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 幕間:アコとお話しませんか?

「アコとお話しませんか?」
 学生たちが戦っている間、あえて『本』の外に残ったルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)は、同じくあえて『本』の中には入らず、外で待つことを選んだ少女――神代 明日香(かみしろ・あすか)へと話しかけた。
 ただ待っているというのも存外に難しいのだ。なにせ、自分の大切な相棒であるルカルカが中で戦っていると考えてしまうゆえに、落ち着いて待ってもいられない。
「いいですよぉ〜」
 同じく明日香もただ待っているよりは良いと判断したのだろう。ルカの申し出を快諾する。それに気を良くしたルカは、明日香に向けて微笑みながら早速水を向けてみる。
「どうして、『本』の外で待っていようと思ったの? ちなみにアコは魔女が変な事しないか見張るのと、本を燃やされたら中の皆が大変なので、ルカを見送って本の横に残ったよ」
 その問いに対し、明日香は即答する。
「私も『本』の中には入らないで外に残りましたけど、怖気づいたわけでは無いですぅ〜」
 更に明日香は自分の答えを補足するべく、雄弁に語っていく。
「皆が『本』の中に入ってる間に勝手に『本』を動かされては困りますので、外から見張っていなければいけませんし、解決後の本の対処を考えなければいけないと思ったからですぅ〜」
 明日香の答えに対し、ルカはところどころで相槌を打ちながら聞いていたが、やがて次の質問をする。
「ふぅん。随分としっかり考えてるんだね。それで、対処って……具体的にはどうしようと思ってるの?」
 その問いに対しても明日香は即答した。立て板に水の口調で迷いも淀みもなく告げる。 
「危険な本なのでしかるべき所に封印もしくは管理しようと思いますぅ〜。魔道書や危険なマジックアイテムを保管しているイルミンスールとしては当然の事ではないでしょうか。本来はアーデルハイト様やすごい魔女と噂の司書さんのお仕事だと思いますが、ご本人達はお見えにならないと思いますので役目を担いたいと思いますぅ〜」
 やはりところどころで相槌を打ちながら聞いていたルカは感心したようすだった。そんなルカに今度は明日香が質問をする。
「大図書室の蔵書は実力に見合った蔵書までしか出会う事が出来ません。アゾートちゃんの実力に見合った蔵書なのでしょうか、それとも誰かが置いて行ってしまったのでしょうか――アコさんは、どう思いますぅ〜?」
 その問いかけに対し、ルカは真面目な顔で少しの間考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「アコも魔道書だからかもなんだけど、本は誰かに読まれる為に生まれるんじゃないかなって思うの。
この魔女の本も、もしかしたら読まれる為にこんな事してるのかな……なんてね。そうチラッと思ったかな」
 その返答の意味を深く吟味するように、何度か口の中で繰り返した後、明日香は話題を変えた。
「中に入った人の働きを期待しておきますぅ〜。中の様子はわからないと思いますが、多くの時間がかかるようならば正式に救出隊を組織しなければならないので、一時的に封印か凍結させる事も考えますぅ〜」
 それを聞いたルカは素直に感心した表情で明日香を褒める。
「やっぱり偉いよ。そうやって色々考えてるんだから」
 その褒め言葉を聞き、明日香は嬉しそうな表情を浮かべる。
「ありがとうございますぅ〜」
 嬉しそうな顔で礼を述べる明日香を微笑ましげに見ながら、ルカはふと遠い目をしながら呟いた。
「ルカルカたち、無事だといいけど――」