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第四章 千客万来・メイド喫茶 3

(くぅ〜、さすがはメイド喫茶! かっわいいメイドさんたちがいっぱいだな!)
 全力でメイド喫茶を堪能しようとノリノリでやってきたのは鈴木 周(すずき・しゅう)
 そんな彼の前にタイミングよく現れたのは、ルカたちネコミミメイド隊である。
「あ、いらっしゃいませですにゃあ♪」
 猫っぽくはねるようにして出迎えるルカに、周が嬉しそうに笑う。
「あれ? ルカルカじゃん。相変わらずかわいいなー」
 そして、顔見知りのルカと挨拶を交わした後、残りの三人を見て……ロックオンしたのは未散であった。
 全員傍から見ると女の子にしか見えないのだが、周くらいの「紳士」になると、女の子と「男の娘」を本能的に見抜けるような力でも備わってしまうのだろうか。
「俺は鈴木周! おじょーさん、名前教えてくれねぇか?」
「いらっしゃいませご主人様。私は未散です」
「未散ちゃんっつーのか、よろしくな!」
 とりあえず早速一人の名前を聞けたわけで、なかなか幸先のいいスタートである。
「さ、こちらのテーブルへどうぞですにゃあ♪」
「お、おう!」
 ルカルカたちに案内されるままに、周はテーブルの方へと向かったのだった。

 さて、彼が案内されたテーブルの隣には、未散のパートナー兼マネージャーであるハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ) の姿があった。
 未散がアルバイトをすると聞いて様子を見にきてみたものの、まさかメイド喫茶だとは思っていなかったのだ。
(しかし……何を着ても似合うとは思いますが、今日の未散くんは特に可愛いですな……)
 予期せぬ未散の姿にテンション上がりまくりなのであるが、面と向かって可愛いなどと正直に言おうものなら鉄拳制裁されることは目に見えているので、そこはあえて何事もないような顔をしていた。

 ところが。
「こちらへどうぞですにゃあ」
 ルカに案内されて来たダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、ちょうど向かいのテーブルに座った。
 未散に思いを寄せるハルからすれば、ときどき未散が気にしているダリルはライバルである。
 そうするつもりはなくても自然と彼の方を見てしまい、その視線もついつい鋭くなってしまう。

 と、その視線に気づいたダリルが、なんとわざわざハルの方にやってきた。
「……何でございましょうか」
 尋ねるハルに、ダリルは単刀直入にこう尋ね返した。
「なぜ、俺を睨む? ここ最近のことだと思うが、俺がお前に何かしたか」
 そうはっきりと尋ねられて、ハルは少し言葉に詰まった後、意を決してこう尋ねてみた。
「あなたは、未散くんのことをどう思っているのですかな」
「未散の事?」
 ダリルは少し驚いたような表情をした後で、軽く苦笑する。
「新鮮な反応が印象的な娘だと思ったよ。妹が居たらこういう感じだろうか、とな」
「妹、ですか」
 少し安心したような様子のハルに、ダリルは最後にこう付け足した。
「ああ。今は、な」
「…………!?」
 その言葉の真意について問いつめようとしたハルだったが、その時ちょうど当の未散やルカルカがオムライスを運んできたため、結局うやむやになってしまった。