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不思議な花は地下に咲く

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不思議な花は地下に咲く

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     ◆

「それではみなさん、注目してくれるかな」
 今や彼らの中から若干距離を置かれているウォウルは、しかしそんな事など構う事なく、大声でそういうと全員の前に躍り出る。目の前に、大きく口をあける洞窟の入り口。
「いいかな、これから進む道は、あまり安全とは言えない道だよ」
 ウォウルが大きな声で、全員に聞こえる様に言う。
「具体的に、どう安全じゃないんです?」
 腕を組みながら、和輝が尋ねた。
「なんか変なものでもでるんじゃない?」
 隣にいたレキがそんな事を言いながら、両の手をだらりと垂らし、幽霊の真似をした。
「未知の生命体が出てくる、とか?」
「まさか。それはないでしょう」
 北都の言葉にリオンが苦笑しながら突っ込んだ。
「ふふん、さて、何が出るか。そんなもの、此処で言ったら詰まらないでしょ。だからから内緒でーす。兎に角、気を付けないと危ないから、ちゃんと覚悟して向かってね」
「ウォウルさん、相変わらずキモいですね。うふふ……みなさん、ドン引きしてますわよ?」
 ようやく目が覚めてきたのか、ラナロックが笑顔でそう言った。
「ラナロックさん、幾らなんでもそれは言い過ぎな気が……」
 隣から恐る恐るカムイがラナロックに呟いた。
「うんと……なんかもう慣れちゃったね。ラナロック先輩の毒」
「朝、お会いした時からずっとあんな感じでしたしね」
 綺人とクリスが苦笑しながら、ラナロックに聞こえない様にそう呟いた。
「うふふ。私、そんなに毒付いてないですよ」
 決して綺人とクリス向けられた言葉ではないが、その発言を聞いた二人はぎょっとして肩を竦める。
「まぁまぁ、どうでもいいけど、本題に入っても良いかな?」
 ウォウルの言葉で、その場の全員が沈黙した。
「これから、僕たちは三つの班に分かれて探索をしようと思ってね。それで、愛美ちゃん、ラナ、そして僕の三人を基本に班を作って行こうと思うんだ。適当にみんなで別れちゃえばいいから、一緒に行きたい人と――って、あれ?」
 ウォウルが言い終る前に全員が動き始め、必然愛美の前に大勢が固まっていた。
「先輩方には悪いですが、私たちは愛美ちゃんについていこうと思います」
「見届けたいしねっ! 愛美が幸せになるとこ」
 ベアトリーチェと美羽が、愛美の前に立ってそう言った。
「それに、言いにくいですが、先輩方はちょっと個性が強すぎて、苦手と言うか……」
 和輝が苦笑を浮かべながらそう言って、愛美の元に着く。スノー、アニスもその意見には賛成らしく、和輝と共に愛美の元へと向かった。
「あらあら……随分と私、嫌われたみたいで……うん?」
 自分の近くにいる数人を見て、ウォウルが言葉を止めた。本人としてもこれは想定外だったらしい。
「そんな事おっしゃらないでくださいな」
「確かに先輩とは合わないなぁ、と思いますけど」
「北都がいるなら、私はどなたでも良いですしね」
 綾瀬が笑いながら言うと、北都とリオンがウォウルへと言った。
「そうですか。僕は主に、皆さんの補佐に入ろうと思っていたんですがね?因みに僕が進むコースは、お二方に進んでもらうルートに所々合流できるので……必然そういう役割になってしまうと思いますが……」
 ウォウルの追加の説明を聞いた途端、どうしようか迷っていた真人がウォウルの近くにやってきた。
「そういう役割なら、俺も先輩と一緒に行きますよ」
「え、ちょっと!本気で言ってんの?」
 慌ててついてきたセルファはしかし、ウォウルの顔を見て若干引き攣った様子になる。
「この人、苦手なんだけどなぁ……」
 彼女の呟きを余所に、ウォウルは辺りを見回した。
「愛美ちゃんはみなさんに守ってもらえる。僕のところには数人いてくれて……ラナのところには二人、ですか。ま、ならこれで決定としましょう」
 にっこりと笑顔を浮かべるウォウルを見る愛美が、思わず異議を申し立てる。
「私は良いですよ、みんな力強いですから。でも……ラナロックさんたち三人だけじゃ危ないですよね?」
「確かに。二人がいるから良いとしても、危ないと思うが」
 エヴァルトも少し不安げにそんな事を呟く。
「確かに……私たちだけだったらちょっと心細いですよね?」
「何を言うか。我輩とおまえで先輩を守ればそれでいいではないか。それに、先輩から何か学べる事もあるやもしれんし」
 満夜の言葉にすかさずミハエルが反論する。その様子を見ていたウォウルが笑顔で一同に言った。
「大丈夫だよ、ラナは」
 目配せすると、どうやらやっと完全に覚醒したラナロックが微笑を浮かべながら一同を見渡す。
「私だって、少しくらいは戦力になると思いますわよ。これでもウォウルさんのパートナーとしてやってますから」
 事前の印象と言うのは随分と大事らしく、その言葉でリディア、フィオレッラ以外の面々はなんとなく納得してしまった。
「大まかな流れは――」
 ウォウルがそのまま話を続ける。一連の流れを聞いた面々が、それぞれに自分の役割を理解したらしい。
「えっと、私たちは愛美ちゃんを手助けしながら幻のお花を探す、で良いんだよね!?」
 結が自分たちの行動の要点をまとめる。
「私たちはラナロック先輩と一緒に花の探索。ですね」
 満夜も結にならって役割を述べた。
「それでそれを、俺たちと先輩でカバーする。って事で、いいんですよね。先輩」
「そういう事になるね」
 真人が最後に言うと、ウォウルに確認をした。
「じゃあ、みんなで今日一日、楽しく元気に出発ね!」
 愛美が音頭を取り、一行は洞窟の中へと姿を消していった。