したらレオに指揮権を渡す予定だ」
「私はヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)です。ダブル山葉も加えると8人になるので4人ずつに分けてカノンと強化人間の対応に向かう部隊に分ける予定です」
「カノン洗脳解除の中心となる【ハロウィン小隊】、そして【Kバスター】のメインを務める茅野 茉莉(ちの・まつり)よ。他のメンバーは先行した榊 朝斗も含めて基地に潜入して工作を行うから、実質的にイコン戦力は【ハロウィン小隊】だけになるわね」
「パートナーのレオナルドだ。KAORI殿に洗脳解除プログラムをインストールしてある。茉莉殿の機体とカノン殿の機体が接触できるようにして欲しい。また、対洗脳プログラムと敵の行動予測プログラムも作ったのでそれを皆に配布しておこう。それから、教官と強化人間については無力化する手立てがある。スパイがいるとまずいのでここでは詳細は話せないのだがな」
 レオナルドにはなにやら秘策があるようであった。
「我はダミアン・バスカヴィル(だみあん・ばすかう゛ぃる)だ。レオは空母で情報管制をやるので、我が茉莉のサブパイロットを務める」
「【整備のリーダー】こと長谷川 真琴(はせがわ・まこと)です。みなさんにはやっておいて欲しい整備の内容や調整を提出してもらいますね。あと空母に整備班を配備しておきますので現場で修理・改修を行います。イコンの武器の弾倉は各武器一個しか携行できませんので補給はこまめに行ってください。それからリロードの瞬間は無防備になりますので気をつけてくださいね」
「あたいはクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)だ。一応、空母は着陸できないからどこか後方に補給・整備と治療の拠点を作ったほうがいいと思うな」
 クリスチーナの言葉に真琴は
「それもそうね。山葉校長、兵站の方はしっかりと準備をお願いします」
 と言った。
「了解。戦略、戦術と共に兵站は基本だからな。補給については蒼空学園が全面的に支出する」
 涼司がそう答えた。
「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語るという格言がある。おっと、申し遅れた教導団の鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)だ。現場ではS@MPに入るがそれまでは我々教導団が戦略と兵站についてアドバイスさせてもらう」
鷹村 弧狼丸(たかむら・ころうまる)だよ。兵站では情報の漏洩は重大な痛手になるから管理はしっかりとね」
「わかった。教導団のメンバーにはそちらの方面でも協力を要請する」
「情報網の構築と情報の管理は任せて。欺瞞情報として、攻撃する方向とは逆から地上の森に紛れて教導団の部隊が攻める気配があるようにネットに情報を流す感じの事を提案するわ。あ、私は天貴 彩羽(あまむち・あやは)よ」
スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)でござる。彩羽殿のパートナーとしてイコンの操縦を行うでござるよ」
「S@MP男性ボーカル、フレイのパートナーのアポロン・サン(あぽろん・さん)です。歌による戦域支配を行います。茉莉さんはKAORIさんによろしくとお伝え下さい」
「了解」
「それから、イコンは基本的に各自のものを使用しますが飛行不可の機体には天御柱学院の機体を提供していますので申し出てください。フルチューン済みです」
「よし、だいたい部隊分けはこんなところか。ここで一旦休憩を入れて30分後に軍議を再開する」
 涼司がそう言うと各自トイレや軽食を取りに行ったり、話し合いを行ったりし始めた。