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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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リアクション

「なんか騒がしいような……? 切り付けるような音も聞こえてくるし……」
 部屋の露天風呂に1人で入っていた吉崎 樹(よしざき・いつき)がきょろきょろと辺りを見回す。
(それに……ねっとりとした視線も……なんだか寒気が)
 樹は身震いし、もう一度辺りを見回すが誰もいない。
 その視線の正体は生け垣から覗いていたミシェル・アーヴァントロード(みしぇる・あーう゜ぁんとろーど)だった。
(ああ……一緒に入ることは出来なかったけど、これはこれで……)
 ミシェルはある程度、満足すると部屋へとこっそり戻っていった。
「……温泉から出たら、このまま国に帰ろう! うん!!」
 温泉では急に湧いた決意を固める樹。
 すぐに立ち上がると、自分の体の異変に気が付いた。
「ん? しっぽ? ……なんかやる気が出てきた! 今ならなんでもやれそうな気がする!! 待ってろよ! マイパートナーーー!」
 樹は急いで着替えると、部屋へと戻るのだった。


 一方部屋では、しょんぼりとお茶をすすっているミシェルの姿があった。
「お風呂の樹を見ることは出来たけど……キス以上には発展しそうにないよなぁ……はぁ……」
 ため息をついて、お茶をすする。
「ミシェル!!」
「い、樹!?」
 扉を勢いよく開けて入ってきた樹を見て驚くミシェル。
 つかつかと近寄ると、樹はミシェルの肩を掴み、いきなりキスをした。
 唇が離れると、ミシェルはやっと樹の頭にオオカミの耳があることに気が付いた。
「犬耳ついてかわいいよぅ……しかもこんなに積極的だなんて……!」
 喜んでいるミシェルを見て、樹はミシェルを布団に押し倒した。
「嫌だなんて言わないよな?」
 樹はミシェルの左ほほに手を当てると、もう一度軽いキスをする。
「言うわけないよ!」
 キスが終わると、ミシェルは樹を押し倒し返した。
(こんなチャンスないよね! いつもの口では言えない妄想を実行にうつす!)
 ミシェルはほくそ笑むと、樹に深いキスを贈る。
「ふぁ……」
 樹は歯茎をなぞられるだけで甘い声を漏らした。
(こんなに可愛い樹を見られるなんて……来て良かった温泉旅行!!)
 ミシェルはさらに激しく樹の口内をむさぼる。
「ふふ……そっちが仕掛けてきたのが悪いんだよ? 今夜は寝かさないから」
 ミシェルの手が樹の浴衣にかかった――。


 翌朝。
 布団の中でもんもんと悩んでいるしている樹と満足げにすやすや眠っているミシェルの姿があった。
(恋人同士なんだしこれで良かった……いや、でも!! うあー! どうして帰ろうと思ってたのにこんな事にーー! う……でも……)
 隣で可愛い寝息を立てているミシェルを見て、ちょっとだけ笑う樹だった。