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君と僕らの野菜戦争

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君と僕らの野菜戦争
君と僕らの野菜戦争 君と僕らの野菜戦争

リアクション

「どうやら、四天王の二人までがやられたらしい。だが、彼らは野菜モンスターの中でも最弱の部類。この俺様はそうはいかん」
「……ん? 誰か何か言いましたかね?」
 イルミンスール魔法学校からやってきていたルイ・フリード(るい・ふりーど)は、農作業の手を休め、顔を上げました。
 収穫祭もたけなわ。野菜取り放題祭りとあっては、参加しないわけには行きません。
 さんさんと照りつけるお日様のもと、とにかく取れるだけの野菜をつかみ取りです。
 今頃、仲間たちも新鮮野菜の素材の到着を待ち望んでいることでしょう。
 彼らがおいしそうに食べる様子を創造するだけで、収穫のやりがいも出てきます。
 成果も十分です。もう籠に何杯目の野菜を収穫したことでしょうか。
 そう、彼は今、仕事に精を出すお百姓さんそのものでした。
 この日のために用意した農作業用の衣装。 
 汚れても良い無地のTシャツにズボンに靴、、軍手に野菜を入れる巨大なカゴに汗拭き用のタオルといういで立ちは、彼の赤銅色の肌と剃り上げたピッカピカの頭ととてもよく似合っています。
 もうこの土地で十年も農作業をやっているといっても、誰も疑いはしないでしょう。
 そんなルイは、ゾリゾリと地面を引きずりながらこちらにやってこようとしている巨大な白菜を見つけて快活な笑みを浮かべました。
「おお、これは見事な出来です。漬物にしたときのことを考えるとよだれが出てきそうになってきましたよ」
「……貴様か、我々の農園を荒らすのは。俺様は野菜四天王の一人、全ての白菜の父ナッパパ様だ。貴様にはここで死んでもらう」
 ナッパパは、大勢の白菜モンスターでルイを取り囲みます。
「俺様の攻撃を受けて土に返るがよい」
「そうですか、ではお言葉に甘えて」
 ルイは、何か連携攻撃を仕掛けてこようとしている白菜モンスターたちを手づかみで刈り取り、次々と籠の中に放り込みます。
「なぱ? なぱぱぱぱっ!」
 白菜モンスターは、ほぼ完全無視のルイに抗議の声を上げているようですが、気にしてはいけません。
 効率よくサクサクと収穫します。いい感じの成果です。
「おのれ、我々の攻撃をこのような方法で避けるとは、貴様何奴!」
 ナッパパは、葉と葉をこすり合わせてソニックブームを打ってきます。
 空気が割れ、真空派になって襲いかかってきます。凶暴なかまいたちが獲物をずたずたに引く裂くでしょう!
「……」
 ルイはすでにその場にいませんでした。
 いきのいいほうれん草を見つけて、鼻歌まじりに刈り取っています。凄い速さです。
「そういえば、ナスが見当たりませんね。やはり子分たちもボスと一緒にいるのでしょうか?」
 まあ、後で取りに行けばいいでしょう。
「くくく……、やりおるな人間め。どうやらこのナッパパ様の最大奥義を披露するときが来たらしい」
 四天王ナッパパは、その全身の葉を硬化させ全身をドリルに変えてギュインギュイン突進してきます。
「くらえ! スーパー野菜スクリュー!」
「さっきからうるさいですよ。農作業の邪魔をしないでください」
 ひょい、とルイは手で受け止め、ザクザクと葉をむしり始めます。
「な、お、おい、やめろ! この俺様はまだ後二段階変身を残して……グハッ!」
「……?」
 ルイが葉っぱを全部むしりとったせいで、ナッパパはいなくなりました。この葉は、跡でおいしくいただくとしましょう。
「ふう……、ひと働きしたあとの労働の汗は気持ちいいですね」
 彼は、青い空を仰ぎ見、タオルで汗を拭きながらキラリと歯を輝かせます。
「さて、とりあえず取った分だけでも持って帰りますか。雪だるま王国のみんながお待ちかねです」
 ルイはたくさんの野菜の詰まった籠を持ち運んでいきます。
 野菜モンスターとの戦争は?
 ああ、そんな野暮なことは言いっこなしです。
 彼が戦うはずないではないですか。収穫祭を楽しみにきていたのですから。