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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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第12章 物質を理解せよ・・・製錬から精錬Part2

「夜組み登場☆」
 昼間組と交代した騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、さっそく製錬からとりかかる。
「ビリジアン・アルジーと違う方法で行うんですね?まずは二酸化珪素をさくっと取り出しましょう♪えっと、もらった表の元素の文字に色がついていますね。その色に該当するやつを入力するってことですか☆」
 ランプ型の容器に鉱石を入れ、それに該当する成分の元素をパネルで入力していく。
「同じ作業が続くと、ねむ〜くなっちゃうので、ローテーションしません?」
「どうします?エリザベートちゃん」
 たった今、パラミタ内海からヴァイシャリーの別邸にたどりついた神代 明日香(かみしろ・あすか)が、エリザベートに聞く。
「眠くなると効率も悪くなりますから、そうしましょう〜。ペースも早いようですし、無理なくいきましょう〜♪」
「エリザベートちゃん、どの作業しますか?」
 彼女が望むことなら何でも手伝ってあげようと、進行度合いを見る彼女に聞く。
「う〜ん、明日香には精錬されたアダマンタイトに、不純金属が入っていないかチェックしてもらうです〜」
「魔道レンズってどう使うんでしたっけ?」
 方法を再確認しようと明日香がエリザベートに聞く。
「手に持って覗くだけですよぉ〜。魔力が含まれている物質が見えちゃうんですぅ〜」
「なるほどですね♪」
「使用者の手と目を認識して、その者の魔法に関する知識の深さがどれくらいあるか判断して、より鮮明に見せてくれたりするんですよぉ〜」
「分かりました!私がこの目でしっかりとチェックします♪」
 むむ〜っと精錬されたアダマンタイト睨むように確認を始める。
「詩穂が精錬までしちゃいますね。出来たらそっちへ持っていきます☆」
「はーい!」
「ヨウエンも精錬作業を手伝いますよ」
「昼間も担当していたんじゃないんですか?」
 疲れてないのかな、と首を傾げる。
「ずっとアダマンタイトのチェックをしていましたけど。深夜お任せする人がくるまでの間なら大丈夫です」
「じゃあ一緒にやりましょう☆後でローテーションしますけど」
「その間、明日香さんに全部お任せになりますけど平気ですか?」
「はい、エリザベートちゃんの頼みですから♪」
 私の目が役に立つというなら、いくらでもチェックしますよ!と真剣に検査している。
「そういえば、アダマンタイトの成分の大きさも、いろいろあるんですか?」
「1つの元素が集まっているんだと思いますよぉ〜」
「そうなんですね?隣り合ってるのは私とエリザベートちゃんでしょうか。ずーっと動かないですね」
「なんといっても、アダマンタイトは硬度の高い金属ですからねぇ〜」
「溶かしたら、一緒にうろうろ動き回ってるかもしれませんね♪」
 真剣な作業中でもエリザベートとの会話は止められないようだ・・・。


 エリザベートと明日香の話し声しかしなくなった数十分後・・・。
「あらあら、まだ鉄の成分が残っていますね!あらー・・・こっちのも不純金属が含まれていますよ?」
「ではこっちにください」
「ほとんどオッケーだったんで、軽作業だと思いますよ。それが終わったら詩穂さんと交代しますね」
 明日香は遙遠にそれを渡すと詩穂の方をちらりと見る。
「分かりました☆」
「半分ずつ処理しますか?」
「はいはい〜了解です」
 詩穂がモニターを開くと鮮やかな青色の金属成分が映し出された。
「魔導レンズの効果はゴーグルとリンク出来ませんし、ほんの少しの元素を探すとなると見つけづらいですね。まだ夜の9時過ぎですし、起きてるでしょうから聞いてみましょう」
 アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)にどうやって取り出せばいいのか教えてもらおうと、彼女の携帯に遙遠が電話をかける。
「こんばんはアゾートさん、ヨウエンです」
「もしかして精製についての質問?」
「えぇ、アダマンタイトの中に不純金属が残っているんですが。短時間で探せる方法があれば教えてほしいんですけど・・・」
「ゴーグルとモニターをリンクさせてる?」
「はい、していますよ」
「それじゃあ白い手袋がその辺にあるから手にはめて」
「こんな無造作に・・・。見たところ普通の手袋にしか見えませんが」
 ぽんっとテーブルに置かれたそれを掴み、手にはめて話を続ける。
「使いやすいものを用意しただけだからね。モニターに映されているアダマンタイトの画像に手を入れてごらん」
「簡単に手が通り抜けましたね」
「うん、今触れているのは物質じゃなくって、映像だからね。で、それを手で開いたりしてみてよ」
「中に黒い粒が紛れていますね?」
 モニターを引っ張り拡大して中の様子を見る。
「詩穂も発見しました☆ずずいっと覗いちゃいましょう♪」
 傍で説明を聞いていた詩穂が先に、酸化マグネシウムなどを取り除き始める。
「軽作業ですし、さっさと済ませましょう」
「アゾートちゃん、炎を使うお仕事はある?」
「量もあるし、ゴーグルにスキルをセットして、手袋をはめたままなら使えるよ。モニターを通して、容器の中の物に熱を加えられたり出来るからね」
「やってみようかな☆」
 年が近いせいか丁寧な言葉でなく、友達らしく話しかける。
「酸化物に攻撃☆ってことで、ファイアストームだけでいいね。まだ精錬前のやつでやろうかな」
 彼女がモニターに手を入れてその映像に触れると、不思議なことに容器の中まで熱が伝わり、とろとろに酸化物が溶けていく。
「混ざっちゃったけどまぁいいかな。アダマンタイトの青い金属の成分を見つけて、別のモニターに移動させてっと」
 精錬を始めるとランプの中で青い金属だけが集まり丸く固まった。
「直径3センチサイズなら見つけやすいね☆とりあえず、酸化物は適当に精錬させておいちゃおう」
 熱いままの金属をその辺に置くわけにもいかないからとまとめておく。
「チェックが終わりましたから、まだ精錬してない金属の処理をしますね」
「はーい、お願いします☆」
 明日香に元気よく返事すると、やや丁寧な言葉遣いに戻った。
「面白そうなので少しやってみませんか?」
「やってみますぅ〜」
「お顔にゴーグルをつけてますね」
 当然のように自分の膝に乗る幼い校長の顔に、ゴーグルを装着させる。
「私が酸化物を探しますから、エリザベートちゃんはアダマンタイトの成分を探してくださいね」
「わかりましたぁ〜。キラキラしててキレイですぅ〜、溶かしたらどうなるんでしょうね?」
「ありがとうございます、2人だと早いですね♪あらあら〜、寝ちゃいましたか。しばらくお膝の上にいてもらいましょう」
 深夜の作業担当がくるまで、エリザベートを膝に乗せたまま続ける。



「アダマンタイト精錬し隊、深夜組み参上♪シンデレラにかかった魔法解けちゃう時間ね。でも、アダマンタイトはまだ溶けないけど」
 小さな子は先に眠っちゃうから、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)たちは深夜に回ろうと、12時にやってきた。
「では、おやすみなさい」
 明日香はエリザベートを起こさないよう、小さな声音で言うと寝室へ向かった。
「ゆっくり眠ってね」
「一発目で、そのセリフか」
 弟一声がお嬢さんギャグか・・・と、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は嘆息した。
「ぼちぼち始めるわけだが、流れ作業にするか?」
 担当を決めておこうか、とカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がルカルカに聞く。
「じゃあ、カルキは製錬の方をお願いね。ルカとダリルはアダマンタイトに、不純物が紛れていないか調べるわね」
「俺とメシエは精錬に回ったほうがいいみたいだな」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はゴーグルを装着すると、カルキノスが二酸化珪素を取り除いたものを精錬する、
「酸化物のマグネシウムや鉄まで精錬してるのかい?」
 アダマンタイトだけでいいんじゃ?とメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)が言う。
「ちょっと作りたいものがあってな。酸素を取り除けば、キレイな銀色や黒の金属に戻るし。あれ、ネット電話が・・・誰だろう。こんな時間に・・・」
「出てみたら?」
「あぁ、通話許可してみるか」
「皆、起きてる?」
 ネット電話をオンにすると聞き慣れた少女の声音が聞こえる。
「アゾートさん、まだ起きてるの!?」
「なんだか眠れなくてね」
「起きてるついでに教えて欲しいことがあるんだけど」
「うん?答えられるものなら何でも聞いて」
「溶かす方法を聞いておこうかなってね」
「細い注ぎ口がついてる小さな炉があるよね?それに抽出したビリジアン・アルジーと、アダマンタイトを入れるんだよ」
「一緒に入れていいんだね」
 エースは頷きながら彼女の話を聞きながらメモを取る。
「で、炎の魔法を注ぐなら。炉の取っ手をくるくる回すと、ファイアストームとかの魔力が、アルジーに熱を加えられるよ。もちろん修理する人が使えないと困るから、フタを回して炉の中に加える魔法属性の対象を変えることも出来るからね」
「何度くらいにしようか」
「耐熱のコテを用意したけど。アダマンタイトが固まらない程度に調節してみて。1000度以上はいると思うから皆、耐熱性の服を着てよ」
「もうロッカーに用意してあったりするかな」
「うん、作業用として自由に使っていいよ」
「ありがとう、じゃあ精錬作業に戻るよ」
「電話切るね」
「アゾートさんちょっと待って」
 電話を切ろうとする彼女を高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)が呼び止める。
「賢者の石の精製に、ビリジアン・アルジーがどう関わるのか教えてくれませんか?」
「今の段階じゃ、まだ分からないんだ。ごめんね」
「そうですか・・・。ふぅ、僕も精錬作業に戻りますか」
「夜遅くごくろうさま、頑張ってね」
「もう寝ますか?」
「うん、仮眠するよ」
「じゃあおやすみなさい」
 そう言い終わると玄秀は通話を切った。
「魔法の爆発は心配いらないようだが、細かい作業が山盛りだ。二酸化珪素を一度に撃破出来ればいいんだがな」
「精製作業ですか・・・。錬金術にはあまり詳しくないのですが。まぁ、これも実習だと思えば。精製に使う魔術の組み合わせで強度がかわったり失敗したりということはないんでしょうか」
「んー、昼間も夜も特に問題なかったらしいぞ。何かあったら、こっちに情報が流れてくるはずだからな」
「そういうものでしょうか?」
「賢者の石のことを知りたいのか?」
 彼とアゾートの会話を聞いていたカルキノスが言う。
「えぇ、まぁ」
「アダマンタイトの加工は魔力の流れと、その物質にどれだけ含まれているか見極める理解力とかが必要だが。その対象物を理解して、分解して必要なものだけを取り出す点とか、勉強になるんじゃないのか?」
「必要なものだけを取り出すだけじゃなく、その中に含まれている物の理解も必要ということですか」
「力を別な何かに例えるなら熱量とか、そういう考えも必要かもな。パラミタの賢者の石が、どんなものになるか分からないけどな」
「簡単に答えはくれないってことですね・・・」
 金属に含まれる酸化物の位置をゴーグルの計算式で調べることも、欲しい答えを探すために必要なことと同じことか・・・と呟く。
 手を伸ばしても余計な物の中に紛れて分からず、その不要な物を理解せず無理やり退けると、見失ってしまうのか。
「これにはあまりアダマンタイトが含まれていませんでしたね、次のやつを・・・。ティア、ありがとう」
「あ・・・、わ、私は・・・いえ・・・」
 製錬された金属を彼に渡したティアン・メイ(てぃあん・めい)は、なぜかパッと離れてしまった。
「何かあったの?」
「いえ・・・、別に。あの・・・、肉じゃがでも食べない?」
「もらおうかなー。―・・・ほくほくで美味しい!。あ、ダリル。作ってもらったからお夜食は大丈夫♪」
「何・・・っ?作ってくれるならいいか」
「作業中の事故は自己で注意し・・・あっ空気が痛い。どうしてっ」
 食事中だし気分転換にとルカルカが軽口を叩くと、温かい肉じゃがを食べているのに、周囲の人々は氷河期モードに入ってしまった。
 しかも特に眉を吊り上げるダリルからの視線が刺さるように痛かった。



 食事を終えると、ルカルカはダリルと精錬した金属のチェックに入った。
「ふっふー♪これさえあれば〜腹ぐろーい政治家のお腹も丸見えちゃーん。内に隠された小賢しい考えも、バッチリ見え見え〜なんちゃって」
 魔導レンズでアダマンタイトに不純物が入っていないか見ながら、またもや軽口を叩く。
「はぁ〜」
「えー、ため息だけなの?」
「何だ・・・俺を鬼の面にでもしたいか?」
「きゃぁあ、ごめーん」
「冗談ばかり言ってると本当に怒るぞ」
「えぇ〜、すべちゃった?」

 ○月×日
 またダリルに怒られたよ〜。
 和ませようと思っただけなのよ?
 たまには好きに面白いこと言ったっていいじゃないのっ。

 と、心の日記を書いた。

「疲れてるからイラつくんじゃないか?」
 エースが気を利かせて特製ハーブティーを淹れてきた。
 コトッとダリルのテーブルに置き、休憩したらどうだ?と声をかけた。
「疲れたというかルカのギャグに・・・。エースはどう思う?」
「うーん、ノーコメント。もしくは想像に任せるよ」
「なっ!?そんな逃げ方を・・・」
 にこっと微笑むとエースはお茶を配りにいってしまった。
「そうだ、アダマンタイトをアゾートに見せてあげよっと」
 精錬したそれをカメラで撮影したルカルカがメールで送った。
 深夜だけど寝ちゃってるでしょうから、朝のお楽しみね♪