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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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「みんなー!! 今日はありがとう!! また、どこかで会おうねー!!」
 美羽のライブは大声援のうちに終了した。
「お疲れ様でした、S☆ルシウスさん」
 引き上げつつ、そう感謝したコハクにS☆ルシウスが満足気に頷く。
「どこかで打ち上げしようよ!!」と言う美羽に、コハクとベアトリーチェが頷く。
「S☆ルシウスも来るでしょ? ……て、あれ?」
 舞台袖で振り返った美羽の前に、既に彼の姿は無かった。ただ、彼が居たと思われる場所には、そっと二本のドラムスティックが置かれていた。
 それを拾い上げたベアトリーチェが言う。
「本当に、嵐を呼ぶドラマーなんですね……あの人は」


 続いて、ステージに上がったのは、それぞれマイクを持ったジークフリートと846プロ所属の三名のアイドル、衿栖、未散、幽那であった。
「はい、長らくお待たせしました! 第1回ミス・セルシウスコンテスト! 優勝された方には大会委員長であるセルシウス殿から素敵なプレゼント、エリュシオンの龍の湯温泉2泊3日旅行と、幽那が愛情をこめて育てた極上の花束がプレゼントされます。そして、本日の司会進行を務めますのは、この俺、ジークフリート・ベルンハルトと……」
「「「皆さんこんにちわー! 846プロでーす!」」」

 衿栖、未散、幽那の三名が声を合わせて笑顔を振りまく。
 その足元には、衿栖の四体の人形と幽那の四体のアルラウネが主達に合わせて可愛くお辞儀している。幽那のアルラウネのうち、一体は舞台裏で鼻血を吹いていたらしい。
「「「うおおおぉぉぉーーーッ!!!」」」
「何だ何だ? 俺の時より歓声がデカイぜ?」
ジークフリートがおどける。
「そりゃあ、私達、アイドルですから」
 衿栖の言葉に、未散が突っ込む。
「待て待て、だから私はアイドルじゃないって……」
 すかさずジョニーが叫ぶ。
「未散ちゃん! 可愛いでゴザルよーー!!」
「……どうも生きる時代を間違えた武士がいるようね」
 未散の呟きに客席から笑い声が起きる。
「まぁまぁ、あなた可愛いんだし、仕方ないわよ? それに私達の中で一人だけビキニの水着着ているじゃない?」
「これは、違ッ……」
と、慌てて上に羽織ったパーカーで胸元を隠す未散。
「いや……寧ろ、パーカーから垣間見える太ももや素足の方がエッチじゃないか?」
 ジークフリートが真面目な顔で呟き、未散がその頭をハタく。
「ささ、未散がアイドルと判明したところで、そろそろ始めましょうか?」
 衿栖が、三人に目配せし、声を張り上げる。

「夏の太陽にも負けない輝きがここにある! ミス・セルシウス海水浴場コンテストの開催でーす!!!」

 衿栖の開会宣言にどっと沸く会場。
 予定では、この後、コンテストの審査員達を紹介する手はずであったが、衿栖が見ると、審査員席は空席のままである。
 そのため、暫しの間、ジークフリートと幽那による未散いじりが続いた。


 一方、ここはそんな会場の舞台裏手側である。
 そこにいたのはセルシウスであった。
 今までどこにいたのかはわからないセルシウスの表情は固い。
「契約? どういうことだ?」
 白色の毛並みを持つ体長1メートル程のリューグナー・ファタリテート(りゅーぐなー・ふぁたりてーと)がセルシウスを前に何かを迫っている。彼は通称「リュウベエ」と呼ばれている、言うなれば地球産ゆる族である。ファンシーな犬のような着ぐるみを常に着ており、誰も中の人を見た事が無い。巷では彼を『淫獣』と呼ぶ者達もいるという。
「面白そうな企画だからね、折角だからボクも利用させて貰おうと思ってね。ああ、契約というのは、ボクが行う事をキミ達の世界の言葉に自動翻訳しただけさ。本当の意味合いは違うんだけどね」
 ひどく抑揚の無い声で話すリューグナーだが、その口は一切開いていない。中の人が話をしているのだ。
「はいはい。皆さん、ここで集まったのは他でもない、審査ルールの取り決めのお話ですよ?」
 黒のショートカットの水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)がパンパンと手を叩く。
「セルシウスさん? ちゃんと審査のルールを明確にして貰わないと、私達も困ってしまいます」
 緋雨の言葉にセルシウスが俯く。
 緋雨のパートナーである天津 麻羅(あまつ・まら)がそんな様子を見て声をかける。
「どうしたのじゃ?」
「実は……私はいつからか記憶の大半を失っている。そんな私が貴公達の言うコンテストの審査委員長だとは……」
 思い悩むセルシウスの傍では、地面に頭が埋まる勢いで土下座しているクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)がいる。
「お願いしますッ!! ミスコンが開催されると聞いて、このお兄さんが黙っている訳がないんです!! どうか、どうかお兄さんも参加させて下さい!! 審査員としてッ!」
「貴公。顔を上げてくれ……今の私には人を審査する等という行為は出来そうにないのだ」
「……どうするのじゃ? 緋雨?」
 腕を組んだ緋雨がジッと考えこむ。このメンツの中では彼女の常識さが群を抜いていることは明らかであった。
「わかった! じゃあセルシウスさん、私が仮のルールを作ります。それで何か問題が起こるようなら、セルシウスさん、クドさん、リューグナーさん、私で臨機応変に対処する……というのでいかがでしょう?」
「そうしてくれると助かる……」
「お兄さん! 張り切っちゃうよぉぉ!!」
「ボクは契約者が一人でも多く見つかるなら、キミ達に協力してあげるつもりだよ」
 その後、麻羅が審査員を辞退したため、緋雨が新たに呼び寄せた海の家の店員のティファニー・ジーン(てぃふぁにー・じーん)を加えた五名の審査員達で吟味・推敲した『ミス・セルシウス海水浴場コンテスト』のルールは以下である。

・1.参加対象者はセルシウス海水浴場にいる女性(女装可)。
・2.参加者は、必ずビーチの特設ステージに上がること。また、自薦他薦問わず、ステージに上がった時点で参加者と扱う。
・3.参加者は何でもいいので自己PR、若しくは特技の披露をする。
・4.選考は審査員の得点と観客の反応に準ずる。
・5.審査員はそれぞれどういう観点で審査するかを予め明言する。
・6.審査員の持ち点は5点満点であり、各々満点である5点は一度しか使えない。


 尚、ルールの5番目について、事前に名言した内容は以下である。
・セルシウス審査委員長『文化レベル・知性・教養の高さ』
・緋雨審査委員長補佐『流行、髪型、容姿の総合ファッション性』
・クド臨時審査員『女性ぽさ・S属性・自分を好きになってくれるか否か』
・リューグナー審査員『年齢(実年齢より見た目の年齢)・魔力』
・ティファニー審査員『武士道・侍魂の有無』


 一名はこれがミスコンだと恐らくわかっておらず、また二名程審査員としてはやや不適格な者がいる中、彼ら五名が席に着き、いよいよコンテストは開幕するのであった。