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目指せ! イコプラマスター!

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 閑話休題。

   三回戦

○第一試合 グラディウス−真アグニ

 小鳥遊 美羽は本物のイコン製造に関わる一方、「シズモ」の常連としてイコプラバトルも楽しんでいた。イコプラも、自慢の改造イコプラだ。
 取り分け辻永 翔とは時折顔を合わせており、ちょっとしたバトルを楽しむこともあった。一度は、こういった正式な試合で戦ってみたいと思っていたのだが――。

「へっ、姉ちゃんよ! このバトルに俺が勝ったら、後でイイコトしねぇか?」
 美羽は南 鮪を真っ直ぐに指差し、大鋸に言った。
「ちょっとダーくん、この趣味の悪いモヒカン馬鹿、後でシメといて」
 自分もモヒカンなだけに、大鋸は二つ返事というわけにいかなかったが、当の鮪は、
「ちょ、ちょ、冗談じゃねぇか。ったくよ〜」
と舌打ちした。パラ実出身者としては、大鋸は怖い存在だ。まして今の彼は、敗者復活戦に参加できなかったことで不機嫌の極みにいる。
「何なら、そっちの姉ちゃんでもいいぜぇ?」
 鮪は観客席のベアトリーチェ・アイブリンガーに声をかけた。
「ちょっと! ベアトリーチェに手を出したら、私の足が黙ってないんだからね!」
「へっ、その可愛いおみ足がどうかしたか?」
『そろそろ試合をしてくれないか?』
 アリサのうんざりしたような声に、大鋸が慌てて試合開始を告げる。
「俺が勝ったら、よろしく頼むぜ!」
「馬鹿言わないでよね!」
 美羽が答えるより早く、真アグニのインシネレイターがグラディウスの足を溶かした。
「しまった!」
 美羽はグラディウスを下がらせた。更に迫ってくる真アグニに対し、ガトリングガンを発射したが、フレイムスロワーで相打ちになる。
『グラディウス、下がる下がる! しかし真アグニが執拗に食らいつく!』
「ヒャッハー! 足をやられたんだ! 逃げ切れると思うなよ! 何もかも燃やし尽くしてやる!」
 フレイムスロワーを立て続けに発射し、グラディウスの肩と頭部が一部溶けたところで、大鋸のストップがかかった。
「邪魔すんじゃねぇ!」
「ンだと?」
 ぎろり、と目玉が動いた。
「あ、いや、何でもねぇ。仕方ねぇ、俺の勝ちなんだろ?」
「そうだ。勝者、真アグニ!」
「よっしゃ! そこの眼鏡の姉ちゃん、俺が勝った! ついでにおまえも買ってやるから降りてきな!」
 ダン! と音がして、美羽のすらりとした足がフィールドに乗せられた。
「お? お? おまえが相手してくれんのか?」
「さっき言ったよねえ? ベアトリーチェに手を出したら、私の足が黙ってないって」
「へえ? 何してくれんだ?」
「美羽さんはテコンドーの達人です」
「……え?」
 ビュッと空気を劈き、美羽の爪先が鮪の喉元へ突きつけられた。
「喉仏って、潰すと大変らしいよ?」
「……あー」
「ちなみに私は剣の花嫁ですので、何かされたら、黙っていられません……取り敢えず、光条兵器使っちゃいますけど……」
「ま、まあ、今日のところはこの辺で勘弁してやらあ!」
 すっかり小悪党のセリフを吐いて、鮪は試合場を立ち去った。
『どっちが勝者だか分からないな』
 アリサが思わず呟いた。

  ×グラディウス−真アグニ○


○第二試合 HMS・レゾリューション―六天魔王

 桜葉 忍は「シズモ」が出しているイコプラバトル促進用パンフレットをめくりながら、ふむふむと頷いていた。
「イコプラは初めて?」
 見ると、ローザマリア・クライツァールが隣に腰を下ろしたところだった。互いに相手が試合相手のパートナーであることは、承知している。
「いやあ、信長が張り切っててね。俺は子どもの遊びだとばかり思っていたんだけど」
「改造にはお金がかかるし、ある程度年が行っているほうが有利なのよ。それに地球と違って、ここには本物のイコンもあるし」
「そこが俺には分からないんだけど」
「というと?」
「本物のイコンに乗りながら、プラモでも戦いたいと思う?」
 ローザマリアはしばし考え、こう答えた。
「その質問は、本物の戦をしながら、チェスをするのかという質問と一緒ね」
「え?」
「チェスや将棋が戦から生まれた遊びなのは知っているでしょ? 昔の人間にそんな質問出来る?」
 ――なるほどと忍は思った。
 これから戦おうとしているのは、日本の戦国大名・織田 信長と、イングランド女王エリザベス1世の英霊であることを思い出したのだ。

 共通点があるのは、信長にとっても承知済みだった。
「相手にとって不足なし! 私の六天魔王の強さを見せてやる!」
「こちらにとっても、手加減する謂れはない」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーは、フッと笑みを浮かべる。
 久しぶりにまともに試合が進みそうで、アリサも大鋸もホッとする。
「ファイッ!」
 二体は同時に大型ビームキャノンを取り出し、同時に引き金を引いた。その瞬間、自分たちの思考回路が似ていることを理解し、自分ならば次は相手を霍乱して攻撃すると考え、咄嗟に防御態勢を取った。
 これも同じだった。
 しかし、次が違った。
 自分なら接近戦だと考えたグロリアーナは防御体勢を取った。信長はそのまま突っ込んだ。HMS・レゾリューションは、空裂刀を華麗に捌いた。
「まだまだあ!」
 返す刀でHMS・レゾリューションの頭部を狙う。だがそれは、機龍の爪で弾き返された。
「何の!」
 信長は更に、空裂刀で切りつけることを指示した。
 しかしHMS・レゾリューションが一気に後方へ下がったことで、空振り、そこに大きな隙が出来た。
『HMS・レゾリューションの大型ビームキャノン!』
 六天魔王の右腕が大きく吹き飛び、「是非もなし」という信長の言葉と共に、決着がついた。

  ○HMS・レゾリューション―六天魔王×