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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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ザナドゥの方から来ました シナリオ2
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リアクション

                              ☆


「ふっふっふ……この時を待っていましたわ!!」
 物陰から神皇 魅華星(しんおう・みかほ)が飛び出してきた。
「え、きゃっ!?」
 横っ飛びにつかさに飛びついて、そのまま抱きつく魅華星。
「ふふふ……わたくしこそ魔王の転生……Dトゥルーごとき雑魚は相手にはいたしません。
 あんな醜いタコがわたくしの部下のはずがありませんもの、このようにかわいらしくも美しい者こそが私の寵愛を受けるのにふさわしいのですわ!」
 そのまま、魅華星はつかさを抱きかかえたまま地獄の天使で飛び上がり、空中宮殿を脱出する。

「あ、待てよ!!」
 康之はその後を追おうとするが、そこを某は止める。そろそろザナドゥ時空の影響が切れてきたのを感じていた。
 さすがに、無敵のヒーローというわけではない自分たちには、荷が想い問題になってきている。
「待て康之、深追いするな!」
「でも……いいのかよ!?」
「ああ……あの様子ならとりあえずDトゥルーの力からは解放されたようだし、俺の目的も達したしな……」

「そろそろ危ないですよ、脱出しないと!!」
 コトノハが叫ぶ、いよいよ落下速度が増している宮殿から脱出しなくてはならない。
 某と康之、そして綾耶とフェイ、そしてコトノハとルオシンはそれぞれに脱出していく。ライカとレイコールは黒コゲになったブレイズをかついて脱出だ。
 康之は、脱出の傍ら、逃げ遅れている人がいないかどうか確認しながら進んでいた。

 そこに、崩落している王の間で、ひとり玉座に座って悦に入っているコンクリート モモ(こんくりーと・もも)を発見した。

「ふふふ……この宮殿は私のもの……自分でユートピアを造るのも悪くないかしら……」
 康之はモモの後ろ襟を引っつかんで強引に救助する。
「あ、ちょっと何すんのよ!!」
「うるさい、言ってる場合か!!」
「あー、私の宮殿がーっ!!!」
「どうせ崩れるっつーの!!」

 そこに現れたフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)が康之の背中にのしかかった。
「わ、何だ!?」
「オデノカラダハボドボドダー!!」
 いまひとつ聞き取りづらい声でフィーアは康之に絡みつく。ザナドゥ時空の影響で自分の身体が次第に弱っていき、崩れていくと思い込んでしまったフィーアは、絶望感にさ迷っていたのである。
 その辺のコントラクターに絡みついたり、抱きついたりして迷惑をかけていた、とも言う。
「ちょ、ひっつくな、何言ってるかわかんねぇし!! あとなんで下半身はパンツなんだ!?」
 フィーアの下半身は何故か『魔女のパンツ』という純白のローライズのパンツで覆われているが、どうみても下着だ。
 だが本人の主張によればそれはどうもパンツじゃないから恥ずかしくないらしい。
「いや、僕のこれはパンツじゃないか」


「どうでもいいから早く逃げろおおおぉぉぉ!!!」


 フィーアとモモとの不毛な会話をぶっちぎって、康之は走る。軽い女性とはいえ、二人を小脇に抱えて走る彼の胆力は、なかなかのものであったと言えよう。


                    ☆


「――このままでは、街に落ちるかも知れんぞ!!」
 カメリアは叫んだ。
 『心臓部』に残ったメンバーはわずかだ。
 それ以外に、Dトゥルーと戦っていたコントラクターは脱出した。そして、ザナドゥドライブが破壊され、完全に制御を失っていたはずの宮殿が、落下を始めながらも、まだ墜落していない理由がここにあった。


「お兄ちゃん、頑張って!!」
 ノーン・クリスタリアが声を掛けているのは、御神楽 陽太だ。
 陽太は、ザナドゥドライブが破壊される前からずっとザナドゥドライブの解析に努め、なんとか制御法はないものかと独自に研究していたのである。
 その結果として、完全とはいかないがザナドゥドライブのコントロール部分をエンジンであるドライブ本体からの切り離しに成功していたのだ。
 今の空中宮殿は、エンジンとブレーキの壊れた車のようなもの。辛うじてハンドルだけが効く状態であった。


「陽太……どうじゃ」
 カメリアは声をかけた。エンジンがない以上、宮殿を再び浮かび上がらせることはできない。可能な選択肢としては、せめて地上に被害が少なくすることくらいだった。
「難しいですね……!!」
 陽太が懸命に操作しているといはいえ、もう時間はない。今の状態はツァンダ郊外の上空を斜めに落下中。
「陽太……ちょっとだけ方角を変えられぬか……10時の方角じゃ」
「え?」
 陽太は、カメリアの示した方角を見た。そこには、高くそびえるブラックタワーが見える。
「……しかしカメリアさん……あそこには、君の!!」
 だが、カメリアは陽太の手を握り、懇願した。

「頼む……陽太。街には大勢人がおる……山ならば動物たちはフトリが逃がしておるから、被害は最小限じゃ……。
 街には……お主の大切な者もおるじゃろう……!!」

 その言葉に、陽太は頷く。
「わかりました……でも、どうか約束してください。君も……みんなと一緒に必ず生きて帰る、と」
 その真剣な視線に、カメリアは大きく首を縦に振った。
「当然じゃ……儂とて死にとうないわ……おい、ウィンター! ちょっと頼みがある!!」
 ノーンと一緒に陽太を励ましていたウィンターも、ひょっこり顔を出した。
「呼んだでスノー?」
「実はな……できるか?」
 ウィンターに耳打ちをするカメリア。ウィンターは、すこしだけ難しい顔をしたが、やがて頷いた。
「わかったでスノー!! やってみるでスノー!!」


                    ☆


『退却だ!!』
 Dトゥルーが倒れたことを知った魔族たちは、カメリアの本体、椿の古木を諦めて逃げ出した。
「へーんだ! やっと諦めたか!! 帰れ帰れ!!」
 ずっと魔族たちと戦っていたアキラ・セイルーンとアリス・ドロワーズは胸を張って、魔族たちが逃げていくのを見送った。
「ねぇ……アキラ……アレ……」
 アリスが指差す方向を見るアキラ。

「あー……嫌な予感はしてたけどよぉ……やっぱりか」
 アキラは、急いでカメリアの本体、椿の古木に登り始めた。


「カメリアならこうするって思ってたぜ……けど心配すんなよ……必ず護ってやるから……とはいえ、せめてアイツがいればなぁ」


 と、アキラが一人呟いたところに、少女がひょっこりと顔を出した。
「呼んだでスノー?」
 ウィンター・ウィンターだった。アキラは驚きの声と共に、疑問を発する。
「おわぁっ、ウィンター、何でここに!?」

「カメリアに頼まれたでスノー。『アホが山におるから分身を飛ばして助けてやってくれ』って」
 ウィンターは手早くアキラに『雪だるマー』を装着する。
 アキラは、鼻の下を少し擦って、落ちてくる宮殿を見上げた。
「へっ……お見通しってワケかい……じゃあ、いっちょやってみっか!!!」

 カメリアと陽太が操縦する空中宮殿は、ツァンダの街のほど近く、カメリアの本体がある山のてっぺん、ブラックタワーに激突した。
「おおおおおおぉぉぉっ!!!」
「きゃあああぁぁぁっ!!!」
 カメリアとノーンの叫び声がやたらと長く響いた気がする。

 ブラックタワーに激突した宮殿は、いよいよその原型も留めないほどに砕けていく。ブラックタワーも同様に砕け、山の頂上に瓦礫の山を降らせた。

 椿の木のてっぺんで両手を広げ、アキラは叫んだ。
「ウィンター、力を借りるぜ!! 嵐のブースト!!」
 アキラの雪だるマーが嵐の力を発揮し、『風の鎧』を強化する。
「うおおおぉぉぉ!!!」


 『嵐の鎧』となった暴風はアキラを中心に椿の古木を取り囲み、宮殿の本体とブラックタワーの残骸を、わずかに逸らした。


                    ☆


 轟音が辺りに響き渡った。ブラックタワーに激突した空中宮殿は、まるでソリのようにタワーの瓦礫ごと山の斜面をすべり、カメリアの本体とアキラのわずか数m横を通り過ぎて行った。

 その衝撃はまるで地震のように街を揺らしたが、直接の被害はなかったという。

 宮殿の残骸はカメリアたちを乗せたまま、山の斜面を削り取って落下し、麓にあった小さな湖に着水した。
 どうやら、そのまま湖底を打ってしまったのだろう。湖の底にあった水脈から水が溢れ出し、山の麓に大きな湖を作った。


「あ、あたたたた……」
 ほどなくして、湖からカメリアたちが脱出してくる。びしょびしょになりながらも、どうにか無事。
 山の頂上でブラックタワーの前にいたコントラクター達も、その様子を見て念のため宮殿の残骸の中に逃げ遅れた人がいないかどうか調べに行く。
「!!」
 湖から上がり、着物の水を絞っていたカメリアは、視界の端にアキラの姿を見つけた。
「やべ」
 カメリアの無事だけを確認しに来たアキラは、カメリアを一目見ると、背中を向けて逃げ出した。
 事件のあとは色々やらかしたアキラをとっちめるためにカメリアが追いかける。明はしばらく街をぶらつい部屋にも帰らない。
 それがここのところの二人の付き合い方だったが、今回は違っていた。

「アキラ…待て!! 待てというに――アキラ、待って!!」

 その声の調子がいつもと違うことに気付いたアキラ。振り向いて、その場にたたずむ。
「お願い……だから……」
 カメリアの小さな肩が震えている。山の頂上にあったカメリアの社はブラックタワーの残骸で粉々であろう。しかし、カメリアには傷一つない。
 アキラが、命がけでカメリアの本体を護ったからだ。
「カメリア……」
 アキラは、カメリアがとぼとぼと近づいてくるのを待った。
 カメリアは、アキラの服の裾を掴んで、少しずつ言葉を発した。
「ア……アキラ……その……護ってくれて……ありがと……」
 消え入りそうなカメリアの声は、もう聞こえない。そのまま、カメリアは声もなく泣いた。Dトゥルーの死に様に、何か感じることがあったのだろう。アキラはそれをどうすることもできずに見守った。


                    ☆


「リッパー様……魔界へと帰ってしまわれましたか……」
 葉月 可憐は呟いた。宮殿の残骸から、いくつもの光が登っていくのを、山の頂上から見守っている。そのうちの一つが、微笑みかけたように見えた。
「まったく……上司の許可なく命を賭けるなど……いつか魔界で会ったら、教えてやらんとな」
 ジークフリート率いる『魔王軍』もまたそこにいて、光の行方を見守っていた。機晶姫 ウドもその中にきっといるはずだから。


「……まったく、とんだ騒動だったでヒャッハー」
 で、そこにいるのがバーサーカー ギギである。


「ちょ、何でいるのっ!?」
 同じく『魔王軍』のセラが驚く。Dトゥルーと戦っているのは確かに見たが、ずっと戦っていたので、いつのまに脱出したのか分からなかったくらいだ。
「しかも喋ったよ!?」
 ミシェルも驚いた。『王の魔』や『心臓部』で見たギギは『ヒャッハー』しか喋れないはずではなかったか。

 それについては、茅野 菫の仕業である。
「うん、脱出前に出来るかなって思ってやってみたんだよね。
 『いい加減不便だから言葉でちゃんとしゃべれ』って。
 どうもザナドゥ時空とシンクロしてたみたいで……何か喋りだしちゃった。
 まあいいじゃん、おかげで抜け道を通って比較的安全に脱出できたんだし」
 どうも、菫がザナドゥ時空とのシンクロでギギに知性を与えてしまったらしい。正確にいうと、ギギにはもともと言語を理解する能力が備わっていたのだが、今までしゃべる必要がなかったため、喋らなかっただけなのだ。
 きっかけを与えただけなので、ザナドゥ時空の影響が切れた後もギギはしゃべることができる。

「俺はこれからも魔族と戦うでヒャッハー!!
 残念ながら姐さんとはここまででヒャッハー!!
 また魔界で会おうでヒャッハー!!!」
 ギギは菫と硬い握手を交わし、旅立っていく。
「いい、あんたはもう全ての生き物を殺すというDトゥルーに課せられた制約に捕らわれることはないの。
 自分の思うように生き、そして旅をしなさい」
 菫は、いつまでもギギの後ろ姿に手を振っていた。

「さてと……では、帰りましょうか」
 可憐はパートナーのアリス・テスタインに微笑みかける。


 その笑顔は、最初にここい来た時よりも、少しだけすっきりして見えた。


「ふぅ……しかし、ルシェンが暴走して、アイビスがネコになったのはビックリしたよ」
 とい榊 朝斗はため息をつく。乗り込んだは良かったが、いまひとつ活躍できなかったが、まあ生きているだけで良しとしよう。
「うう……ごめんなさい、朝斗」
 ザナドゥ時空の影響から脱しても、記憶は残っている。ルシェン・グラシスは恥ずかしさに顔を赤らめて、うなだれた。
「うん……まあ、しょうがないよ、ルシェンのせいじゃないんだし……アイビスは大丈夫?」
 その問いかけに、アイビス・エメラルドは冷静に答えた。
「――最初から最初まで何の問題もありません」
 その様子に、朝斗いちおう後遺症がないかどうか確認しようと思い、軽くチェックしようとした。
 だが、アイビスは朝斗の顔面を右手で覆い、そのままアイアンクローで締め上げた。
「ア、アイビス?」
 ぎりぎりと締まるアイビスの指。
「問題ありません」
「だ、だってさっきネコになってあだだだだ」
「問題ありません――榊 朝斗の記憶の消去を行います」


 つまりそれは、忘れるまで締めるということですよね。


                    ☆


「……いつの間に」
 秋葉 つかさは呟いた。宮殿から脱出し、ちょっと遠くに離れたあたりに着地して、飛んで運んでくれた神皇 魅華星と共に近くの町に寄った時のことである。
 時間も遅くなったので宿を取ったのだが、その時初めて、つかさは着物の裾にメモ帳の切れ端がねじ込まれていることに気付いた。

『何かあったら連絡して』
 という走り書きと共に記された、匿名 某の住所と電話番号とメールアドレス。
 つかさは、それを破り捨てようかと思ったが、何となく気になったのでそのメモを胸元にしまいこんだ。

「やれやれ……おかしなひと、ですね」
 それはそれとして、と魅華星と相部屋を取ってベッドに横たわるつかさ。
 今夜は、熱い夜になりそうだ。


                    ☆


 後日。
「これでよし……と」
 茅野瀬 衿栖と茅野瀬 朱里はカメリアの本体の横に、小さな墓を作った。
 朱里は黙って手を合わせ、衿栖は傍らのカメリアに話しかけた。
「ありがとうございますカメリアさん……ここにお墓を作ることを許してくれて」
 カメリアは複雑な気持ちでその墓を見つめた。もちろん、それはDトゥルーの墓だ。
 秋葉 つかさに力を吸われたDトゥルーは、そのまま己の身体を維持できずに、魂と肉体を切り離して魔界へと帰って行った。
 また数千年の眠りにつき、ひょっとしたらまた復活するのかもしれない。
 その亡骸を衿栖は、カメリアの椿の木の横に作らせて欲しいと頼み、カメリアはそれを許した。

 両手を合わせていた朱里が呟いた。
「ここならきっと……寂しくないよね……」
 カメリアはその様子を見て、そっと呟いた。
「ああ……そうじゃな」
 山の頂上の瓦礫の山は、Dトゥルー達の魂が魔界へ帰ると同時に消滅し、山そのものも日々ごとに整理が進んでいった。山の頂上から麓までは大きくえぐれた道ができ、麓には大きな湖が出来てしまったが、街にも山にも人的被害はなかったことにカメリアは満足していた。

「まあ……住むところはなくなってしもうたがな」
 カメリアは呟くが、まあこれも仕方ないこと、と虚勢を張って見せた。
 衿栖はその様子を見て、微笑んだ。カラ元気も元気のうち。この様子ならば心配ないだろう。

「ところで……この山羊は誰が飼うんじゃ?」
 それは、元は魔族6人衆だった『ザナドゥの地祇 メェ』が封印された黒山羊だった。力が封印されたメェは、今やただの山羊である。
 しかも、魔族たちが魔界に帰った今となっては、本当に封印が施されているのかも怪しい。

「誰って……カメリアさんでしょ?」
「……うん……そうなる気はしておった」

 そんなやりとりを頼んで、衿栖と朱里は帰っていった。
 山からの帰り道。
 朱里はちょっとだけ振り返って、呟いた。


「また来るね……安らかに眠ってね。小さいけれど……今度こそ、あなたのお城だから」


『ザナドゥの方から来ました シナリオ2』<END>


担当マスターより

▼担当マスター

まるよし

▼マスターコメント

 皆さんこんばんは、まるよしです。
 『ザナドゥの方から来ました シナリオ2』をお送りいたしました、これが13作目になりますが、いかがでしたでしょうか。
 少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

 今回は少し締め切りに遅れてしまい、今がリアクション公表日そのものです。大変申し訳ありません。時間帯によっては、一日遅れてしまうかも知れません。

 今回は初の続きものということで色々と不手際もあり、皆さんのアクションを消化しきれたとはいえない状態になってしまいました。
 いつもより更にバランスが悪くて申し訳ありません。

 それでは、今回はこの辺で。
 ご参加いただいた皆様、読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。

 色々とミスもあるかと思いますので、もし何かありましたら、遠慮なく運営様にメールでご連絡くださいませ。可能なものに関しては、対処させていただきます。