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【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

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【空京万博】美しくも強くあれ! コンパニオン研修!

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AM11:53

「シェス、見つかった?」
「だめ、見つからないよ〜」
「「はあ」」
 未来パビリオンの衣装を着た御魂紗姫とシェス・リグレッタは、そろってため息をついた。さっきからずっとなななを探しているのだが、この広い万博会場ではそう簡単に見つからずに歩き続けている。
「あっちの人たちは?」
「相変わらずだねぇ」
 彼女たちが言っているのは、少し離れたところを歩いている四谷たち四名である。
「雅羅さんと一緒に探すのは良いアイデアだと思ったのに……」
「見事に失敗だったねぇ。まーちゃんはともかく、よーくんもるーちんも弟君もかなみん捜しに身が入ってないよ」
 二人の視線の先では、雅羅を巡る四角関係が展開されていた。
 本人は気づいていないが、残りの三名による水面下の熾烈な争いが起きている。
 紗姫の見る限り、四谷さんと想詠姉弟はなななさん捜索、雅羅さんのエスコート、お互いの牽制を意識している。
 まともにななな捜索を行っているのは雅羅さんだけなので、私たちが向こうの分まで頑張らないといけない。
 今も雅羅にポーズを要求して、撮影に勤しんでいる想詠姉の姿が見える。
「頑張ろう。あの人達は当てにならない」
「仕方ないね、なななさんと雅羅さんの為に「きゃあ!」何!?」
 悲鳴がした方を見ると、不良っぽい顔つきの男達の集団が、雅羅さんとぶつかって転んだようだった。彼らが台車で運んでいた大きな箱の内の一つが雅羅さんの上に落ちそうになって、慌てて四谷さんがキャッチしている。
 周りには、他にも何人か見かけた顔の人達がいる。
「ねえ、あの人達あたしたちと同じくなななさんを探している人達じゃない?」
「そうだね。まーちゃんが何か言ってるよ」
「あっ、なんか焦ってるよ」
「すまない、手を貸してほしい」
 離れた場所から状況を観察していた二人は、呼び声に振り返った。
 後ろにいたのは、想詠弟のようにビデオカメラを構えた二人のスタッフだった。どちらの顔にも見おぼえがある。
「私は叶 白竜(よう・ぱいろん)、こちらがパートナーの世 羅儀(せい・らぎ)です」
「御魂紗姫とパートナーのシェス・リグレッタです」
 そういえばコンパニオン研修の現場にいた人たちだったと思いだす。
「時間が無いから手短に。穏便に金元少尉を救出する作戦が、今の騒ぎで実行できなくなりました。向こうにいる想詠君とは、映画撮影でごまかすことで話がついています。君たちもそれに協力してもらえますか?」
 後ろを振り向けば、パラ実生たちが一斉に逃げ出していた。その後を雅羅を始めとしたなななさんを探す人達が追いかけていく。
「分かりました。こういう時の為に映画撮影のふりをしてますから任せてください」
「助かります。あと、この情報を彼らにそれとなく聞かせてもらえますか?」
 渡されたメモには準備中の建物の名前と、そこにパラ実生たちをティーカップパンダの偽情報でおびき出すことが書かれていた。
「シェス、こっちはお願いできる?」
「任せてよ〜」
「ありがとうございます。時間が無いのですぐにとりかかってください」
 白竜は言い終わるとすぐに通行人への説明を始めた。
「私は想詠君の方を手伝うよ。シェスは情報操作をお願いね」
「ふふん、これでも軍人よ。安心して任せておきなさい」

AM11:55

「えと、ここがキョウジが言ってた場所だよね。」
 三女のエクス・ネフィリムが、建物の前で確認するように口を開く。
「凶司の情報が正しければ、ここがパラ実生とつながってるかもしれないってことだけど……」
 次女のディミーア・ネフィリムは、皮肉げな口調で建物の入口を見ている。
「まあ、確かめてみれば分かるわよ〜」
 長女のセラフ・ネフィリムは、さして気負った様子もなく中に踏み込んだ。
 コンパニオン希望であることを伝えて待つことしばし、応接室に責任者の男がやってきた。
「あなたたちがここでコンパニオンとして働きたいという人達ですか?」
「そうよ〜」
 のんびりした口調でセラフが腕を組むと、豊かな胸がぽよんと跳ねる。
「えっと、ボクたちティーカップパンダに興味があって、それで応募したんです」
 もじもじしたエクスが、上目づかいで見上げる。
「アタシは二人の付き添いね。さすがにこの二人だけだと不安だし」
 ディミーアは大胆に足を組み替えながら、強気な姿勢を崩さない。
 現代パビリオンの衣装でタイプの違う美人と可愛い女の子に言い寄られた男は、思わず生唾を飲み込んでいた。
(クソッ! 見せつけてくれるじゃねーか!)
「しかし、こちらとしてもすでにコンパニオンの募集はすでに締め切っておりまして……」
 責任者の男は自分の欲望と葛藤しながらも、与えられた責務を果たそうとしていた。
 自分の権力を使った横紙破りはやれないことはないが、今回はすこしまずい事情がある。
(これは当たりみたいねぇ〜)
(どうするの、お姉ちゃん)
(まあ、あたしが聞き出すから、ディミーアとエクスは外を見張ってて)
(了解)
(分かった)
 男の内心の葛藤を感じ取ったセラフは、さらに仕掛ける。
「ここの責任者はあなたでしょ? 応募は締め切ったって言ったけど、選考はまだなんでしょ? そこにアタシ達の書類をまぎれこませれば良いだけ。何も難しいことはないじゃない」
「しかし、規則を破るわけには……」
「大丈夫よ〜。バレたりしないわ〜。あなたはそんなヘマをするような人じゃないでしょ? それは今の貴方の立場が説明してるわ〜」
「ううっ……」
 テーブルを挟んで向こう側にいる相手に向かって、ゆっくりと歩み寄りながら暗示をかけるかのように語りかける。
 男の視線はセラフの胸元に吸い寄せられ、男の耳にはセラフの言葉がしみこんでいき、男の表情はすっかりとろけていた。
(お姉ちゃん、すごいね)
(私もビックリよ)
 二人の妹も姉の雰囲気にすっかり呑まれていた。
「……分かった」
 セラフの胸に抱かれた責任者の男の目はとろんとしていて、軽い催眠状態になっているように見える。
「お姉ちゃん、催眠術なんて使えたんだね」
「あら違うわよ、エクス。これは女の魅力よ」
「私には無理だよ、ソレ」
「ふふふ、ディミーアは確かに無理そうね。さあ、さっさと必要なことを聞き出して凶司ちゃんに連絡しましょうか」
 そう言ってセラフは妖艶に笑った。
「あら、ひょっとしてもう終わってしまったのかしら」
「まだっぽいけどな」
 そう言って部屋に入ってきたのは、リリィ・クロウと伏見明子の二人だった。