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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

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     ◆

「何やら複雑そうだな、彼女は――」
 佐野 和輝(さの・かずき)は事の次第を、誰に悟られる事もなく見守っていた。彼女が暴れてから――厳密には、レティシアとリアトリスがラナロックと遭遇のした辺りから、彼は気取られない様、ラナロックの動きを観察していたのだ。
「言動から推測するには多重人格か、或いは統合失調症の様なものか――? に、しても、機晶姫にもそう言う病理があるのかはあいつら待ちって事になるな」
 漆黒の鎧となっているスノー・クライム(すのー・くらいむ)を纏った彼はそう呟き、暗闇の中から顔だけを覗かせた。
「着眼し、問題視するべくはその人格の特性………か」
 一人、状況を分析していた彼は、そこで携帯を取りだし、別動とアニス・パラス(あにす・ぱらす)へと精神感応により話しかける。
「アニスか、俺だ。そちらの方はどうなってる? ――そうか、引き続き続けてくれ。あぁ、あとな、やはり先程言った仮説は正しかった、と、ダンタリオンにも伝えておいてくれ。あぁ、よろしく頼む…………」
 そう言って彼は、再び監視を再開した。
「どうやら今の人格は元のランドロックと近い、大人しい性格の様だな。が――またいつ暴れるやもしれない、となると少なくともあと二人は必要か」
 今までの事を冷静に見てきた彼は、それなりにラナロックの動きや、彼女の人格を把握し始めていた。それぞれの戦闘における行動傾向や、何人が必要で、安全に捕まえられるのは何人程度が妥当なのか。あとは――彼のパートナーが調べている事を組み込めば、ラナロックを止める手が出来上がる。
「致命傷をおった被害者は二人。それ以外は無傷と言うわけだが…………目的は一体何なんだ? あとでクラウンに聞きに行ってみるか」
 影の中に姿を置いていた彼は、それをぽつりと呟いてから再び姿を闇へと落とした。


 和輝と精神感応で話していたアニスは、「よしっ」と小さくやる気を入れていた。と、本を開きながらもその様子をこっそりうかがっていた禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)がアニスに向けて声を投げかけた。
「和輝はなんと?」
「先程言った仮説は正しかった――だって。それよりもさ、リオンも少しは動いてよぉ!」
「いやいや……いやいやいや! アニス、何を無茶苦茶なことを言っているんだ。あ、そこの本をとってくれ」
「無茶じゃないでしょー!」
「いや、よくよく考えてもみろ。どこの世界に自ら動く本があるのだ。本が自分から動くのは、とても奇妙な事だろう? とても奇天烈な出来事だろう? だから私は動かないのだ。さぁ、次はこの本を元に戻し、あの本をとってきてくれ」
 はぁ、とため息をついたアニスは、しぶしぶではあるが彼女のいう通りに動くことにした。
「にしても、此処に収蔵されている本だけで本当になりるのかね? その御嬢さんの情報は」
「それはアニスに聞いてもわからないよぉ……でも、結構この図書館いろいろあるって評判だからね。もしかしたら期待できるかもしれないよ。そうだ、和輝、さっきなんか言ってたけどよく聞こえなかったんだ! なんて言っていたの?」
 再び精神感応で和輝に向けて語りかけるアニスの横で、ダンタリオンの書がため息交じりに小さく首を振った。
「精神感応なのだろうが、そこまではっきり声に出さずとも伝わっているはずだぞ。全く…」
「あ――目的、ね。うんうん、でも、それはやっぱり本人に聞いてみないとわからないことなんじゃないの?」
 と、此処で。ダンタリオンの書にとってくる様指示された本の近くに、興味深い本を見つけるアニス。
「これだけ文体が違う。っていうか、よくわかんない言語使ってる。これはリオンに渡して調べてもらおうかなっ」
 頼まれた本と、自分が見つけた読めない本を手に、アニスはダンタリオンの書のもとへと向かう。