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リアクション
決戦 その現場では
鏖殺寺院の指揮官は、最後の一人になるまで抵抗を続けた。それを制圧したのは、写真の通り、華麗かつ強力な面々である。(→契約者と変身ヒーローと戦闘メイド、寺院と相対す)
その一人、蒼空の騎士パラミティール・ネクサーは事件後、「悪しき者が無辜の民を傷つけるとき、俺は現れる」と言い残し、その場を去った。
蒼空学園の草薙 武尊さんは「武者修行のめにやったこと」と、奥ゆかしく語った。
百合園女学院の桜月 舞香(さくらづき・まいか)さんは「悪党どもにお仕置きしようと思った」と正義感をあらわにしていた。
いずれも頼もしく、契約者の力により平和が守られたことを実感させてくれる。(文責:卜部 泪)
広い部屋だ。エヴァルトと武尊が辿り着いた時、リーダーは銃を手に、数人のソルジャーたちと共に最後の防衛ラインを作っていた。
「報道を制限しようなど、このオレがゆるさん! おとなしく投降しろ、さもなくば、痛い目を見るぞ!」
エヴァルトが指を突きつけ、叫んだ。後ろに着いた泪がその様子をカメラに押さえている。
「そんなふざけた格好をしたやつに、止められてなるものか。やれっ!」
リーダーの一喝のもと、ソルジャーたちが一斉に銃を構える。
「下がっておれ!」
武尊が泪に向かって叫び、壁沿いを走る。銃を向けたソルジャーの何人かがそちらに気を取られた瞬間に、エヴァルトが信じられないような加速をつけて突っ込んだ。
「おおおっ!」
弾丸をスーツが弾くのに任せた大ぶりの蹴りが、ソルジャーたちをまとめてなぎ払う。
「ふ……ッ!」
武尊の鮮やかな連射が、ソルジャーの腕を打ち、銃を取り落とさせる。一瞬のうちに、ソルジャーの約半数が戦闘力を奪われた。
「ひるむな、数はまだ有利だ!」
リーダーは自らも銃を抜き撃ち、部下に叱咤を飛ばす。
その背後。突然、天井の一部が落ちた。
「舞香ちゃん、今!」
「後ろから、ごめんあそばせ!」
桜月 綾乃(さくらづき・あやの)の祝福を受け、桜月 舞香が片手に光条兵器であるバトンを華麗に回転させて迫る!
「何……くっ!?」
思わぬ奇襲に対して、リーダーを守るためにソルジャーが飛び出す。舞香がバトンで打ち倒したものの、その隙にリーダーは一撃を放ち、舞香は再び後ろへ下がることを余儀なくされた。
「おお、装着ヒーローに加えて戦闘メイドまで! これは記事が華やかになりますよ! こっち向いてください!」
「え、えへへー」
カメラを向ける泪に答えて、思わずバトンを掲げてポーズを取る舞香。
「って、やってる場合じゃないよ!」
背後の綾乃が、思わず叫ぶ。リーダーは短い指示でソルジャーたちを配置し直し、三方に向かわせたのだ。
「……いや、それでいい。その位置がベスト」
と、小さく声が聞こえた。
「撃て、姫神!」
瞬間、窓が叩き割られ、猛烈な衝撃が部屋の中に吹き荒れた。
「うおっ!?」
「くうっ!?」
皆が叫びを上げる。ソルジャーたちがなぎ倒されて、リーダーも壁に打ち付けられる。
「緋雨が入射角度を計算すると言っていたが、バカにはできんのう。見事、決まったな」
通気ダクトからするりと、天津 麻羅(あまつ・まら)が這いだしてきた。
『麻羅さんが現場から修正してくれたおかげです。あとは、よろしくおねがいしますね』
狙撃を行った櫛名田 姫神(くしなだ・ひめ)がテレパシーで返事をした。
「あ……あんな狭いところに隠れていたの?」
「すごい。私たちじゃ、きっと無理だね」
ダクトから現れた麻羅に驚きの声を上げる舞香と舞香。確かに、いろいろつっかえそうではある。
「そんなことを言っている場合ではない、早く捕まえんか!」
麻羅が叫ぶ。むっとしたりはしていない。してないったら。
「ああ、確保だ。あんたの得意は指揮だろ。部下がやられちまったんだ、抵抗するだけムダだぜ」
「く、っ」
エヴァルトが泪から手錠を受け取り、リーダーの両腕にかけた。
最後の事実 鏖殺寺院の目的やいかに
事件後、逮捕された鏖殺寺院のリーダーである技術官僚へ、匿名の契約者がインタビューを行った。本記事では、その内容の全てを掲載し、記事のまとめとしたい。
以前から蒼空新聞社では契約者、およびパラミタ開発に極めて好意的な観点からの報道を行っていた。しかし、読者諸君には、もう一度考えてもらいたい。はたして、一面からのみの情報が正しいのだろうか。あるいは、別の観点からは別の意見が、価値観があるのではないだろうか。
今回の事件は、その価値観の相違が引き起こしたことだと言える……。(文責:卜部 泪/トレイシー・イエロー)
「聞きたいんだけど」
その場に、新たな声が響いた。
「取り込み中かな?」
桐生 円(きりゅう・まどか)だ。
「いや。……今終わったところだ」
武尊が答え、場所を譲った。ありがとう、と告げて、円はリーダーへと近づいた。
「嘘はつかないでね。ついても、分かっちゃうから」
円の後ろについたオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が告げる。
「まずは、確認させて。あなた、見たところ地球人みたいだけど……本当に寺院の人間?」
「ああ。……生まれながらではないが、寺院の思想に従うものだ」
「嘘ではないようね」
オリヴィアが問い、確かめた。うんと円は頷く。
「気持ちは分かるんだけどさ。こんな事しても評価が下がるだけじゃないかな?」
その問いに、リーダーはにやりと笑った。
「私は、そうは思わんな」
「……どういう意味だ?」
エヴァルトがいぶかしげに聞いた。
「この結果を見ろ。私たちはひとりも死傷者を出さずに占拠をしていたというのに、お前たちはビルを爆破し、我々を暴力で制圧して……」
「それは、あなたたちが抵抗したからじゃない!」
と、舞香。
「そうかもしれない。だが、世論はどう思うかな? 私としては、契約者の過剰な暴力は危険だと思うがね」
「それは……」
泪が思わず漏らす。事件の性質上、ほぼ蒼空新聞が独占的に情報を握っている状態だ。だが、蒼空新聞が契約者に対して協力的であるように、批判的なメディアもまた存在する。そういったメディアが、この結果を見て、どういう報道をするか、想像に難くなかった。
「最初から、ボクたちに暴れさせるのが目的だったわけ?」
「この新聞社に制裁を加えようという気もあったさ。だが、寺院の他のグループのように、殺しや破壊で主張をするようなことはしたくなかった」
「嘘はついていないわ」
オリヴィアが言う。円はやれやれとため息を吐いた。
「……歪んでるね。でも、ちょっぴり思い通りになったわけだ」
「ああ。お前たちの中にも攻撃的な思想を持ち、正義の冠さえあれば暴力を震うことをためらわない者が居る……それが証明できればよかったのさ」
「そのことを、彼らは知っているの?」
円が倒されたソルジャーたちを一瞥して問う。
「いいや。だが、彼らも契約者に対して反発を覚えているのも確かだ」
「そう、なるほどね」
円はきびすを返し、泪に向かって何かを投げてよこした。
「わわっ!?」
驚いた泪が慌ててそれを両手でキャッチ。どうやら、録音機らしい。
「今のインタビュー、あげる。でも、ボクが聞いたなんて書かないでよね。プライバシーを尊重して」
「は、はい。ご協力、感謝します」
「どういたしまして」
オリヴィアが答え、部屋を出る。
「……行くぞ」
エヴァルトが告げる。リーダーは、いまだ自分の思想と主張に恥じる様子もなく、堂々と連行されていった。
……こうして、静かに事件は収束した。
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